2016年4月13日

 本日の朝刊では、日本の海上自衛隊の護衛艦がベトナムのカムラン湾に寄港したこと、合同訓練なども予定されていることが報道されている。新安保法制の成立直前、ベトナムの国家主席が来日し、法制に賛成であることを示唆していたから、予定通りに進んでいるのだろう。

 ところで、この報道、読売、産経、毎日には出ているのに、朝日には一行もない。と思ったら、朝日は昨日の夕刊だった(失礼しました。一行もないのは赤旗でした)。

 何といっても、海自艦船がベトナムに寄港するのは歴史上はじめてのことであり、それだけでも大きなニュースだ。しかも、新安保法制にもとづき中国を牽制する意図が見え見えであり、報道するのが当然のニュースだと思う。

 「中国が軍事でやってくるのに対し、こちらも軍事でやっては悪循環」という立場がある。一面の真理ではあるが、文字通り、一面的だと感じる。

 アセアンは、南シナ海問題をできるだけ平和的な話し合いで解決しようとしているが、同時に、軍事面での備えもおこたりなく進めるという立場である。前者の話し合い解決は支持するが、後者の軍事面での備えは全面否定というのでは、現実味もないし、アセアンからも支持を得られないだろう。

 問題は、軍事面での備えが、外交努力を損なうようなものであってはならないということだ。相手が中国のことだから、軍事面での対応は何をやっても反発してくるだろうけれど、「この程度のことは当然だし、中国の反発はおかしい」と自信を持って言えるし、中国も引っ込まざるを得なくなるような備えであるかどうかだ。そういう軍事的備えを提言していくことが、護憲派には求められるだろう。

 そのための重要な要素だと思えるのは、せっかくのアセアン+3(日本、中国、韓国)の仕組みを活かすことだと感じる。いまこの地域では、軍事面での対立が目立つけれど、一方では、アセアン+3の仕組みは何十年と生き続けている。それなら、軍事面においても、対立を固定化・強化するのではなく、「協力」という要素を促進していくことだ。

 米中の軍事交流は進んでいるが、日中の軍事交流は、歴史問題もあってハードルが高い。だから、東シナ海での軍事交流は、まだ現実味がない。

 だけど、アセアンの枠組みを活用すれば、南シナ海では何らかのことが可能になるのではないだろうか。それが+3が拡大することになれば、低いレベルではあるが日中の軍事交流の萌芽にもなる。よく考えていかないとね。

2016年4月12日

 いよいよ衆参ダブル選挙が現実味を帯びてきた。北海道補選次第という面があるかもしれないが、自民党が負けることになっても、逆に、ダブルをやるモチベーションが加速する可能性もある。だって、北海道補選での野党共闘は、現状の野党関係からすると偶然的な要素が強く、解散総選挙で野党をバラバラにしたほうがいいという判断が働く場合もあるだろうしね。野党の成長にとってはまたとない機会だが、選挙までにどこまで行けるのだろうか。

 選挙が近づいてきたということで、マスコミもいろいろ動き出しているようだ。憲法問題が争点になっていくことを見越して、準備が進んでいる。私のところにも先ほど、憲法9条の将来を熟議するためのシンポジウムに参加しないかという案内が来た。改憲派としては長谷川三千子さんや井上達夫さんの名前があがっていた。私が護憲派の代表ということでは、怒り出す護憲派がいると思われるので、私以外に、ゴチゴチの護憲派も加えて下さいよとお願いしておきました。長谷川三千子さんと議論できる日が来るなんて、夢にも思わなかった。幸せだなあ。なお、改憲派代表にもう一人いるけれど、私との組み合わせが絶妙なので、公表されるのを楽しみしていて下さい。

 ところで、選挙後に改憲が浮上するとすれば、緊急事態条項を入れる問題だというのが常識的な理解だろう。だけど、ダブル選挙でそれを問えるのか、安倍さんには真剣に考えてほしいと思っている。

 だって、緊急事態条項って、天変地異があって、国会も召集できないようなことが想定されるから、行政に特権を与えようというものである。それが現実的なものだから、憲法を改正してまでやろうということだ。

 だけど、そんな緊急事態が現実的だと安倍さんが真剣に思っているなら、ダブル選挙などやってはダメでしょ。解散などしないで、衆議院議員が緊急事態に備えておけるようにしないとね。ダブルをねらうような人に、「緊急事態改憲」は口にできないし、口にしてはならないと思う。

