2015年5月21日

 行ってきます。29日までです。戦後70年に池田香代子さんと訪ねる平和と文学の旅ということで、私が旅行社に頼まれて池田さんを引き込んだ以上、私も行かねばならないので。なんて、義務みたいに書いたけど、楽しみ。

 アウシュビッツは、この年になってはじめてというのは遅すぎるけど、やはり一度はね。ただ、最近、ポーランドとかユダヤ人を被害者という視点だけでなく、加害者として捉えるという論調が生まれていて、全面的に見る必要がありますよね。日本も同じですけど。

 そこでいろいろ見ながら、「シリーズ・さよなら安倍政権」の1冊として書く予定の本、『「安倍談話」と「村山・河野談話」をめぐる40章』の構想を考えてきます。レジメくらいはつくってくるつもり。だから、仕事なんですよね。

 それと、来年の話をするとなんとかと言いますが、来年3月、「内田樹さん、石川康宏さんと訪ねるマルクスの旅」をやることになっています。ちょっと周りに紹介したら、すごい反響なので、公平にみなさまにお知らせしておきます。

 3月23日から31日までの8泊9日。ドイツとイギリスに行きます。ツアーの主催はかもがわ出版で、旅行社に運用を委託するという形態。

 旅程はまだ詳しく決まっていませんが、私が行きたいところはここだと言って、いま検討してもらっている最中です。

 ドイツはまず、マルクスの生家のあるトリーア。いま博物館みたいになっているようですね。ライン川沿いでフランス文化の影響もあり、世界遺産とかも多そう。

 その後、ケルンとボンに行きたい。これは、新ライン新聞の闘争とか、ケルン共産党裁判とか、話題に事欠かない。

 そこからイギリスのマンチェスターに飛ぶ。エンゲルスが経営者をやっていた工場のあったところです。そこの博物館は、19世紀の紡績工場の様子が分かるそうで、『資本論』とか『イギリスにおける労働者階級の状態』とかで描写されているものをリアルに再現しているそうです。

 最後にロンドン。『資本論』が書かれた大英博物館で思索して、マルクスの墓に花を手向けて、という感じです。

 決まれば夏過ぎには公開します。乞うご期待。
 

2015年5月20日

 安倍さんの歴史認識がいろいろ軋轢を生んでいることは、改めていうまでもない。問題は、それを歓迎する空気が国内世論にあることで、その克服が急務となっている。

 この空気って、尖閣や竹島をめぐる領土問題にせよ、慰安婦問題にせよ、日本側が強気に出るべきだ、それが国益に資するのだという感情レベルの話だから、克服するといっても簡単ではない。理論的に議論をしようとしても、「おまえは韓国派、中国派か」という話になってしまうからだ。

 そこを感情レベルでも克服できなければ、世論を変えることはできない。そんな本をどうするかは、いま考え中だけど、それと関連して、安倍路線って国益に反するよねということが、本日、報道されていた。北方領土問題にも跳ね返ってきているというのだ。

 朝日新聞によると、ロシアのラブロフ外相は、政府発行のロシア新聞(電子版)19日付に掲載されたインタビューの中で、北方領土問題に関連して「日本は第2次大戦の結果に疑いを差し挟む唯一の国だ」という。その上で、北方領土は第2次大戦の結果、戦勝国ソ連の領土となったのだから、敗戦国の日本には返還を求める権利はない」とのべたという。

 安倍さんの考え方の根幹にあるのは、あの戦争って、侵略じゃなかったというものだ。自存自衛だったし、アジアを解放したというもので、だからそれを侵略だったとする戦後政治の枠組みを否定するというものだ。

 北方領土って、ロシアにとっては返したくないものだ。戦争で奪った土地を奪うって、ずっと歴史上つづいてきたものだ。第2次大戦は領土は奪わないという建前で戦われたとはいえ、そしてだから沖縄も返還されたとはいえ、実体的にはアメリカの支配が沖縄に及んでいるように、戦争で奪われた土地に主権を回復するって並大抵のことではない。

