2014年11月20日

 カンパを頂いた方には、そろそろサイン本が着く頃ですが、どうでしょうか。そう、我らが泥さんの『安倍首相から「日本」を取り戻せ!!──護憲派・泥の軍事政治戦略』のことです。

 元自衛官。自衛隊に反対するデモをどう考えるか苦渋しているときに、教官から「デモの自由のある日本を守るのが自衛隊だ」と教えられ、そういう日本を保証する憲法を守ることと、自衛官であることの両方を誇りにして生きてこられてきました。

 その泥さんが、自衛隊合憲論の立場から、安倍首相をこっぴどく批判し、まともな軍事戦略をこの本で打ち出しています。面白くないわけがありません。

 私、泥さんのこと、ずっと前から感謝しているんです。蓮池透さんの『拉致──左右の垣根を超えた闘いへ』を出したとき以来です。

 蓮池さんのことも、その本のことも、いまでは左翼業界からだって受け入れられていますが、本を出した5年半ほど前は、そうじゃなかったんですよね。蓮池さん、「9条を改正して、拉致被害者救出のため自衛隊を北朝鮮に送れ」みたいなことを言ってたし、うちから本を出して、いいことが書いてあっても、「本当なのか?」「どうせまた変わるんじゃないか?」なんて受け止めがあったんですよ。9条の会なんかに、「講演で呼んでもらえませんか」と持ちかけても、当初、「9条とは関係ないし」なんて言われる日々が続きました。

 そういうときに、泥さんから電話があったんです。彼が事務局をしている姫路の9条の会で蓮池さんを講演に呼びたいという内容でした。

 すごくうれしかった。蓮池さんの本をつくるには、私としてもすごく勇気がいったし、サブタイトルで「左右の垣根を超えた闘いへ」なんて打ち出しながら、左からは受け入れられなかったとなれば、蓮池さんにも申し訳がたたないと思っていたんです。その危惧を払拭してくれたのが、泥さんなんです。

 そのことだけでも、泥さんのことがよく分かります。被害者への共感、何が護憲運動に求められているかの洞察、おそらく反対も多かったであろうなかで貫いてくれた実行力。いろんなものを兼ね備えている人です。

 その泥さんの安倍批判、平和戦略、慰安婦論。鋭い論理と暖かいまなざしが溶け合った本です。是非、ご一読を。

 明日の神戸(18時半より、元町駅西口から徒歩8分の「こうべまちづくり会館」)を手始めに、12月22日の東京まで、4回の出版記念講演会があります。予定一覧はここにあります。参加費は1000円ですが、泥さんの本を出版するということで事前にカンパを頂いた204名の方は無料です。

 是非、ご参加ください。つい最近、大事件が発生しまして、一風変わった泥さんと会うことができます。では、明日、会場で。

2014年11月19日

 国連総会で人権問題を扱う第3委員会が、北朝鮮の重大な人権侵害を国際刑事裁判所(ICC)に付託することを安保理に求める決議を、18日に採択したという。賛成111、反対19、棄権55だとのことだ。総会を経て、安保理がこれを議題にするかどうかを決めることになるが、どうなるかは微妙な情勢だ。

 安保理がこれを犯罪として認め、国家指導者をICCに付託すると決めれば、ICCはそれに従うことになっている。ICCは4つの罪を裁くことになっているが、そのうち、「人道に対する罪」にあたるということになろう。

 北朝鮮における人権侵害というものが、あれこれの人権侵害の一種というものではなく、非情に大規模で組織的であって、「人道に対する罪」にあたることについては、おそらくあまり異論がないであろう。それが裁かれるべきであることも当然だ。

 しかし、じゃあたとえICCがそれを決めても、北朝鮮の国家指導者を裁判所に突き出すのは、北朝鮮自身である。北朝鮮がそんなことをやるはずもなく、いくら決議してもそ現実味のないことは、誰もが承知しているところである。

 国際的な批判を高めるのが目的なのかもしれない。それは大事なことではある。だけど、一時的には北朝鮮の反発を高める。北朝鮮は早速、自制していた核実験に影響があると表明し、威嚇している。

 まあ、そんな威嚇でびびっていてはダメである。しかし、この路線を進めることで、具体的に何か成果を得られると思っていたら、お花畑のようなものだ。

 このような決議に実質的な意味があるのは、それによって、北朝鮮の人びとが、自国の指導者がそれほどの国際的な批判にさらされていると自覚できるときだけである。旧ユーゴ国際戦犯法廷にミロシェビッチが起訴されたときも、時間はかかったけれど、人びとのなかでミロシェビッチを指導者から引きずり下ろすだけの世論が強まり、起訴されることになったわけだ。

 北朝鮮のような情報暗黒社会の場合、そういうことがすぐには期待できない。だけど、だからといって、黙って放置するというわけにもいかない。

 何十年かかかるにしても、北朝鮮が民主化されるときは必ず来る。その際、体制を打倒した人びとが、「国際社会が人権侵害を糾弾してくれたことが励みになった」と言えるようなことはしておかないといけないのだと思う。

