2013年6月15日

 本日、名古屋で、核抑止力論をテーマにお話ししてきました。その際、テーマにそったご質問もたくさんあったのですが、そうでないものもいくつかありました。そのなかには、予想外で正確にお答えできなかったものもあるので、家に帰って資料にあたったうえで、この場で明確にしておきます。

 何かというと、まさにこの記事のタイトルにある問題です。質問された方は、今度の選挙に向けて、脱原発と護憲の一致点で政党間の協力共同を推進できないかと考えておられ、そのために努力しています。そのための協議の場にも参加しておられるのですが、そこで共産党は安保廃棄で一致しない政党とは政権協議などできないのではと話題となり、本当にそうなのかと私に質問してこられたわけです。

 私は、いまの共産党の態度を解説する能力も資格もないわけですが、過去の文書にあらわれたことを紹介することはできます。ということで、いくつかお話ししたのですが、過去の文書にあたったうえで、以下のようなことが言えると思います。

 共産党の政権構想の基本は、安保廃棄をふくむ目標での「民主連合政府」というものだと思います。共産党の綱領は、以下のようにのべています。 
 「日本共産党と統一戦線の勢力が、国民多数の支持を得て、国会で安定した過半数を占めるならば、統一戦線の政府・民主連合政府をつくることができる。日本共産党は、「国民が主人公」を一貫した信条として活動してきた政党として、国会の多数の支持を得て民主連合政府をつくるために奮闘する」

 しかし、それに続けて、民主連合政府でなくても、政権共闘する場合があることも、綱領では明記しています。次の文章です。
 「統一戦線の発展の過程では、民主的改革の内容の主要点のすべてではないが、いくつかの目標では一致し、その一致点にもとづく統一戦線の条件が生まれるという場合も起こりうる。党は、その場合でも、その共同が国民の利益にこたえ、現在の反動支配を打破してゆくのに役立つかぎり、さしあたって一致できる目標の範囲で統一戦線を形成し、統一戦線の政府をつくるために力をつくす」

 だから、すべての政権構想で安保廃棄をかかげるわけではないということです。「さしあたって一致できる目標の範囲」で協力し合う政権構想もあり得るということです。

 これは、理論的にそうだというだけではありません。実際に、国民の切実な要求があってそれを実現しなければならないという局面で、安保を棚上げして政権をつくろうと共産党がよびかけたことがあります。

 たとえば76年。小選挙区制粉砕、ロッキード疑獄の徹底究明、当面の国民生活擁護という三つの緊急課題での「よりまし政権」構想というものを出しました。さらに89年。消費税廃止、企業献金禁止、コメの自由化阻止の三つの緊急課題での暫定連合政府構想をかかげました。

 こういう政府で安保の扱いはどうするのか。不破哲三さんは、98年8月25日の「赤旗」で以下のようにのべています。
 「それは、民主連合政府とはちがって、安保廃棄論者と安保維持・堅持論者のあいだの連合政権ということになります。この意見のちがいへの対応策は、76年、89年の提唱のときにものべたように、政権としては、「安保条約などの問題での立場や見解の相違は留保」する、ということ以外にありません。
 安保条約の問題を留保するということは、暫定政権としては、安保条約にかかわる問題は「凍結」する、ということです。つまり安保問題については、(イ)現在成立している条約と法律の範囲内で対応する、(ロ)現状からの改悪はやらない、(ハ)政権として廃棄をめざす措置をとらない、こういう態度をとるということです」

 ということで、目の前に、安保を棚上げしてでも実現すべき課題があるのなら、そうするというのが、共産党のこれまでの態度だったと思います。現在どうかというのは、私には分かりません。

2013年6月14日

 明日、非核の政府を求める愛知の会で講演します。テーマは、「現在の中国問題と核抑止力論克服への道」。以下、レジメを掲載します。

 はじめに

一、社会主義国と核兵器問題
  ──「いかなる国」問題等の痛苦の経験をふまえて

1、「部分核停」問題と「いかなる」問題(60年代前半)

2、東京都議選下の中国核実験と「いかなる」問題(73年)

3、日ソ両共産党共同声明(84年)が持った意味を考える

二、軍事面から見た中国の現在
  ──社会主義かどうか、平和勢力かどうかと関係なく

1、中国の軍事力の拡大をリアルに見る

2、米中双方の核軍事戦略を等しく批判する

3、言論による批判は内部問題への干渉ではない

三、急務となる核抑止戦略への対案
  ──『憲法九条の軍事戦略』を出版した理由

1、戦後日本の核抑止戦略追随の問題点

2、国民世論の現状を正確に捉える必要性

3、憲法九条の軍事戦略とはどのような内容か

 おわりに

2013年6月13日

 いまさらとは思うんですが、念のため。あまりにひどいので。

 安倍さんは、いま、明確に対中国を意識して外交をやっています。中国包囲網ですよね。

 その論拠としてあげるのが、価値観の違いということです。価値観の共通する国と仲良くして、価値観の違う中国を包囲するというもくろみ。

 でも、日本の価値観が中国の価値観と違うどうかは別にして、安倍さんはどうなんでしょうか。安倍さんの価値観って、本当に中国と異なるんでしょうか?

