2014年12月18日

 アメリカとキューバが国交正常化に向けた交渉を開始するって、大ニュースだ。いろいろ障害もあるだろうが、成功することを願う。

 社会主義を名乗る国って、たぶんほとんど行ったことがある。キューバ、中国、ベトナム、北朝鮮。そのなかで、キューバというのは民主化に一番近い国だという感想を持っている。なんというか、人の表情がいちばん明るいし。

 だいぶ前になるが、ローマ法王が訪れた際、政治犯100名以上を釈放したことがあった。他の社会主義を名乗る国で、そんなの聞いたことがない。

 まあ、キューバ的には政治犯ではないので、ローマ法王も政治犯という言葉を使わず、キューバの国内法に違反して牢獄にある人々として、釈放を求めたのである。相手側にそういう配慮があれば、そんなことができたりする国でもある。それなりの福祉水準をつくっているので、多少の民主化で政権党は揺らがないという自信もあると思う。

 アメリカとの関係が正常化して、政治的軍事的な緊張が緩和したら、複数政党制や自由選挙に向かうことを期待したい。そうやって、水準は低いけれども社会主義だよね、という国づくりに励んでほしい。

 なお、私自身は、複数政党制も自由選挙もない国のことを、社会主義国だとすることに反対である。それに向かっている国だとか、そんな位置づけをすることにも賛成できない。

 もともとマルクスは、政治的な権利の獲得のために全力で闘うわけだが、それだけでは人間が幸福になれないことを早くから見抜き、社会的な権利が大事だとして、社会主義を構想したわけである。政治的な権利は、社会主義の前提なのである。その前提を欠いている国を社会主義だと言えるはずがない。

 中国なんか、いま複数政党制や自由選挙を否定しているというだけではない。そういう方向に向かうこと自体を否定しているのである。とても社会主義だとは言えない。

 経済面に限定して社会主義的な要素があるかどうかという程度の議論なら、まだついていける。でも、国有化とか国家の規制とかをもって判断の基準にすると、資本主義にだってそういう要素があるから、やはり社会主義かどうかの議論は難しいと思うんだけどね。

2014年12月17日

 アルジェリアのフランスからの独立戦争を描いた名作。この映画が封切られたのが1966年。日本に入ってきたのは、その2年後くらいだろうか。

 大学生のいとこに連れられ、中学1年生で観に行った記憶がある。ベ平連をやっていたから、私を感化しようとしたのかもしれない。いまは姫路で創価学会の幹部をやっているそうだけど。

 突然そんな話をしたのは、慰安婦問題の本を執筆が最終局面に入ろうとしていて、それを論じるのに、世界的な植民地支配のこととか、あるいは戦後の和解の事例とかを勉強しているからだ。その過程で、「アルジェの戦い」を記述している本があって、なつかしく思い出した次第である。

 この映画、いまの日本にとって教訓的だ。ふたつの点で。

 ひとつは、「対テロ戦争」の文脈。フランスにとって、この独立戦争は「対テロ戦争」である。「対テロ戦争」の原則は「味方でなければ敵」というもので、敵を見つけだすために徹底的な拷問をやっていく。それが敵を大量に作り出し、フランスは敗北していくのである。ああ、いまも同じことをやっているんだと感じる。

 というか、この映画、2003年に「対テロ戦争」をはじめたアメリカの国防総省が、幹部教育用に上映したらしい。アルジェリアでフランスが負けた原因をつかもうというのがその趣旨。だけど、つかめなかったんだね。

 もうひとつは、植民地支配の文脈。アルジェリア独立戦争と呼ばれるけれど、フランスがこれを「戦争」だと認めたのは、62年の独立から35年もたった1997年。それまでは、アルジェリアで起こっていたことは、フランス国内の「治安維持」の問題だという位置づけだったわけである。

 フランスがアルジェリアの支配を「不当」だったと認めたのは2007年。アルジェリアを訪問したサルコジ大統領が、「植民地システムはその性質からして不当であり、隷従と搾取にほかならなかったと発言した」(平野千果子「「人道に対する罪」と「植民地責任」」『「植民地責任」論』所収)と、一般的なかたちで認めたされる。

 日本の村山談話から遅れること12年だ。しかも、日本と同様、支配していた当時から違法だったと認めたわけではない。補償をしたわけでもない。
 
 日本の慰安婦問題は、こういう国際的な水準のもとで、あの安倍首相に何らかの措置をとらせなければならないという問題である。しかも慰安婦の方々が納得する措置をとらせるのである。

 いま、本の最後の部分、慰安婦問題で安倍さんは何をすべきかを書いている最中。難しい。

2014年12月15日

 選挙の結果、とっても象徴的でしたね。いろいろ課題も見えてきました。評価の基準は、安倍政権を終焉に追い込む上で、何が大事かということでしょうね。

 政党同士の構図は、本質的には、あまり変わりませんでした。選挙結果を受けて、安倍さんが改憲論議の推進を表明したことは、やはりここを狙っていたんだねということでしょう。

 ただし、野党第3党が、次世代から共産に変わったことには積極的な意味があります。何と言っても、安倍政権に対決するためには、対決する政党が必要ですからね。解散前と変化したのは共産党が伸びただけということなので、解散に踏み切った安倍さんの判断も問われることになるでしょう。 