 それとも、「参議院の緊急集会があるから解散しても大丈夫」とでも弁解するのかな。それなら、「参議院の緊急集会があるから改憲しないでも大丈夫」ということになるんだけど。

2016年4月11日

 昨日は東京から福島を日帰り往復。忙しかった。

 福島駅に着く頃、ふと思い出したのが、福島はいまが桜の季節だということ。予定より早めの新幹線に乗ってしまったので、それなら桜を観に行こうと思った。この5年間、福島に通いつめたけれど、一度も訪れることのなかった花見山に行けるじゃん。

 ということで、この写真。すごいですね。人出もすごかったけど。

FullSizeRender

 花見山公園というから、自治体が管理している公園かと思っていたら、民間の農家が所有しているんですね。ご迷惑をおかけしないようにしなくちゃ。

 3.11から2年少し経った頃、『あの日からもずっと、福島・渡利で子育てしています』という本を刊行しました。この本の帯に、2012年2月、当時3歳でさくら保育園に通っていた娘さんが語った言葉があります。

 「ずっーと前に、お山を散歩したよ。お友だちと一緒に葉っぱもひろったんだ。今、お山は行けないんだよ」

 この山って、保育園の裏山のことです。そうやって山を登ることがなくなったためか、植樹のために花見山にやってきたとき、その娘さんがなかなか山道を歩けなかったことが本に書かれています。娘さん、だいぶ大きくなったと思うけど、どうしてるかな。

 昼間は岩瀬書店主催で白井聡さんの講演会。そして午後5時から、甲状腺問題で執筆をお願いしているお医者さんとの相談。

 そのお医者さん、ずっと広島で被爆者医療をやってきて、最後は大学を卒業した福島でゆっくりと過ごそうとしたんですね。そしたら3.11があって、ゆっくりどころの話ではなくなりました。だけど、そういう経験は、福島だからこそ求められたわけです。

 広島の被爆者に関わっては、広島にいた当時も、そしていまもなお、裁判闘争の中心にいます。そして現在、福島の被爆者の裁判にも関わっておられます。

 そういう経験があるから、広島と福島の両方を、情熱をもって、同時に医者としての冷静な目で、見ることができると思います。3.11の直後に知り合って、尊敬しています。

 その先生が、昨日、福島の現状について、こう言っておられました。
 「小さな線量、大きな被害」

 福島の放射線量は小さい。広島と比較すれば格段に小さい。線量が小さければ、人体に与える影響もそれに応じたものになる。だけど、被害というのは、人体に与えるものだけでなく、もっと広範囲に捉えないとダメだ。そういう見地に立つと、福島の被害は大きいということです。

 まだ本になるかどうかは分からないけれど、今月末、もう一回お会いして、何時間かまとまってお話を伺うことになりました。がんばらなくちゃ。

2016年4月8日

 本日と明日は東京、明後日は福島、明明後日は東京。やるべき仕事量は半端じゃない。

 本日と明明後日の仕事の中心は、憲法記念日までに書店に並べる3冊の本の仕上げ。『日本憲法史──八百年の伝統と日本国憲法』(小路田泰直著)、『教えて中馬さん! 幸せのための憲法レッスン』(金井奈津子著)、『日中関係の未来を共創する──両国元外交官・学生の提言』(川村範行編)である。

 本日の夜は、6時半からと8時半からと、連チャンで飲み会。どちらも有名新聞社のジャーナリストで(一人は役員待遇を降りたところで弊社の著者でもある、一人はペーペー)、まあ実態はただの交流だが、情報交換という名目をたてるかな。

 明日は、もろもろの雑務をこなしながら、午後は工藤晃さんの講演会に行く。聽濤弘さんの『マルクスならいまの世界をどう論じるか』を売りに行くのが当初の目的だったけれど、「遺言」と銘打って重要な講演をされるらしい。聽濤さんと同様、このままでは工藤さんの「遺言」も日の目を見ないということになりかねないので、しっかりと聞いて来なければならないと思っている。午後1時から、場所は秋葉原駅近くの「ダイビル」12階。

 明日の夜も飲み会。これは弊社の将来にもかかわるので真剣に。

 明後日の福島は、『福島が日本を超える日』の出版を記念して、地元の岩瀬書店が著者の一人である白井聡さんをお呼びし、講演会がある。私は付き添いというか、司会というか。

