2014年10月7日

 先週の月曜日(29日)です。毎週月曜日に「編集委員インタビュー」という欄があるらしいんですね。新開真理編集委員によるインタビューでした。「集団的自衛権の行使容認は止められますか」「護憲派の防衛政策示す」「来春の統一地方選挙が重要」などの見出しがたっていて、以下、全文です。

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 他国への攻撃に自衛隊が出動する集団的自衛権の行使を認めるため、安倍政権は、戦後一貫してきた憲法解釈を変更した。社会科学系の書籍などで知られる「かもがわ出版」(京都市)編集長の松竹伸幸さんは、戦争放棄を掲げた憲法9条とは明らかに矛盾する今回の閣議決定に反対し、政党の枠にとらわれず検討可能な対案を示そうと「自衛隊を活かす会」を発足させた。行使に向けた関連法案が審議される来年の通常国会を見据え、「今が一番大事」と各地を走り回る。

──「活かす会」の事務局を務めておられます。
 「6月に『自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会』を結成しました。現行憲法の下で生まれた自衛隊を、日本の防衛とアジア・世界の平和構築の両面でどう活かすか、具体的な提言をまとめます」
 「呼びかけ人は元防衛官僚の柳沢協二さん、紛争地域で武装解除を指揮した経験を持つ東京外国語大学の伊勢崎賢治さん、(国の)防衛研究所元研究員で桜美林大学教授の加藤朗さん。安全保障や国際貢献の現場を熟知したプロフェッショナルです。それぞれの著書を私が手がけたことがあり、声を掛けました」

──10月には集団的自衛権をテーマに、3回目のシンポジウムが開かれます。
 「関連法案が審議される来年5月までに一連のシンポジウムでの議論を本にまとめ、集団的自衛権に突きすすむのではない防衛政策、日本の良さを大切にした国際貢献のあり方を提言するつもりです」
 「多くの国民が『憲法9条は大事』と考えながら、中国の動向などを見ると護憲政党には防衛政策がないようで不安だし、ちょっと危ないけどやっぱり安倍さんが…という感じで一定の支持につながっている。核軍事大国には日本だけで対応できない、米国に頼らざるを得ないから集団的自衛権が必要、という感情も少なからず共有されている。それに対し、外交で何でも解決できるという説得はできない。護憲派にも信頼できる防衛戦略があることを示し、憲法を守る大きな流れをつくりたい」

──昨年末から動き出されたとか。
 「国民の命や日本の主権を守るに足る、信頼性のある外交・防衛政策を提示するには現場の意見を聞く必要があると柳沢さんに言われ、会の名称なども相当議論した。私は『憲法9条』を入れた案を出したんですが、それだと自衛隊関係者の参加が難しい、ほんのり護憲みたいな感じでいいんじゃない、ということで、現状に落ち着きました」

──発足後、何か発見はありましたか。
 「会への賛同者やシンポジウムの参加者に、予想以上に若い人と女性が多い。以前から、憲法9条と自衛隊、国際貢献をセットにして考えないと護憲運動は広がらないと思い、『憲法九条の軍事戦略』などの本を書いてきたんですが、9条は世界を変えていけるという呼びかけが共感を得ていると思います」

──政府はわずか1カ月半の与党協議で集団的自衛権行使容認の閣議決定を強行したのに、関連法案の審議は先送りしました。
 「水面下で法案の準備を進め、統一地方選挙後に整備に入るでしょう。そこで大事なのは、この秋から来春の地方選。国政のテーマは争点になりにくいが、今回の閣議決定がその後の地方選挙に影響したことは自民党も認めている。自衛隊関係者でさえ、不信感や疑問を口にしていますから。一連の選挙の結果次第では、通常国会への法案提出が難しくなる。今が一番大事です。

──活かす会の提言に賛成だとしても、では誰に投票すれば?
 「託す候補が見つからない、ということにならないよう、政党への働き掛けにも力を入れています。各党の政策審議会には毎回、シンポジウムの招待状を出し、全国会議員にも知らせている。幹事長や政調会長、議員秘書や党職員も含めると、全政党から参加があります。提言の英訳も検討している。護憲に基づいた防衛政策という選択肢を示したい。素地はあると確信します」

2014年10月6日

 台風が近づいてきて、朝になって大雨だったので、参加は少ないだろうなと思っていました。そうしたら、朝になってからの参加申込みが10人近く。台風で行き場のなくなった方が来られたんでしょうか、100名ほどの参加でした。ありがとうございます。

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 いつもの通り、発言者に点検をしていただいた上で、ホームページにアップしますが、難しかったという方もいました。軍事の話になるからでしょうかね。

