2013年10月9日

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 ということで、この本のチラシを書店に送ったり、営業の担当者がゲラをもって書店を回ったりしているのですが、書店員にはとっても好評です。いまのところ、ひとつの店でさすがに100冊というのはないけれど、50冊、60冊、70冊の注文はざらにあるという感じでしょうか。

 だから、初刷り部数も、うちのような小さな出版社としては異例の数。印刷部数が注文数を下回ることは許されないのでね。

 こうして書店では平積みになるので、あとは読者が手に取ってくれて、お金を出す価値を感じてくれるかどうか。読者のみなさん、よろしくお願いします。絶対の損はさせません、というか、そごくお得な気分になるのは確実です。

 書店に並ぶのは、早ければ25日(金)で(東京中心)、26日(土)以降は、どこでも入手できるでしょう。うちにネットで注文される場合は、明日から受け付けて、すぐにお送りすることができます。1200円+税(60円)=1260円です。ネット注文の場合、送料はとりません。

 この本、私が勝手に名づけているだけですが、左翼再生三部作の最初の本です。左翼の言葉を問題にするものです。

 来年初頭には、二作目がでます。『台頭するドイツ左翼』。9月の総選挙で左翼三党で議席の過半数を占めたドイツで、社会主義政党であるドイツ左翼党はどんな綱領路線をかかげているのか、どんな組織活動をしているのかなどを研究したものです。東ドイツの政権党の後継政党として、あんな社会主義体制をつくったことをどう総括し、現在、国民に何を問うているのかもわかるでしょう。

 そして来年春、三作目。これは、そのときまでのお楽しみということで。第一作は言葉を問題にしているわけですが、第三作は理論そのものが問題になるでしょう。

2013年10月8日

 で、訳は紙屋さんにすべて依存するとして、本としての形にするのに、どうするのか。訳文をそのまま出すのか、それともイラストなども使って、表現の仕方を変えるのか。そこが問題でした。

 私は、基本は、文字で行く派なんです。通じる言葉があれば、通じる。そう思って編集をしてきたし、自分の本も書いてきました。文字が通じることを否定するのは、自分の仕事を否定することですからね。

 でもこの本は、イラスト付きだと思いました。本にすると決めた、その瞬間からです。

 文字では通じないから? そんなことはありません。文字だけで、すごく評判になったと思います。実際、うちのつぎに紙屋さんにアプローチした大手は、そういうやり方を考えていたようでした。

 でも、その通じ方が、イラストをいっしょにすると、何倍にもなると思ったんですよ。相乗効果がある分野の本だということです。だって、マルクスですよ。これだけ超訳が流行っている時代なのに、マルクスの超訳なんて誰も考えなかった。その上、マルクスとイラストの組み合わせなんです。マイナスとマイナスをかけてプラスです。これが成功したら、マルクスの価値が数倍あがりますよね。

 もちろん、それはイラスト次第。でも、成算があったわけですよ。このイラストレーターがいるので大丈夫だと。それが、今回書いてもらった加門啓子さんです。私の古いブログにも、これまで2回、本人が登場して書いています。イラストレーターではなく表紙の装丁者としてですけど。伊波洋一さんの『普天間基地はあなたの隣にある…』の本と、『オスプレイとは何か 40問40答』です。

 彼女のイラストとか装丁とかデザインとか、よく「かわいらしい」と言われます。固い文章を緩和して、読む意欲を持たせてくれると。

 それは否定しません。私も最初、そう思って、いろいろ頼んでました。

 だけど、私にとって、このイラストは、「かわいい」というより、「強い意思」を感じます。「主張」と言ってもいいです。「それは間違っている」とか、「こう変えたい」とか、「手をつなごう」とか、その他その他。そういうものが表現されています。

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 装丁するときもイラストを描くときも、すごく勉強して、考えて。私なんかが「ここまでできてうれしいな」と喜んでいるときでも、「松竹さん、こんな程度で満足していていいんですか!?」と詰め寄ってくるような意気込みがあるんです。だから、マルクスを主題にしても、がっぷり四つになっていると、私は思います。(続)
 