 ただ、今回の動きによって、拉致問題が動くことは絶対にない。だから、そこはリアルに見て、日本政府が率先してやるべきなのは、この決議の推進はEUあたりにまかせて、その分の知恵と力を拉致問題に振り向けることだろうと思う。

2014年11月18日

 いよいよ総選挙ですね。それなりに多くの人にとって(私もですが)、安倍さんの暴走を食い止めたいという願いを掲げた選挙になるでしょう。

 ただ、自民党が議席を減らすことは想定しても(民主党のていたらくがあるので増えるという人もいますが)、過半数割れして野党に政権が移ると本気で考えている人はいないでしょう。そうでもないですか?

 それでも、安倍さんを降ろしたいという願いを叶えるとすると、どういう選挙結果が必要になるんでしょうか。それは、自民党のなかで、せっかく安定多数を確保していたのに、安倍さんが解散総選挙に踏み切ったことによって、安定した構図に変化が訪れるときでしょうね。「だから言わんこっちゃない、やはり選挙をやらなければよかったのだ」という声が充満する場合です。

 ひとつは、安倍さんと本気で対決する政党が飛躍的に前進することでしょう。民主党などのちゃらんぽらんな路線じゃなくて、全面的な対決が国民世論だと証明されるという感じかな。

 同時にもうひとつは、自公が衆院定数の3分の2を割れることです。今回、3分の2以下に落とし込み、1年半後の参議院選挙で過半数割れに追い込めば、野党が反対する法案は通らなくなるわけですから。まあ、この場合、安倍さんの政治責任が浮上するのは、次の参議院選挙のあとかもしれませんけど。

 でも、このラインなら簡単なんです。いま衆議院定数は480で、3分の2は320ですけど、自民は294、公明は31で計325なんです。6議席減ればそうなるんです。(今度の選挙で定数が475になるので、3分の2を上回るにはは317になります。読者の方にご指摘を頂いたので訂正します)

 ただ、その程度では、野党から与党になるのが出てきて、問題にならないでしょう。維新は、今度の選挙は追い詰められていて、話題づくりのために公明党との対決なんか打ち出しているから、そう簡単に与党入りできないところに自分を追い込んでしまった。でも、次世代の党はいつでも与党になるので、その19議席分も減らさないとダメというのが、絶対的な条件ですね。

 以上は、取らぬ狸の皮算用です。そんなことを計算せず、いろいろな可能性をはらんだ選挙になるので、あべこべ言わずにがんばらなければね。

 安倍さんを倒すために必要なのは、この間書いてきたように、保守との一点共闘を政策共闘に発展させることです。だから私としては、選挙に力を入れつつ、そのための政策づくりに邁進する日々です。

2014年11月16日

 沖縄県知事選挙は、地元紙などの世論調査から、翁長さんがダブルスコアで勝利することが早くから伝えられていた。だから、終盤に自民党のてこ入れがあったけど、基本的な構図は変えられないと思っていたから、あまり心配していなかった。でも、勝ててよかったです。

 4年前の県知事選挙では、革新共闘の伊波さんを応援するため、候補者として表に出るかなり前にお会いし、本を出すことになった。今回と同じく11月が選挙だったが、9月に刊行したのは『普天間基地はあなたの隣にある。だから一緒になくしたい。』という長い名前の本になった。帯文は、「沖縄が変われば日本が変わる。日本が変わればアメリカも変わる」。

 だけど、沖縄の革新共闘は、共産党、社民党、社大党という、「安保廃棄」で一致する共闘で、安保によって押しつけられた米軍基地に苦しめられている沖縄においても、県知事選挙で勝利するだけの多数を得ることは難しいと感じた。だから、ちょうど何十年にわたる防衛官僚としての仕事を終え、「沖縄に海兵隊基地はいらない」と表明していた柳澤協二さんにお会いしに行き、安保容認の立場でも普天間基地の撤去は当然という本をつくってほしいとお願いしたのだ。それが『抑止力を問う』という本になった。

 その2つの本を同時に出すことによって、安保廃棄か容認かにかかわらず、普天間基地の撤去は当然で、伊波さんの主張への支持を増やそうとしたわけである。私自身、沖縄の40書店くらいを営業で回って、たくさん本を積んでもらった。

 4年前の選挙では負けたのだが、今回、翁長さんが保革共闘の候補者となったことは、その時の判断が間違っていなかったのだと思う。いま、自民党が歩み始めている道は、集団的自衛権にしろ、沖縄への基地押しつけにせよ、旧来の自民党の中心にいた人にとっても受け入れられない道なのである。そのことを自覚して、今後の政治のことを考えなければならないと思う。