 それが終わったら、福島駅でお医者さんにお会いして、甲状腺がんについて本のご相談。この方以外には書けないと思うので。それも飲むことになるだろうけど、翌日の朝、東京で仕事があるので、最終の新幹線で東京へ。

 その東京で、3冊の本の最後の仕上げを確認するのだが、それ以外、これまた弊社の将来にかかわる人とお会いしなければ。帰路につけるのは、やはり夜だろうか。

 こんなに仕事して大丈夫かなあ。

 ところで、日本中国友好協会といえば、文化大革命の際、それを支持するかどうかをめぐって分裂し、文革を強く批判した日本共産党の影響下にあったほうの協会は、長く中国との関係がなかった。日中両党の関係が回復したあと、この協会も中国との関係をもつようになったが、かつてはあれほど中国を批判したのに、最近はおとなしい印象があった。

 ところが、その機関紙の最近号は、昨日このブログで書いた習近平の言論抑圧問題を書いている(「中国レーダー」)。習近平が新聞にたいして「党の主張を反映し、党中央の権威を守り、党の団結を擁護する」のを求めていること、それが新聞だけでなく「出版、情報産業など世論形成に影響する全般にわたし、ソシアル・メディアにも及んで」いること、人民解放軍の機関紙が「軍に対する党の指導は絶対命令であり、思想の上でも、政治の上でも、行動の上でも、党中央と高度に一致しなければならない」と強調していること等々。

 その背景を、光明日報が、「党の指導の弱体化、党建設の欠陥、厳格な党運営の欠如」という見出しで書いているらしい。「中国共産党の指導が中国的社会主義制度の最大の優位点だが、党指導が弱体化した現状が普遍的にある」そうだ。

 つまり、中国のいろいろな団体、人々が党中央の影響から離れつつある。そういう状況だから、習近平指導部が締め付けを強化しているということだ。

 「中国レーダー」の筆者は、「自由かっ達な言論はここ数年、影を潜めています。高い経済成長の終わりとともに、中国は急速に変わりつつあるようです」と最後に書いている。

 中国批判を抑制していたメディアも、そう言わざるのが得ないのが、中国の現状だということだ。中国はどうなっていくのだろうか。

2016年4月7日

 昨日、中日(東京)新聞で中国特派員経験が長く、現在は大学で先生をしておられる方と、長時間話し合っていた。もちろん主題は中国問題。

 どんな中国本をだすべきかは難しい。書店に並んでいるのは、いわゆるバッシングばかりで、それが売れ筋である。それらは問題点満載であるが、それを批判するような本を出すと、「オマエは中国の味方か」みたいに受け取られ、読者から受け入れられることはない。実際、中国の主張、行動は「味方」してはならないものなので、中国バッシングを批判することを主題とする本(雑誌論文もだが)というのは、売れないというだけでなく、かなり間違ったアプローチになると思う。

 昨日の研究者も、習近平政権下の言論弾圧にふれておられた。3年前は新聞に登場して中国の抱える問題を深く分析してくれた方が、最近再び接近しようとしたら、「もう私には近づかないでくれ」と拒否してきたとか。中国の言論弾圧問題は、ニュースではいろいろ報じられているけれども、急に身近に感じることとなった。

 こんな状況下で、「中国脅威論は間違っている」とだけ強調することは、それこそ「間違っている」だろう。安倍政権の軍事優先路線を批判する勢力が、「中国脅威論は間違っている」と言ってしまえば、中国の問題点に目をふさぐ勢力とみなされ、安倍政権への批判も説得力を失うだろう。

 そこを乗り越える名案はない。昨日、案として浮上したのは、米中の軍事関係を分析した本は必要だよねということだ。

 南シナ海で米軍が「航行の自由」作戦を展開し、中国も対抗して艦船を派遣し、緊張状態がつくられた。これって、お互い、自国の国民を納得させるために必要なことだったと思う。

 同時に、米中の両軍が事を構えることはなかったし、お互い、それを意識しながら行動しているように見えた。おそらくウラでは何らかの了解があったのだろう。米軍の軍事演習に中国軍が招かれるような関係もあるから、そういう微妙な状態も機能していると思われる。

 そういう軍事関係の実態、意味が分かるような本を出したい。「軍事には軍事で対抗してはならない」という本ではなく、「どういう軍事関係をつくりあげるべきか」という本。問題は筆者が見つかるかなんだけどね。