2015年3月10日

 この間、自分のブログが話題になる機会があった。ふたつ連続したので、感想めいたことを書いておきたい。

 ひとつは、大阪であったある講演会のあとの懇親会だった。私は講演を聴いた側だったので、懇親会に参加した方に名刺を渡してあいさつして回った。

 ある方に名刺をお渡ししようとしたのだが、その方は、「朝日新聞OBの○○です」と自己紹介された。そして、私の名刺を見て、目を丸くして、「あの、問題の多いブログを書いておられる方ですね」と言われてしまった。

 そんなふうに見ている人も、それなりにいるでしょうね。自分では左翼の王道を歩んでいるつもりですけど、たしかに、普通の左翼を基準にすると、「脇道」のように見えるかもしれませんから。

 「はあ、たしかに、いろいろ物議を醸しているようですが……」と答えておきました。そのことを、懇親会に参加していた大学の先生に伝えると、「それだけ注目されているということですよ」と励ましてくれました。ありがとうございます。

 もうひとつは、私が住んでいるマンションのエレベーターのなかのできごとです。この地域の市議会議員さん(女性、無党派)とバッタリと出会いました。

 私の部屋、以前はこの方が住んでいて、その物件を買ったものですから、よく知っているんです。それで、近く出版する『慰安婦問題の終わらせかた』の話をしていたら、そのかたがおっしゃいました。

 「松竹さんのブログは、私のまわりの業界で評判になってるんですよ」
 「ええ、なんでですか?」 
 「いえ、たとえば、社会党が凋落した原因がよく分かるって」

 いや、その時は、よく意味が分かりませんでした。社会党凋落の原因って、ブログに書いているわけじゃないし。

 でもおそらく、その市議さんのまわりには、旧社会党系の方々が多いと思うんです。それで、私が左翼のありようについて書いたりすると、かつての自分が批判されているように感じるのかもしれません。ごめんなさいね。

 まあ、注目されないより、された方がいいので、これら全てを激励だと受けとめます。そして、引き続き書いていきます。

 社会党凋落の原因ですが、『慰安婦問題の終わらせかた』には書いています。慰安婦と関係ないようですけど、すごく関係しているので。

2015年3月9日

 内閣府は3年に1度、自衛隊に関する世論調査をやっている。1月に実施され、3月に公表されるのだが、その最近の調査結果が公表された。

 これは、ソ連が崩壊した91年から本格化した調査である。世界の安全保障環境が変貌する中で、国民の意識がどう変化しているのか、きわめて興味深く、私もいろいろな学習会等で活用する。

 一言で言えば、自衛隊を否定的に見る国民がどんどん減っている。一方で、現状維持か増強を望む国民が増えるというのが、法則的な傾向になっているということだろうか。

 まず、自衛隊の防衛力の今後についての質問がある。「縮小した方がいい」「増強した方がいい」「今の程度でいい」の選択肢で聞いている。

 ソ連が崩壊した91年、「縮小した方がいい」という人は、それでも20%もいたのだが、どんどん下がりつづけて、今回、4.6%にまでなった。これまでは3年前の数字(6.8%)だったので、「3分の1になりました」と言っていたのだが、これからは「4分の1から5分の1になりました」と言わなければならない。

 一方、一貫して多いのは、「今の程度でいい」である。91年も62.1%だったが、今回も59.2%である。ただ、あまり変わらないとはいえ、60%を切ったのは初のことであり、変化の兆しがあるのかもしれない。

 その変化は、「増強した方がいい」の増加にあらわれている。91年に7.7%だったのが、今回29.9%だ。6年前が14.1%だったので、急激な増加である。

 この増加につながったと見られるのが、安全面で国民の関心が中国にシフトしていることがあげられる。3年前の調査では、「日本の平和と安全の面から関心を持っていること」の問いに対して、「朝鮮半島情勢」をあげた人が64.9%でトップだったのが、52.7%へと2位になった。変わって、「中国の軍事力の近代化や海洋における活動」をあげた人が、46.0%から60.5%と1位になった。北朝鮮の脅威程度では自衛隊増強という結論にならないが、相手が中国になると、そうも言ってられないという気持ちが生まれるのだろう。

