2015年12月4日

 いやあ、こんな時代も来るんですねえ。つい1年前まで、想像もできませんでした。税込700円です。

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 さすがに表紙には特集テーマが出てきませんが、目次を見ると、「リベラルと左派の漂流」がテーマのようです。そこに私以外で書いているのは、以下の方々です。

 井上達夫さん(「ドイツは誠実で日本は不誠実」という言説は左派、リベラルが作った神話である)、古屋経衡さん(「反安倍」を軸に左派を読み解く)、山本みずきさん(異論・反論に耳をふさぐSEALDsは異なる価値観を学ぶ努力をすべきだ)、野村旗守さん(高齢化して活動家も減少 中核派・革マル派の哀しき現在)、佐野眞一さん(全学連委員長・唐牛健太郎には「物語」があるがSEALDsには「物語」が見えない)、武田砂鉄さん(なぜ左派は天皇陛下の言葉にすがるようになったのか)。

 私のタイトルは、自分でつけたわけではありませんが、こうなっています。「“憲法九条”の枠内で自衛隊を活かせば日本は世界安定化の道を示せる」。なかなか、いいタイトルじゃないですか。

 いわゆる右派雑誌が、左派とリベラルを主題にした特集をするって、おそらくあまりないことですよね。しかも、ただ批判するというのではなく、堂々と左翼を名乗っている私にも声をかけるなんて。

 そこにあるのは、おそらく、SEALDsのことが2つもとりあげられているように、日本社会の現実に少し変化があって、論じられるだけの対象になってきたということがあると思います。そして同時に、左派が元気でないと右派も力が入らないという現実もあって、左派はもう少しがんばれよなという「激励」もあるんじゃないかなあ。

 その激励に応えて、力を入れて書きました。来月号が出るころには、全文をここで掲載するつもりです。

 『慰安婦問題をこれで終わらせる。』を書いたとき、右派論壇の本や雑誌はかなり読みました。みなさん、あまり読まないでしょうけれど、何か論じようと思うと、世の中を覆い尽くす議論を詳しく知らないでは済まされませんからね。

 それに、「右派の論調はこんなもの、ただ反動的なだけ」と思っていたら、それも違います。意外に役立つものがあるんですよ。

 たとえば、今回の『SAPIO』も、表紙に出ているタイトルが、写真のような中国批判なものですから、それだけで目を背ける人もいると思います。でも、読むべきものがあるんですよ。南シナ海問題も杉山徹収さん(明海大学名誉教授)が論じているんですが、「米中が本格的に戦火を交える可能性はきわめて低い」というのが結論です。右派雑誌だからといって、何が何でも煽るということではないんですよ。

 ということで、これからも、仲間内で通用する論理に満足せず、右派に通じる議論を心がけていきたいと思います。よろしく。

2015年12月3日

 山下さんがお話しされたことの報道は「赤旗」にあったし、質問の一部とやりとりも紹介されていましたが、私の質問へのお答えはなかったですね。それで私が勝手に書きます。

 一つ目は、運動している側は、戦争法のこの部分はよくてこの部分はダメという運動をしてきたわけではないし、現在もそういう立場をとっていないので、やはり全体を廃止するのをめざすということでした。ただし、廃止した上で、その次の段階として、民主党などが領域警備法などを国会に提出して成立をめざすということもあり得るだろうとおっしゃっていました。

 二つ目は、やはり党としては自衛隊違憲という立場も変えないし、将来は廃止することをめざすが、政権としては「自衛隊は合憲」ということになるだろうとのことでした。二つとも当然といえば当然ですね。

 山下さんを困らせるのは本意ではないので、いちばん聞きたかったことは、昨日はオモテに出しませんでした。それを書いておきます。

 何かというと、共産党の大会決定との整合性です。共産党は2000年に開いた第22回大会で、当時は「自衛隊活用論」と呼ばれていた方針を決めました。急迫不正の侵害と大規模災害のときは自衛隊を活用するというものです。

 私としては当然のことだと思っていましたが、実は、この方針は、適用される時期の問題があったのです。どういうことかというと、自衛隊を活用するというのは、共産党が政権をとり、安保条約を廃棄した後の方針だということで、現在も含め、それ以前の段階では同じ方針はとらないとのことでした。

 私には大会決定がそういう立場だとは思えませんでした。政権をとったらするということなら、いまやっても正しいと思いますし。しかし、共産党によると、いま紹介した立場が「有権解釈」であって、それ以外の解釈はあり得ないということだったのです。何回も確かめたことですので、間違いはありません。

 ところが、今回、そこが変化しました。国民連合政府というのは安保条約を維持する政府ですから、その段階で自衛隊を活用するというのは、大会決定の解釈とは異なるわけです。共産党は毎週、常任幹部会という会議でいろいろな問題を決めているのですが、そこの議論内容(常幹メモと呼ばれます)によると、この解釈変更は22大会決定の「発展」だということです。

 180度ほど違うことを「発展」といってしまっては、法的安定性という観点からしてどうなんでしょうかということを、実はいちばん聞きたかったんですよね。まあ、私の解釈と同じになったのですから、内容はすごく支持しているんですけどね。

 出版社としては、共産党の安全保障政策の変遷というか、「発展」を本にするというのも、すごく意味があるかと感じています。すでに私としては、ほぼ書き終わっていますけれど。