 その共産党が伸びた分、次世代が壊滅状態になりました。安倍さんは、改憲の発議のためには、公明を切って次世代と手をつなぐという選択ができなくなったわけですから、誤算かもしれません。

 何と言ってもうれしいのは、沖縄の結果です。何回かブログでも書きましたが、本当に全員が勝っちゃいましたね。選挙の結果、自民、民主、公明、維新は、間違いなく比例選挙の廃止の方向に動くでしょうから、小選挙区で安倍路線に対抗する力を身につける必要があります。予定より少し遅れますが、2月のはじめに沖縄に行って、本をつくる準備をしてきます。

 そして、大事なのは、保革共闘を支える政策ですよね。安全保障分野では、まさに保革共闘をしているような「自衛隊を活かす会」が提言を出そうとがんばっていますので、引き続きご注目ください。

2014年12月12日

 『月刊グローバル経営』って知らなかったけど、日本在外企業協会というのが発行している雑誌である。この協会、海外に進出して活動する企業のために、いろんな調査、啓発活動をしているらしい。

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 最新号(12月)は、「中東の光と影」と題する特集がある。寄稿しているのは、駐カタール大使とか元駐シリア大使とか、三菱電機サウジの社長とか。どう見ても、私と関係があるように見えない。まあ、私の同期なんかは、多くが多国籍企業の幹部だから、この雑誌も読んでいるかもしれないけどね。

 ところがである。その雑誌に私の本の書評が載ったのだ。『集団的自衛権の焦点 「限定容認」をめぐる50の論点』である。

 すごいことだと思ったけれど、でも、自然なのかもしれない。昨日の記事に書いたように、いまは元自民党の議員が、反安倍をかかげて共産党といっしょに選挙に出る時代なのだからね。

 だから、多国籍企業の関係者が、集団的自衛権について心配しても当然だと思う。とくに中東でビジネスをやってきた方なら、軍事力を抑制してきた日本の戦後の路線が、中東で高く評価されていることは、誰だって知っているし。

 いまや、保守も革新も、大企業の管理職も下っ端の労働者も、ともに反安倍路線で手をつなぐときなのかもしれない。ということで、以下、その書評の内容。書いてくれた方は、大企業の幹部で、芦部先生の憲法の本をいつも手元において勉強しておられるらしい。

 『月刊グローバル経営』のBooks欄のコラムは経済関連の著作の書評が中心である。今回は政治、それも憲法問題を取り上げる。 

 「集団的自衛権の議論については、マスコミで取り上げない日がないほど新聞、TV、雑誌上をにぎわしている。しかし、憲法第9条の解釈を根本的に変える憲法解釈であるが、国民の関心はそれほど高いとは言えない。さらに、尖閣・竹島の領有権問題、北朝鮮の書くの脅威等日本を取り巻く安全保障問題は深刻化しているが、これは今に始まったことではない。何故いま、安倍首相は「積極的平和主義」と従来の憲法解釈の変更による「集団的自衛権」の合憲かについて拙速に進めようとしているのか賛成派と反対派の双方の論点をじっくり勉強しようと考えて、手始めにこの本を読んだ。

 「安全保障の法的基盤の整備に関する懇談会」報告書(2014年5月15日)およびこれを受けてその翌日に行われた記者会見に対して、筆者は50の論点を挙げて反論を展開している。それぞれの論点が簡潔に書かれており、これらを読むと集団的自衛権とは何か、個別的自衛権と集団的自衛権等について、一般的な知識と焦点を学ぶことができる。

 本書の「はじめに」には、「日本の国を変えるという場合、その主体は19人の大臣ではなく、あくまで私たち国民一人ひとりのはずです」と述べられている。この問題を考えるための入門書である。」

2014年12月11日

 本日の朝日新聞、選挙予測の詳しいのが載っていましたね。注目はやはり沖縄でした。何と言っても、小選挙区4区のすべてて自民党候補が負ける可能性があるというわけですから。

 1区は共産、2区は社民、3区は生活、4区は元自民。いいですねえ、自民党の良心的な人々と手を組めれば、小選挙区で勝てる可能性があるというわけですから。

 私のまわりの一部では、選挙予測報道に失望し、「勝負は一年半後の参議院選挙だ」と言って、相も変わらず民主を軸にした共闘を模索する動きがあります。だけど、それはうまくいかないと思うんですね。野党のなかから、革新勢力と手を組もうという政党があらわれるのは、ちょっと想像できません。

 可能性があるのは、すでに実態のある共闘、保守と革新の一点共闘でしょう。問題は、その一点共闘が、運動面での共闘にとどまっていて、まだ政治を変えるための共闘にはなっていないことです。しかし、沖縄のように発展する可能性が、いまのところわずかでも存在するとしたら、そこだけでしょう。

 選挙の結果、おごり高ぶった安倍さんが、きっと改憲その他で押してくるでしょう。その時、これまでの一点共闘の成果を土台にして、「もうこんな自民党にはいれない」という方々と意識的に話し合い、共闘のレベルを、「この課題には反対」というものから、「そのために政策を一致させ、いっしょに政治に打って出る」という水準に引き上げるべきだと思います。

 そのためにどんな努力が必要なのか。それを沖縄に学んできます。

 沖縄行きは1月後半。本のタイトルは、すでにご紹介しましたが、『安倍路線VS保革共闘路線──沖縄に学ぶ』です。乞うご期待。