 同じ調査で、「自衛隊が存在する目的」についての質問がある。そこには基本的に国民の健全さが出ている。

 トップは「災害派遣」で81.9%。3年前に3.11直後で急増し、82.9%になったのだけど、それが維持されている感じ。2番目は「国の安全の確保」で74.3%である。国民の多数は、国の安全と災害派遣のための自衛隊を支持しているということである。

 ただ、前回の質問項目は、「国の安全の確保」(外国からの侵略の防止)として、国の安全とは「侵略の防止」であることが明確にされていたが(78.6%が賛成)、今回、質問項目が「国の安全の確保」(周辺海空域における安全確保、島嶼部に対する攻撃への対応など)として、「侵略の防止」という言葉がなくなっている。一方、サイバー攻撃への対応だとか途上国軍隊の能力構築支援(これは、PKOなどで活躍できるよう自衛隊が支援しているもので、かなり定着した活動)などが選択肢に加わり、自衛隊の活動分野を分散させた印象がある。これは、「個別的自衛権の発動」(=「侵略の防止」)から「切れ目のない防衛」への変貌という、政府の進んでいる方向を具体化する一環かもしれない。

 いずれにせよ、こういう国民的な気分・感情をふまえ、防衛問題、九条問題には対応していくことが求められる。

2015年3月6日

 昨日、芦屋九条の会の講演会(5.16)の運営について、いろいろ議論してきました。いや、びっくりしたのは、ようやく改憲派と討論しようとなったことを喜んでいたのだけれど、芦屋はもう10年前にやっていたんだそうです。

 芦屋九条の会の発足後最初の取り組みは、土井たか子さんと改憲派の中西輝政さんの討論だったそうです。進んでいるんですね。

 ただ、当時と決定的に違うことがあります。土井さんの護憲論は、いうまでもなく「非武装中立」ですけれど、今回、護憲派代表として出る柳澤協二さんは、「専守防衛」の護憲派だということです。

 昔は、「専守防衛」は、違憲の自衛隊を解釈で認めるようにする立場だということで、改憲派に分類されていたわけですが、そこが違ってきているという現実が、今回の講演会に反映しているわけです。感慨深いです。

 ただ、そこで、ハタと思いついたのですが、参加者にとっては、まだかなり違和感があるかもしれません。だって、参加者の少なくない部分は「非武装中立」派でしょうから、護憲派の代表が柳澤さんということでは、「自分の思いと違う」と感じてしまう可能性があります。そこをどうするのか、コーディネーターとして考えなければなりません。

 やはり、最初から、護憲と改憲の構図が、この10年間で変わったということを、参加者によく分かってもらう必要があると思います。「非武装中立」VS「専守防衛」だったのが、「専守防衛+非武装中立」VS「集団的自衛権+国防軍」へと変化したことです。

 そして、「専守防衛」と気持ちよく共闘できるかがカギになる時代になっているのだということを理解してもらうことです。「非武装中立」という自分の思いを変える必要はないけれど、それと同じ立場は、国民の数パーセントもいないこともね。

 さらに、国民投票が現実になる時代にあっては、国民多数と対話をしようと思えば、それは自衛隊を認めている人との対話であることです。しかし、別にその人を自衛隊否定派に変えようと努力する必要はなく、「専守防衛」でやっていけると納得してもらうのでいいということです。だけど、そのためには、少し、自衛隊とか安全保障の知識も必要だということです。

 ま、国民投票の時代、私もどう訴えていくのか、よくよく考えを深めなければなりません。まだ時間もあるし、がんばります。

2015年3月5日

 本日、午前中は、某法律事務所。「さよなら安倍政権」シリーズには、当然のことであるが、いわゆる「残業代ゼロ」法案が入るから。

 2週間ほど前だろうか、朝日新聞を読んでいたら、この法案の解説記事のなかに、アメリカの労働問題を視察に行った弁護士の話が載っていたのだ。その弁護士が、もう10年以上前だろうか、私が講師として行った学習会に新任の弁護士として参加していた方で、フェイスブックでも友だちになっていたし、「あ、彼に頼もう」と思って依頼した次第。つきあいは大事ですよね。