2013年10月7日

 ようやく完成です。『超訳マルクス ブラック企業と闘った大先輩の言葉』。お待ちどおさまでした。

 すでに訳者(著者といっていいと思いますが)がブログで紹介しておられます。紙屋高雪さんです。

 紙屋さんは、4年前に弊社が出した『理論劇画マルクス資本論』の解説・構成を担当してくれた方です。築地書館から『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』を出していて、プレイボーイなどにも連載をもっておられるので、知っている方も多いと思います。

 担当の編集者として何を感じ、なぜ出すことになったのか、どこを重視したのかなどを書いておきます。この本の趣旨などは、紙屋さんの解説を読んでいただくのが最適です。

 出すきっかけとなったのは、紙屋さんがブログに、『超訳マルクス』を書いたことでした。今回の本はマルクスの5つの論文等の訳なのですが、そのうちのひとつ、「国際労働者協会創立宣言」が載ったのです。

 今となっては思い出せませんが、たぶん、ブログに記事が載ったその日、すぐにメールを出したと思います。これを本にしましょうと。これ、いい判断だったんですよ。その後、うちなんか背伸びしても届かない大手からオファーがあったのですから。アブナイ、アブナイ。

 なぜすぐに反応したかというと、それは、「若者の心にひびく言葉で革命論が語られている」と感じたからです。それ以外にはありません。

 結局、それを探し求めているんです。どうやったら言葉が通じるのかということを。日本社会を変えるのは、国民多数の心をつかまなければなりません。ところが、左翼の言葉があまりひびいていません。少なくとも、多数には届いていない。だから、ほんらいは左翼の側にきておかしくない世論が、小泉さんにまわったり、橋下さんについていったりを繰り返しているわけです。

 それを克服するには、「理論的には正しいのだ」というのではダメだと思います。若者が自分のことだと思えるような形式が伴わなければなりません。具体的にいえば、2ちゃんに書き込んでいるような若者が、「これっておれのこと?」と思えるような言葉が必要なのです。

 そういう言葉を、理論的な水準を落とさずに書けるのは、おそらく紙屋さんが一番手だと思います。(続)
 

2013年10月4日

 昨日書いたことが、この企画の第一部となります。そして、第二部は「音楽」。

 出発点は、紛争解決人の異名をとる伊勢﨑賢治さん(東京外大教授でトランペッター)が、一昨年、福島高校で社会科の授業をしたことでした。そのとき、福島高校にジャズ研究部があることを知って、それを私に教えてくれました。それ以来、いつかコラボをやってみたかったんです。

 とりわけ、「あまちゃん」がはじまって、福島高校ジャズ研の第3代部長である大友良英さんがメジャーになっちゃったりして、どうしても実現したくなりました。福島で子育てしている家族のためというコンセプトを考えても、高校生の出演は大事だと思いました。そこで、あらゆる伝手をつたって、ジャズ研に連絡をとり、学校に伺って校長先生にもご挨拶し、了解を得てきたのです。

 だから、今回の目玉のひとつは、伊勢﨑賢治と福島高校ジャズ研究部による「ジャズヒケシ」です。スタンダードナンバーになると思います。

 ジャズヒケシはトークを重視するのが売りです。そこでトーク出演は、安斎育郎さんと池田香代子さん。わずか15分程度の出演のため、遠くから来ていただくのです。ありがとうございます。

 それで、この話をいろいろな方に伝える過程で、大阪大学の菊地誠さん(生物物理)が情報をくれました。有名な音楽グループを紹介できるかもしれないと。

 そうして出演が決まったのが、ZABADAK(ザバダック)です。詳しくはウィキを見てくださいね。最近では、NHKの「みんなの歌」で4・5月に流れた「いのちの記憶」が有名で、相馬民謡なども歌ってくれるそうです。

 その菊地誠さんも得意のテルミンで友情出演してもらえそうです。そのお話を福島のお母さんにしたら、菊地さんはお母さんがたに人気があるらしく、「会場は壇が低いので、みんな近寄ってかぶりつきで聞くことになるかも」ですって。