 そこを戦後の日本は、いろいろな理屈をつけて、ロシアとの交渉の議題にしてきた。連合国は領土を奪わないという建前だったよねとか、北方4島は放棄した千島のなかには入らないよねとか。そしてようやく冷戦終了後、なんとか領土問題は終わっていないよねという程度の合意にたどり着いてきたわけだ。

 ところが、第2次大戦の結果を否定する安倍さんが力を増すにつれて、「ここに突き入れば領土交渉しないでも済むよね」と思う人がロシアに出てきたということだ。安倍さんといっしょに盛り上がっていると、戦後の達成物をすべて失うよ、それでもいいのかということなのだ。

2015年5月19日

 昨日から東京に出張。本日は福島へ。

 昨日は、「シリーズ・さよなら安倍政権」の最初の2冊を印刷所にほうり込みました。明後日、白焼きといって、その印刷直前バージョンができあがり、それを東京で確認します。それでようやく、その翌日からドイツ・アウシュビッツへ旅立てます。今月は、先日このブログも書いた「未来への歴史シリーズ」2冊とあわせ、自分の編集担当する本を4冊も刊行するという、信じられないほど無茶苦茶なスケジュールで仕事をしてきたけど、間に合いそうでよかった。

 昨日の夜は、「自衛隊を活かす会」の「提言」発表記念シンポジウムもありました。昨年6月から今年2月まで、合計5回にわたるシンポジウムを開き、現行憲法の下での自衛隊のあり方を探究してきたわけですが、ようやくそれが「提言」というかたちで実を結びました。関係者のみなさん、本当にありがとうございました。

 この「提言」、すでにホームページで公開しています。英訳版も公開しています。あと、アラビア語訳も作成中ですので、でき次第、アップします。この「提言」で日本と世界を変えたいという本気度、伝わってくるでしょうか。みなさんのご意見を伺いながら、さらに磨き上げていきたいので、是非、ホームページからご意見をお寄せください。このホームページ、昨日から模様替えもしていますので、どうぞ。シンポジウムの様子は、近く、動画で公開します。

 昨日のシンポジウムは、130名以上の方が来られました。議員会館で開催したからでしょうか、政党関係者の参加が多かったのが特徴です。「提言」は、政治で採用してもらうために出したという要素があるので、うれしいことです。残念なことは、昨日も含め6回のシンポジウムをやったわけですが、公明党の関係者だけは一人も参加が得られなかったことです。議員だけでなく秘書も職員もという徹底ぶりは、他の組織政党にはまねできないことですよね。「提言」の路線は、平和イメージの後退の影響からか、選挙での取りこぼしが目出す公明党にとっても貴重な内容を含んでいると確信しています。「会」は、憲法改正の国民投票があるまでは存続し、発信していくことを決めていますので、今後に期待しておきます。

 昨日のシンポの内容は、これまでと同様、NHKや朝日新聞等で取り上げられていますが、今回、紙上(東京版)では確認できませんでしたが、WEB版では産経新聞でも報道されたようです。これまでのシンポは、主要なメディアはすべて取材に来ているのに、読売と産経だけは一度も来られなかったので、これもうれしいことでした。自分の立場と異なるものは取材もしないということになったら、どこかのメディアと同水準で、役割を放棄することですよね。今後ともよろしくお願いします。

 では、「会」の次の取り組みは、6月20日の関西企画と、その夜の伊勢崎賢治ジャズヒケシです。後者は事前の申込みと参加費の振り込みが必須で、先着順ですので、お忘れなく。20日にお会いしましょう。

2015年5月18日

 私のよく知っている人が、大阪の結果を受けて、「都構想を提案したのが橋下さんじゃなければ、賛成に入れていたかもしれない」と言いました。選挙の最終盤、橋下さん自身、「自分のことが嫌いでも、大阪の未来のことを考えて賛成してほしい」と訴えていました。

 これが、今回の住民投票の特徴のひとつを、よく言い当てていると思います。大阪の地方行政のあり方は大事な争点だったでしょうが、それ以上に、橋下さんが好きか嫌いかが、争点の第一番目にきてしまったということです。