 だけど一方で、その軍事のリアリティも感じさせられました。元空将補の林さんがおっしゃってましたが、空の場合は、マニュアルが役に立たない。そこをどうするかという問題提起をしておられました。

 つまり、十数キロ先に他航空機が見えたとして、そこに到達するまでに一秒しかかからない。他国のものかどうかも分からないが、敵意を持っているかどうかなんて、さっぱり分からない。マニュアル通りに信号弾を発射したとして、相手が道理の通じないと、そこから戦争になるかもしれない。だからマニュアル通りにはしない、という判断が正解な場合もある。そんなお話もありました。

 元陸将の渡辺さんも、いつものように論理的なお話でした。やはり現場にいるものとしては、たとえ0.1%であっても起こり得る事態であれば、それに対処すべきだと思うのがふつうだし、訓練もしておきたい。だけど、それは現場の話であって、政治がそれを求めないなら、現場が暴走することはしないのだ、ということもおっしゃってました。

 残念ながら、15事例の多くを占める海上自衛隊関係者は、予定した方が急逝されたので、参加がありませんでした。でも、この分野は、別途インタビューをするつもりです。

 これまで3回のシンポジウムをまとめて、来年、本をつくります。憲法9条の枠内で自衛隊が国際秩序構築に貢献する道はどんなものかがテーマです。そのなかには、海自関係者の証言も載ることになりますので、ご期待ください。日本防衛の本は、その後です。

 先週、木曜日に福島に行って、その後、本日まで東京でした。毎晩、遅くまで仕事したので、さすがに疲れました。今朝、急に体調が悪化して、こっちに戻ってきて病院へ。まあ、休めば大丈夫だと思いますけどね。だけど、今週末からは海外だし、どうなることやら。

2014年10月3日

 昨日は、お昼に京都を出て、福島へ。「福島の過去・現在・未来をを語る」と題するシンポジウムに参加するためだ。「生業を返せ、地域を返せ!」を掲げ、国と東電の責任を明確にするために闘っている福島原発訴訟の原告団・弁護団が主催である。

 パネラーは、脚本家で映画監督の井上淳一さん、元東電社員で北朝鮮による拉致被害者家族の蓮池透さん、元NHKキャスターの堀潤さん、裁判の原告団長である中島孝さん。それにどういうわけか私まで加わっている。

 この原発訴訟、これまでは原告をどう増やすかということに力を入れてきた。そのために、うちから『あなたの福島原発訴訟』という本も出したのである。最近の第4次提訴で、原告は4000人近くになり、県内全市町村に広がっていて、無視できない勢力になっている。

 裁判はこれから、証人尋問など、どんどん山場を迎えていく。国と東電の責任を問うという裁判の目的を達成するうえでは、世論の支持と監視が不可欠になっていく。

 そういう局面だから、今後は、原告を増やしていくということから、世論へ訴えていくということになっていく。そういう方向に向かう第一弾として、昨夜のシンポジウムは位置づけられていたというわけだ。

 内容を本にして(もちろん、出版はうちで)世論に訴えるということなので、ここではあまり書かない。だけど、みなさんの発言を聞いていて思ったのは、福島原発事故というものが、それぞれの人生、生き方に大きな影響をあたえたということだ。

 私だって、出版人として、たくさんの本をつくったという変化だけではない。出版とは関係ないのに、あの事故以来、毎年の3.11は福島で過ごすようになるなんて、かつて考えられなかった。

 それだけの影響を私にあたえたものとしては、学生時代に体験した横浜のファントムジェット機墜落事件かなあ。1歳と3歳のお子さんが死亡したけれど、助かったパイロットは何の裁きも受けなかった事件である。私がこういう分野を仕事にする原点になったものだ。

 書店を見ると、福島の問題をあつかう棚は、どんどん減っているのが現状である。それなのに、うちが出版する福島関連の本は、少しずつ増えている。これって、営業的にいうと、どんどん苦しいところに突っ込んでいくことだ。

 だけど、大事な本を出さないわけにはいかない。それを読んだ人の人生や生き方が変わっていくならば、そういう人がじわじわと増えていくならば、日本もまた変わっていくことにつながるのだと思う。

 でも、営業的にも成功が求められる。裁判の進行と平行して、全国の書店が、3年前みたいに平積みにしたいな、ふたたび福島関連本の棚を拡張したいな、と思えるような本を出していきたい。

2014年10月2日

 コミュニストのマンガ評論家、紙屋高雪さんをご存じだろうか。ブログも評判が高い。
 うちからは、ふたつの本を出している。『理論劇画マルクス「資本論」』『超訳マルクス』だ。さすがコミュニストだね。