2015年12月2日

 東京出張の最後は、「国民連合政府」提案をめぐる共産党の山下書記局長との懇談だった。我が社と同様にマイナーな「季論21」という季刊誌の編集部が主催したもので、時々寄稿している関係で案内が来て、ちょうど出張中だったので参加させていただいた。

 40分ほど山下さんがお話しされ、その後、参加者からの質問とお答え。私は2点を質問した。以下、その質問の概略。

 一つは、戦争法を廃止する国民連合政府という場合、その廃止する戦争法の範囲という問題です。共産党の場合、いうまでもなく先の国会で成立した戦争法の全体を廃止するということだと思います。一方、民主党のなかには、その全体の廃止ではなく、集団的自衛権にかかわる部分の廃止など、一部にとどめるという考え方もあります。

 戦争法には、いま山下さんが説明されたように、集団的自衛権の行使にかかわるものだけではなく、多国籍軍の後方支援にかかわるもの、国連PKOへの参加にかかわるものもあります。その後者2つについていうと、多国籍軍のものはIS空爆への支援という形で、PKOは南スーダンに派遣されている自衛隊への駆けつけ警護任務の付与という形で、非常にリアリティのある問題です。自衛隊が殺し、殺されるという点で見ても、集団的自衛権の行使と変わらない危険性があります。

 一方、憲法違反という角度で見ると、べつの要素も加わります。従来型の護憲派にとってみれば、これらすべてが憲法違反ということになるでしょう。区別できるものではない。しかし、戦争法審議の風向きを変えた衆議院憲法調査会に招かれた憲法学者3人の「戦争法は違憲」発言をとってみると、長谷部さんは、戦争法全体ではなく、集団的自衛権の部分は違憲だという言い方をしています。衆議院の最終盤で維新の党が修正案をつくったとき、小林節さんがこれなら憲法違反ではないといわれたということが、維新の党関係者から伝わりました。

 ということで、戦争法の全体を廃止することを私は望みますが、集団的自衛権の部分に限定するということも、ひとかけらの根拠も道理もないとはいいにくい要素もあるのではないでしょうか。その点、どのように考えられますか。

 もう一つは、その国民連合政府における自衛隊の憲法上の位置づけの問題です。自衛隊は憲法違反なのかどうかということです。

 もちろん、共産党としては、安保条約に対する態度と同様、政党としての考え方は変えないでしょう。憲法違反であって、将来は廃止するということになるでしょう。

 しかし、政権としてはどうなのか。自衛隊は合憲だという政党と違憲だという政党の連合政権だから、自衛隊について憲法上の判断は留保するということになるのか。

 私はそれでは難しいと思います。政権を担えば、総理大臣が自衛隊の最高指揮官です。その最高指揮官が、自分が指揮することになる自衛隊について、憲法違反かどうかは判断できないとなったら、それこそ立憲主義に合致しているか反しているかの判断ができないということになって、政権としては許されないと考えます。 

 この問題について、共産党のお考えを聞かせてください。安保条約に対する党としての態度は変えないけれど、その安保条約にそって政権を運営するというわけですから、内閣としては、そして内閣に参加する共産党の閣僚としては、自衛隊は合憲という以外にないと思いますが、いかがでしょうか。

 山下さんのお答えは、私が勝手に要約できないので、ここでは書かない。明日の「赤旗」をお楽しみに。載るかどうか知りませんが。

2015年12月1日

 私が若い頃、小田実の『何でも見てやろう』が流行っていました。アメリカを貪欲に旅した記録だったと記憶しているけれど、まだ留学熱が高まる前で、すごい人がいるもんだと思っていました。

 その後、海外留学がだいぶ普通になりましたけど、最近、出て行く人が少なくなっているそうですね。意欲の問題なのか、お金の問題なのか、難しいところです。でも、昨日から東京に来ていて(明日まで)、ついでに娘の留学関係で手をつけていて、お金の問題はクリアーする方法があると実感しました。

 まだ大学で学んでいる娘が一人います。来年3月末からデンマークに留学予定。デンマークにはホイスコーレといって、いわゆるフリースクールの走りになった学校があるとか。それが20近くもあって、そのうちの一つは英語で教えていて、いろいろな教科が学べるんですよ。

 それで、若い人だけではなく、向学心に燃えた中年とか、新たな生きがいを求める高齢者とかが世界から集まっているそうな。そんなところで勉強できたら、娘の人生にとっての意味があると思います。

 しかも、安いんです。1カ月平均でいうと、学費と、寮費(3食付き)で14万円。いまどき、日本で地方の国立大学に入ったとしても、月平均の学費が5万で、9万で下宿代と食事代をまかなうなんて至難の業なので、デンマークに行った方が安いです。

 それでもヨーロッパ往復の交通費はバカにならないよね、と思うでしょう。私も本日までそうでした。ところが、旅行社に相談したところ、フィンランド航空には若者割引の制度があって(24歳以下)、往復の航空運賃が6万7千円でした。驚き! 

 そういうことですから、若い人には、是非、海外をお勧めします。娘には以前から、デンマークでいい仕事が見つかったら、日本に戻ってこなくていいと言い渡しています。この日本で、若い女の子が、まともな仕事にありつけるのは、よほどの幸運がないと無理ですもんね。

 もちろん、いつか日本に帰ってきてもいいんです。けれど、その場合も、客観的に日本を見つめる目を身につけてもどってほしいと思います。

 娘が旅立つとと、私の子育ても終わりです。後は、本当に、やりたいことだけをやって人生を過ごします。