 それにしても、那覇市長選挙まで、これだけの大差で勝てるとは思っていなかったので、うれしさ倍増である。新基地建設が焦点となる県知事選挙とことなり、それが市政の争点にならないし、県知事選挙と違って、公明党が自民党といっしょにやるからだった。

 それでも自公が市長選挙に勝てなかった。そこには、普天間基地問題というだけでなく、安倍政権が進める路線への批判が保革を超えて存在し、広がっているという現実がある。

 つまり、安保条約を認め、自衛隊は合憲だと考える自民党支持者であっても、安倍さんの路線にはついて行けなくなっているということだ。その現実をリアルに見なければならない。翁長さんだって、安保条約を廃棄するとか、自衛隊は違憲だとか、そういう立場には立っていない。

 そこを革新の側が問題にしないことによって、県知事選挙でも、市長選挙でも勝利することができた。翁長さんを推薦した「革新共闘」の側が、与党という立場から、安保廃棄・自衛隊違憲の立場で翁長さんにものごとを要求しはじめると、普天間をなんとかしたいということで一致していた共闘が、もろくも崩壊することになる。沖縄は、これからが試練と挑戦である。

2014年11月14日

 もちろん、政策面では消費税を中心とした日本経済、集団的自衛権を中心にした安全保障が重要な争点だ。だけど、一番求められるのは、説得力ある政権論ではないかと思う。

 だって、要するに、今度の選挙では、安倍さんを何とかしようね、したいねという人たちの支持を集めなければならない。安倍さんの退陣を求めて闘うわけだが、退陣を求めるだけならあまりに当然のことであって、問題は、どうやったら退陣させられるかが問われるわけである。

 もちろん、安倍さんではダメだという党なら、どの党であれ、「自分の党が躍進することがカギだ」と主張するだろう。選挙後、安倍政権が続くにしても、安倍さんと正面から対決する党が大きくなるのは大事なことである。

 でも、一方、安倍さんを退陣させるというなら、退陣させたあと、どういう政権が求められるかが、どうしても議論の俎上にのぼらざるを得ない。安倍さんの続投を前提にするなら、政策論だけで闘えるが、退陣を求める場合は、対応が根本的に異なってくるということだ。

 たとえば、おそらく選挙のなかでは、いろいろ議論が沸騰してくると思われる。「安倍さんは特殊な極右的な政権だが、それよりは穏健な保守の政権の方がいいか」ということだって問われるだろう。自民党がある程度議席を失いそうで、解散を主導した安倍さんへの批判が与党にも出てきたとき、「じゃあ、谷垣さんならどうか」という局面が生まれるかもしれない。

 その時に、「安倍さんもその他の人も、みんな本質的に同じだ」という答をするのか。誰がなろうと政治は変わらないということなら、安倍さんだけはイヤだという、割と広範に存在する国民の気分をうまく捉えられないような気がする。

 1998年8月25日、『赤旗』に「日本共産党の政権論について」として、不破哲三委員長への緊急インタビューが掲載された。そこで不破さんは、「いま、政権論がなぜ注目されるのか」として、次のように答えている。これは、当時の共産党の考え方ではあるが、現在、安倍退陣後のことを考えるうえで、参考になるのではないか。

 不破 現実には、野党間でそういう協議がはじまっているわけではないし、私たちのところに政権協議のよびかけがあるという状況でもないのですが、いわば状況を先取りする形で、マスコミから問いかけがある、それに答えるとそれが反響をよぶ、というのは、やはり背景に、政治情勢のそれだけの進展があると思います。
 一昨年の総選挙でわが党が躍進し、昨年の都議選では首都東京で自民党につぐ第二党になりました。そしてこんどの参院選ではまた大きな躍進をして、ここで得た得票数、議席数では、自民、民主につぐ第三党の地位を得ました。……
 いま解散・総選挙が政治の焦点になっていますが、それがおこなわれて、自民党が衆院でも多数を失うことになったら、野党の連合政権という問題が、いやおうなしに日本の政治の現実の日程にのぼってきます。これが、第一の条件ですね。
 第二に、その野党の側では、日本共産党の躍進と並行して、20年近くつづいてきた「共産党をのぞく」という異常な体制が崩れ、いろいろジグザグはあっても、日本共産党を一つの柱にした野党共闘が、国会で現実に展開されている、という状況があります。……
 ですから、この問題は、私たちの側からいっても、ただマスコミに聞かれるから答えるというだけの意味をもつものではありません。こんご、日本の政局を国民の立場できりひらいてゆく展望の問題として、私たちが責任ある答えをもって対応すべきことなのです。

 もちろん、現在と事情は異なる。自民党が敗北して、野党に政権が移るということを現実味をもって受けとめている人は少ないだろう。だけど、安倍さんの退陣ということを現実味をもった政治課題だと捉えるならば、それができるというならば、いまの局面にふさわしい「責任ある答え」が必要な問題ではあると思う。