 その他、出演募集中です。

 で、原発や放射能のことを考えても、権威のある人が出演してくれるわけで、当初、第一部で助言者をしていただくことも考えました。でも、福島のことは福島の人で語り合おうということになりました。自分たちがそういう気持ちをもっていて、未来を切り開いていけるということを、福島の外にいる人に知ってもらおうという考えです。

 ということで、二部で発言する方は、一部の討論をよく聞いたうえで、発言してくださいね。よろしくお願いします。

 日時は来年3月9日(日)の午後1時半から。場所は福島市音楽堂大ホール(1000人)です。参加費は無料。

 子連れ歓迎。昼寝しても、騒いでも泣いていても、そのままで構いません。どうしても困るほどになったら、会場を見られて音も伝わる防音の「母子室」もあるそうです。

 ツアーは旅行社がそのうち企画するでしょう。たぶん、8〜9日の1泊ツアーと、9〜11日の2泊ツアーかな。後者は、浜通りまで行って、福島第一原発を目に収めたり、農民のみなさんと交流したりすることができるでしょう。

 では、お楽しみに。今後も、適宜、情報をお知らせします。

2013年10月3日

 福島原発事故の1年目、2年目と、うちの会社が後援する企画を、福島の浜通りで実施しました。1年目は、第一原発の保守管理をしていた蓮池透(北朝鮮拉致問題の)さんによる講演と、伊勢﨑賢治さんのジャズヒケシ。2年目は、池田香代子さん、齋藤紀さん、清水修二さんをお招きしたシンポジウム「福島再生の可能性はどこにあるか」。全国からツアーも実施し、県外の人には福島の実情をリアルに知る機会にもなったと思います。

 さて、来年は3年目です。本日、先月に引き続き、この企画の中心になってもらう予定の佐藤秀樹さん、佐藤晃子さんとお会いし、いろいろと話し合ってきました。佐藤さんは、うちから出版された本、「あの日からずっと、福島・渡利で子育てしています」の著者です。最近増刷になり、評判が高まっています。

 さて、その企画のことです。詳細を発表できるのはもっと先になるでしょうが、「こんな感じになるかなあ」ということを言えるところまでは来たと思います。

 タイトルは、つけるとすると、こうなります。「福島の子育て中の家族が生き方を語り尊重し合う音楽の夕べ」。もっと短く表現できるかっこいいタイトル、募集中です。

 「音楽の夕べ」にしては重たいなと思われるでしょう。でも、福島で子育てする家族を対象にして何らかの取り組みをする場合、ただホンワカと、その問題を回避し、音楽で癒やされることだけを目的として集うことはできない。というか、そういう取り組みでは現地の方もやる気にならないというのが、まず前提としてあります。

 でも、じゃあやるとなると、それが難しい。子育て中の家族といっても、福島に残っている人もいれば、妻と子どもを避難させている人もいれば、いったん避難したけれど戻ってきた人もいます。ずっと残っているけれど、できれば避難したいという人もいるでしょう。

 それらどんな決断も、それぞれの家族にとっては、とっても重大な決断だったはずです。自分の決断は正しかったと思いたい。だけど、自分の決断が正しかったという思いは、一歩間違えると、別の決断は正しくなかったということになりかねない要素を含んでいるわけです。

 そのため、同じように原発事故の被害者なのに、お互いを批判しあうような場面もあるわけです。そういうことはイヤなので、立場が違うとわかれば、あまり深入りしないつきあいにとどめようとしたり。

 できれば、そこを突破したい。まったく違う決断をした家族が一同に会し、お互いの立場を語り、それらをお互いに尊重したいと思えるようにしたい。だって、同じ被害者で、みんな失ったものがあって、本当は共感し合えるはずなのだから。

 1回の討論で解決するような簡単な問題ではありません。でも、それを試みる最初の機会にしたい。

 これが、企画の底を流れる趣旨になると思います。もちろん、これから実行委員会をつくるので、そこでどんどん変わっていくかもしれませんが。(続)