 二重行政をどうするのかは、以前も書きましたが、悩み深い問題です。しかし、世の流れは、より住民に近い自治体の権限を拡大することにあります。今回の都構想でいえば、大阪市を5つに分けたとして、分かれた区の権限を強めるという方向です。

 ところが、橋下さんが提案したのは、住民に遠い自治体の権限を拡大するというものでした。自分の力が及びやすいところの権限を拡大し、自分が思うようにやりたいということだったのでしょう。

 そこが、いかにも橋下さんらしかった。橋下さんに改革を期待する人は、橋下さんの力で改革を進めてほしかった。一方、橋下さんを嫌いな人にとっては、ますます橋下色が強くなる大阪というイメージをつくりだし、反対世論を強めることになったのだと思います。

 開票結果を受けた記者会見で、橋下さんは、自分のことを「敵をつくる政治家」だと表現しました。本当に都構想が大事だと思っていたなら、できるだけ味方を増やさなければならないのに、敵をつくってしまったわけです。

 それって、橋下さんの資質だから仕方がないという面もありますが、同時に、政治家として失格だという面もあります。自分の政策目標が大事だと思ったら、自分の性格を押さえてでも、政策を大事にしなければならななったのに、それができない政治家だったというわけです。

 逆にいえば、そこができなかったのは、都構想というものを、本当に真剣には考えていたなったということなのでしょう。実際、都構想が実現したら夢のような大阪ができるなんて、自分でも心から思っていなかったでしょうし。

 いずれにせよ、地方制度のあり方、政治家のあり方等等、いろいろ考えさせる住民投票でした。その点での功績は橋下さんにあったと言えるのかな。

2015年5月14日

 目前ですが、大事な取り組みだと思うので、再度の告知です。週末の土曜日、芦屋九条の会が開く「10周年の集い」のことです。

 もう10年になるんですね。これまで、よくがんばってきました。

 最近、九条の会にかかわる取り組みに行くと、「いつまでがんばらなければならないんでしょうか」と聞かれます。10年前も高齢だった方が、引き続き中心でやっておられるので、そういう気分になるのは理解できます。

 だけど、あと2年半ですよね。九条がテーマとなる2回目の国民投票って、次の自民党総裁選で堂々再選される安倍さんの任期中にやるでしょうから。

 次の参議院選挙で政治を変える共闘ができるとしたら、大事なのはこれから1年。憲法より他のことが大事という風潮のなかで、そういう共闘がつくれず、国民投票にかけられるとなると、最初のがその半年後で、次はその1年後。勝っても負けてもあと2年半。

 これから2年半というのは、護憲派の内部において、護憲派だけに通用する言葉と論理で盛り上がっていてはダメな期間です。改憲派を仲間にするための期間なのですから、改憲派が何を考えていて、どういう論理で話し合っていったら、その気持ちをつかめるのかということを、できるだけ早くつかまなければなりません。

 今回の芦屋九条の会の取り組みは、護憲派の代表として柳澤協二さん(元内閣官房副長官補、自衛隊を活かす会代表)を、改憲派の代表として川上高司さん(拓殖大学教授、元防衛研究所研究員)をお迎えします。一カ月ほど前、朝日新聞の一面全部を使って、政府が本日閣議決定する新安保法制を取り上げ、柳澤さんが反対論、川上さんが賛成論をぶち上げていました。そういうお二人です。

 閣議決定の直後ですから、まず新安保法制をどう見るかで議論は開始するつもりです。そうして、安保法制の中核である集団的自衛権の見方、なぜ九条の改正が必要なのか必要でないのかを、日本と世界をめぐる紛争の現実をふまえて議論するつもりです(私がコーディネーターなのでやりたいようにやらせてもらいます)。

 改憲派を糾弾しても、その人の心は離れるだけだと思います。人の心が変えられるとすると、心のどこかで通じ合うものを感じたときだけだと思います。そんな取り組みになればいいなあ。