挺対協を暖かく見守りたい

2015年5月2日

 前回の記事で、北海道新聞の報道を根拠にして、慰安婦問題での挺対協の方針転換について書いた。そして、それを歓迎しつつ、「もしかしたら、この転換を批判する声も出てくる可能性もある。というか、実際に出ている。その声が強くなって、挺対協の方針転換が押し戻される可能性だって、まったくないとは言えない」との懸念も表明していた。

 残念なことだけど、その懸念が当たっていたのかな。北海道新聞によると、「日本政府に法的責任を求めない」と表明したはずの挺対協代表らが、北海道新聞に抗議と訂正要求をしたそうだ。それを受けて、当該記事はこのように訂正されたという。

 見出し:「慰安婦問題 『法的責任』は求めず 韓国・挺対協 従来方針を転換」→「慰安婦問題 『法的責任』内容を説明 韓国・挺対協 解決の方向性を提示」

 本文1:「挺対協が、日本政府に対して立法措置による賠償など『法的責任』に基づいた対応を求めてきた従来方針を転換したことが分かった。代わりに『政府と軍の関与の認定』や『政府による賠償』などを盛り込み、要求を緩めた」→「挺対協が、日本政府に対し慰安婦問題の解決に関しとるべき方向を提示した」

 本文2:「挺対協はこれまで、日本政府の『法的責任』を追及し、《1》慰安婦制度を犯罪事実として認定《2》国会決議による謝罪《3》法的賠償《4》責任者の処罰―などの対応を求めてきたが、犯罪としての扱いは求めず、立法措置も除外した」→「犯罪としての扱いは求めず」の部分は削除。

 本文3:「尹代表は『(法的責任を直接追及しなくても)提案内容で、実質的に日本の法的責任を明確にできる』とした」→「尹代表は『法的責任の内容というものは提言の中に込められている』とした」

 要するに、挺対協の方針が「法的責任を追及しない」と変わったという部分は、すべて削除されたということだ。私の懸念が当たったということなので、「すごい洞察力でしょ」と誇りたいところだが、悲しいよね。これで、慰安婦問題の解決は、さらに遠のくことになる。

 ただ、これも前回の記事で書いたことだけど、こうなるには理由があった。「法的責任を追及しない」と言いつつ、そういう言葉は要求書のなかに入れていないけれど、実際にはそれと矛盾する内容が入ったりしていて、いわゆる玉虫色だったわけだ。

 率直にいって、この20数年にわたってつづいた対立を、あいまいにして解決しようとするのは無理である。そんなことをすれば、20数年間の方針を正しいと信じ込んできた多くの人々が反乱を起こし、収拾がつかなくなるのだ。今回の北海道新聞をめぐる顛末も、その結果だろう。

 だから、何よりも大事なのは、なあなあで収拾しようとするのではなく、堂々と議論することだ。法的責任なんか、慰安婦の方々の尊厳を回復する上では、無視していいほどの小さい問題だということを、徹底して議論することなのだ。挺対協がそういうことができるよう、暖かく見守っていきたい。

 私の『慰安婦問題をこれで終わらせる。』は、そのために書いたようなものである。慰安婦の方々に読んでもらうため、誰かハングルに訳してくれないかなあ。

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