 その紙屋さんが、小学館新書を出した。それが『“町内会”は義務ですか?』。サブタイトルが、「コミュニティーと自由の実践」となっている。他社の本だけど、うちの著者でもあるし、敬意を表して取り上げておくか。

 町内会とか自治会とか、住んでいる場所にあるよね。回覧板とか回ってくるヤツ。私はほとんど集合住宅暮らしなので、町内会という言葉に接することはなかったけど、どっちの同じ機能。

 こういうのって必要なものだと思う。だけど同時に、忙しいから、あまりいろいろ言わないでねという感じの対応かな。少し正確は違うけど、PTAとか保護者会とかでも、同じような問題に直面する。

 私は、それはまじめにやった。保育園の保護者会では、会長を2年間もやった。小学校のPTAでは「役員選考委員」という、誰もやりたがらない仕事を引き受けた。

 理由は簡単。保育園の保護者会は、もともと仕事を持っている人の集まりなので、会議は夜だけだし短いし。それに若いお母さんと話してると楽しいし。

 「役員選考委員」というのは、時期のPTA役員をお願いする係。説得できないと自分がやることになるので、みんな敬遠するんだけど、私は保育園のときのつながりがあるので、大丈夫だった。この係は、昼間の会議に出ないでいいのが、選んだ理由の1番手だったんだけどね。

 だけど、自治会は、まだやってない。ややこしいなと思う気持ちもあったが、割と大規模な集合住宅だったので、ずっと役員でやっている人がいて、お鉢が回ってこなかったこともあす。

 で、紙屋さんのこの本である。町内会について私と同じ程度の(失礼)認識だったのに、ことの流れで会長を引き受けることになった著者の体験談だ。そして、その体験から導きだした「コミュニティーと自由の実践」にまつわる理論書ともいえる。

 ほとんど強制加入みたいになっている状況、会長ともなればいろいろな会議に出ることを求められる、それを断るといつの日かつるし上げにある。だけど、夏祭りぐらいはやりたいねと思う人びともいる。

 そういうなかで、紙屋さんは、縛りのきついやり方をやめ、完全ボランティア制の町内会をつくっていく。その話の流れが面白く、ためになる。そして、そういう町内会こそが、いまの自体に求められていることを証明していきうのだ。

 すごく読みやすい。1時間少しで読めると思うので、是非、手にとってほしい。

 それにしても紙屋さん、見かけによらず、撃たれ強いね。そういう資質、将来にわたって必要ですから、大切にしてください。

2014年10月1日

 覚えておられるでしょうか。7月15日付で、「泥憲和さんの本の出版へご協力をお願いします」という記事を書きました。

 元自衛官の泥さん(本名ですよ)、これまでも護憲とかヘイトスピーチ反対などの分野で活躍されてきました。6月でしたでしょうか、集団的自衛権に反対する街頭演説の内容をフェイスブックにアップしたら、瞬く間に2万4000もシェアされるという驚異的な反響を呼び起こしました。

 その泥さんの本をつくろうという話が急速にまとまりました。でも、まったく無名だった泥さんの本をつくるって、売れ行きのことを考えると、出版社としてはすごく勇気がいるんですよね。

 そこで、池田香代子さん、池辺晋一郎さん、伊勢崎賢治さん、伊藤真さん、羽柴修さん、柳澤協二さんに呼びかけ人になってもらい、資金協力を呼びかけたとのです。それが、7月の記事の内容でした。

 すごいんですよ。呼びかけにこたえて、200人もの方がカンパを出してくれました。120万円も集まったんです。昨日、自分も資金協力したいという方から電話がありました。もう期限が来たのでお断りしたんですが、そうしたら、「じゃあ、20冊買いますので予約させてください」ということでした。

 元自衛官ということとか、安倍さんを何とかしたいという気持ちが高まっていることとか、いろいろな要素が合流して、こういう結果になったんでしょうね。出版の新しい可能性を生みだすんじゃないかと期待しています。
 
 とはいえ、まず本をつくろうという決定が先行して、実際の本づくりは、それと平行した作業なんですよ。いくら泥さんに執筆する力があるとはいえ、本にするだけのものをつくるって、そう簡単ではありません。毎週の講演会をこなしながら、いろんな方の協力もえつつ、がんばって書いていただき、ようやく昨日、書き上げてもらいました。

 普通だったら、原稿をもらってから、ゲラを出すまで、一カ月はかかりますよね。どんなに急いでも1週間です。でも、この本、9月末に出すと予告したので、いくらなんでも10月中には出さないといけません。

 ということで、本日、あらゆる力を総動員して、ゲラづくりの最中です。10月末には完成すると思います。

 反響が大きいので、特別に、弊社のホームページで「予約注文」できるようにしました。ご期待ください。