 午後一番で、ある新聞記者とお会いしていた。私の用事は別のことだったのだが、彼は、ヘイトと関連した問題意識で、近くヨーロッパにレイシズムに関する取材に行くそうで、いろいろ話を聞いてきた。

 彼が言っていたのは、何をもってレイシズムというのか、その基準のことである。それが日本における議論で明確でないということ。

 だいぶ前からヨーロッパでは、お互いの宗教の違いを尊重し合って、干渉し合わないようにしようというのも、レイシズムにつながるという考え方が主流だそうだ。尊重し合うと言えばかっこいいように聞こえるけれど、要するに、違う宗教同士は理解し合えないと言っているのと同じだからとか。

 まあ、この議論って、結局、理解し合えないのだから、住む場所も別にしましょうという、あの曾野綾子さんの議論なのだ。そうではなく、ある宗教をやめて別の宗教に宗旨替えするとかいうことも、あたりまえのように捉えられないといけないと言うのだ。

 しかし、これを貫くと、フランスのように、政教分離だからイスラム教徒が独自の服を着用するのもダメということになって、またまた難しい問題になる。こういう問題にちゃんと対応できていないことが、いまのテロ問題の大きな背景にあるので、安倍さんには、現実味のないペルシャ湾の機雷掃海とかじゃなく、こういうことを総理大臣として考えてほしいという結論に。

 それを終えて、新幹線に乗り、いま芦屋に向かっている。どこかで紹介したけれど、5月16日(土)、芦屋九条の会が、護憲派の柳澤協二さん(「自衛隊を活かす会」代表)、改憲派の川上高司さん(拓殖大学教授)の「激論」をやるので、コーディネーターとして、主催者との打合せである。

 さて、どんな議論になるのやら。楽しんでます。

2015年3月4日

 昨日から東京。6月から9月まで毎月2冊ずつ(合計8冊)出すことにした「さよなら安倍政権」シリーズで、著者と会ったりデザイナーと会ったりの仕事。

 思い立ってからわずか2週間で、8冊のうち7冊までは著者も決まった(8冊目も、著者にそのテーマで講演していただくことまでは決まった)。我ながら、仕事のしすぎ。

 でも、この準備をしていて思ったのは、来年の参議院選挙を前にして、論点は大きく変わっていく(プラスされていく)ということだった。そうだったら、来年、このシリーズの第Ⅱ期も必要となってくる。

 たとえば、参議院選挙後、国民投票をやることを安倍さんは目論んでいるわけである。その国民投票にどう臨むかって、すごく大事なことだ。

 報道されているように、最初の国民投票では九条は対象にせず、環境権などにとどめるのだとされている。そういう動きになったとき、たとえば環境権を憲法改正に賛成するか反対するかという大問題がある。

 現状では、環境権が明示されていなくても、憲法上、環境権があることは明白だという議論である。それはその通りだが、でも、明示されていないよりされている方がちゃんとしていることは明らかなので、国民投票で賛成するか反対するかは問われる。

 内容的には、賛成なのだと思う。だけど、賛成して改正が実現した場合、改正の実績が出来てしまって、その後の改正につながるという立場もあるだろう。

 一方、九条の改正につながるから反対というのでは、なんでも反対だということで、九条護憲派への批判も生まれると思う。九条の会などは、あくまで九条が一致点なのだから、それ以外の問題で態度を表明すべきではないという立場もあろう。

 態度が問われるのは国民投票だけではない。その前に参議院選挙があるけれど、そこでも大きな争点になる可能性がある。

 参議院選挙で安倍政権を追い詰めたいとして、どんな候補者に投票するかが問われる場合がある。どんな改正にも反対だという純粋な候補者が一方にいて、環境権には賛成するけれど九条改正には反対だという候補者が他方にいて、後者の場合は、政党政派を超えて推薦できるというような場合、どう判断するのかだ。

 そんな判断に必要な本なんてのも、よくよく準備して考えないとダメだろう。だから、第Ⅱ期は必須ですね。