 たとえば人権問題。中国は、いろいろな国際会議で自国の人権問題を批判される度に、「アジア的人権」を口にします。人権は人間なら誰もが生まれながらもっているのだという考えを西欧的人権だとして批判し、中国には中国の人権の考え方があるというわけです。普遍的な人権というものはないということですよね。

 じゃあ、安倍さんはどうか。自民党の改憲案は、人権の制限をしようとしていることで話題になっていますが、その根拠を、自民党は「Q&A」であきらかにしています。

 それによると、改憲案の趣旨は、「西欧の天賦人権説に基づいて規定されていると思われる規定を改める」ところにあるそうです。「権利は、共同体の歴史、文化、伝統を踏まえたものであることが必要である」とも。

 なんだ、これって、「アジア的人権」じゃないですか。日本は西欧とは価値観が違うということじゃないですか。中国と同じだ。安倍さん、自分と中国が同じだということが皮膚感覚で分かるから、あんなに嫌うのかもしれませんね。

 そもそも、慰安婦問題でも、安倍さんの価値観は、かなり特殊なんですよね。アメリカに批判されてオタオタするわけですから。

 それなのに、自分の価値観が、アメリカとかヨーロッパと同じだという考え方って、どうしたらでてくるんでしょうね。それが不思議でなりません。

 なお、昨日の「いま、憲法のはなし」という朗読劇のことです。観てきた方から教えていただきました。30人ほどの役者さんが、文化人や政治家などに扮して、各人の主張を述べるという劇だそうです。

 そこに、「ジャーナリストの松竹伸幸です」という形で私が登場し、「憲法九条で軍事戦略を考えたらどうなのでしょう」と問いかけ、本に書いている持論を展開するそうです。私のあとに伊勢崎さんが出てきたり、内田樹さんが登場したり、関係者が総出演ということでした。

 大阪公演もあるので、見に行きます。どなたか、行きませんか? 28日(金)の18時30分からと、29日(土)の14時、18時ということですけど。場所は、天満橋から徒歩5分のドーンセンターです。

2013年6月12日

 突然ですが、「非戦を選ぶ演劇人の会」というのがあります。昨晩につづき本日の午後2時より、「いま、憲法のはなし」という朗読劇をするということです。

 いま、ウェブサイトをみたら、市毛良枝さんとか高橋長英さんとかが出演されています。トークの部では、小熊英二さんがお話しするとか(聞き手は永井愛さん)。

 いや、それでですね、そのなかで、小林大介さんが私に扮して、『憲法九条の軍事戦略』の一部を読み上げるそうなんです。いまから東京まで行けないので、どなたかご関心とお時間があれば、いかがでしょう。あとでどんな場面だったか教えてもらえれば、とってもうれしいです。

 会場は全労済ホール。新宿駅南口から徒歩5分です。1500円だそうです。

2013年6月11日

 今週の土曜日、このテーマで講演します。「非核の政府を求める愛知の会」主催で、13時30分から、場所は名古屋市北生涯学習センターだそうです。関心のある方は、どうぞご参加ください(資料代500円)。

 やはり、いまの中国の動向をリアルに見ると、アメリカの核の傘は必要だという世論が生まれるわけですよね。それをどう克服するのかが中心点です。

 だからまず、中国の軍事力の拡大について、いろいろな角度から紹介するつもりです。その事実を抜きにして論じられない問題ですから。

 同時に、中国という国をどう見るかということと、平和運動の対応という問題です。一部に中国を社会主義だとか平和勢力だとする見方がありますが、そのことが、核問題での中国批判の矛先を少しでもにぶらせるとしたら、それは正しいのかどうかということでもあります。

 そうではないんですよね。たとえ中国を平和勢力だと評価するような見方があったとしても(私はそうは思いませんが)、核問題ではきびしい批判の対象なんです。

 そして、そのことは、「いかなる国の核実験」問題とその後の経験を通じて、日本の平和運動が到達してきたことであるはずなんです。核問題では、相手が社会主義か平和勢力かと関係なく対応しなければならないというのが、到達点のはずなんです。

 しかし、そうなっていない場合もありますよね。極端に言えば、アメリカと同じように批判してはならないと考えている人もいます。

 そうではないことをあきらかにするため、「いかなる」問題以来の、ソ連との論争をどう総括するかということにも触れるつもりです。これは政治的に微妙な問題を含みます。

 さらに、やはり大事なのは対案ですよね。安心するために核抑止力に頼る世論があるわけですから、「この軍事戦略の方が安心だよ」というものを示す必要があります。

 500円も資料代をいただくから、ちゃんとした資料を作成しないとダメなんです。それが大変。

 来週は四国へ。「日本国憲法と公務労働者の役割」がテーマ。国家公務員の労働組合で語るんですけど、こんなテーマで話したことがないので、これも大変。

 その翌週は大阪。弁護士九条の会のみなさんと、『憲法九条の軍事戦略』をめぐって議論してきます。その翌週は京都で学校の先生方を前に講演。体がもつかなあ。