2017年6月9日

 昨日、出張から帰ってきたばかりだけど、明日と明後日も出かけるので、忙しい。いくつかだけ。

 最近、角川春樹事務所から、『最果ての街』というドキュメンタリーが出版されたそうだ。著者は西村健さん。

 出版社のサイトでは「推理・ミステリー・サスペンス」に分類されている。東京は「山谷」のホームレス殺人事件をめぐる社会はミステリーらしい。そこに唯一実名で登場するのが三浦広志さんだ。

 このブログの読者なら覚えておられる方もいるだろうけれど、弊社の『福島のおコメは安全ですが、食べてくれなくて結構です』の主人公である。福島第一原発から20キロ圏の南相馬市小高区でコメを作っていたが、いまは新地町で再開している。

 以前から、西村さんの本に取り上げられると聞いていたけど、てっきり福島関連のものになると思っていた。山谷の殺人事件に三浦さんがどう関わるんだろう。早く買わなくちゃ。

 明日はまず、泥憲和さんの奥様とご長男にお会いするため、お昼に姫路へ。いま進めている「泥プロジェクト」についてご説明し、ご了解をいただかなければならない。関連して、いろいろお願いすることも出てきた。

 その後、新幹線で名古屋に移動する。岐阜大学で哲学を教えている教授と語り、飲む。40年ぶりかな。飲むのは初めて。

 同じ一橋大学で哲学のゼミに入り、私は学生運動に没頭して出席しないまま、哲学からドロップアウトした。ヘーゲル『大論理学』を原書で読むというのは、さすがに私のレベルでは学生運動と両立しなかった。

 しかし彼は、勉強する活動家の代表格のようなもので、いまや学者として名を馳せている。障害者の人権問題なんかでも有名。先日、京都に講演で来たとき会いに行こうと思ったのだけれど、同じ時間帯に私も講演しなければならず、知人に私の『対米従属の謎』と名刺を委託していたら、帰りの新幹線で本を読んだと言ってメールが来て、久しぶりに会おうということになったわけ。

 それでなぜ名古屋で明日なのかというと、明後日の11日(日)、三重の津で講演しなければならないから。交通費が浮くもんね。

 講演テーマは、「対米従属の謎──日本の自立と安全保障のために」。午後1時30分から、場所は、津駅とつながっているアスト津というビルの3階みえ県民交流センターの交流スペースAというところです。三重県のみなさん、よろしければどうぞ。

 先週は横須賀でも講演したし、出張続きだし、仕事もいっぱいだし、近く、長期休暇をとる予定です。

2017年6月8日

 「自衛隊を活かす会」の沖縄企画(9月30日午後1時半〜、沖縄青年会館)のテーマ、これに決めました。いろいろ悩みましたけど。

 ごくごく単純化することになりますが、国民の目にはこう映っていると思うんです。沖縄は基地を拒否していて(自衛隊のことも拒否しているし)、日本の安全保障のことは考えていない。一方、政府は沖縄に基地を押しつけているが、日本の安全保障のことは考えている。

 こうなっているとすると、本土が沖縄に向ける視線の冷たさの意味が、なんとなく分かります。基地を押しつけるのは不本意だけれど、安全保障のほうが大事だろ、がまんしてくれよ、っていう感じでしょうか。

 この構図をひっくり返したい、そのための端緒にしたい、それが今回の沖縄企画です。どうなるでしょうか。

 率直に言って、「自衛隊を活かす会」の名前で企画をするというだけで、いろんな抵抗感があることが伝わってきます。来るメンバーのことは歓迎するけれど、その会の名前は隠してくれという感じ。

 沖縄戦の経験があるから日本軍(自衛隊)に対する特有の感情があります。米軍基地に対する感情のきびしさは言うまでもありません。

 その両方に反対するということで、歴史的にずっとやってきたわけです。安全保障のことを考えないって言ったって、安全が脅かされていたのは沖縄県民なんだから、当然でしょう。

 でも、それでやってきて選挙では勝てず、日米安保維持派である翁長さんを押し立ててようやく勝利したということは、何を意味しているでしょうか。県民の多数は、やはり日本の安全保障のことを追及しなければならないと、心の奥底では考えているのではないでしょうか。

 普天間基地の辺野古移設は拒否する。だけど日本の安全のことは沖縄県民が誰よりもよく考えている。本土の比じゃない。そういう構図をつくることが、本土への問いかけを鋭いものにしていかないでしょうか。

 よく考えてみれば、あれだけの戦争を経験し、その後も戦争する米軍とともに生きてきた沖縄が模索する安全保障こそが、本物になるような気がします。一回のシンポジウムで大きなものを達成するのは無理でしょうけれど、そのきっかけになればうれしいです。

 今月末は沖縄に行って、いろんな方にご相談です。全貌を発表するのは、その後になります。ご期待下さい。

2017年6月7日

 「通」の方はご存じだと思うのですが、核兵器禁止条約を作成するための国連会合に関連し、話題になった写真がありました。日本政府は当初、この会議に参加するかどうか曖昧にしていたのですが、アメリカから公然と反対されて、結局、条約作成に反対することとし、会議にも参加しないことになりました。ところが、会議の冒頭の各国政府演説の時間帯だけのこのこと出てきて、「条約の構想に反対だから会議に参加しない」と表明し、その上で退席したのです。

 それで、一応、日本政府代表のための席は残されていて、そこに誰かが折り鶴を置いたんです。「#wish you were here(あなたがここにいてほしい)」と書かれた折り鶴です。それが話題になったんですよ。

写真2

 これって、私にはまったくピンと来ませんでしたが、ピンク・フロイドの有名なアルバムのタイトルらしいですね。日本政府への痛烈な皮肉なんですが、同時に、心からの願いであるようにも思えます。

 で、この写真を夏に出版する「国連核兵器禁止条約の意義と課題」の本にも使いたくて、いろいろ探していたんです。そうしたら、この会議に参加した共産党の志位さんが撮影したものだとわかりました。びっくり。

 それで、使用許可を得て、「撮影提供:志位和夫」で使わせてもらうことになりました。これだけ話題になっているんですから、もっとご自分の売り込みに使えばいいと思うんですけど、謙虚な人柄があらわれていますね。

 この核兵器禁止条約では「威嚇」が禁止されていないことを紹介しました。問題ではあるんですが、それをうまく使うやり方もありますよね。

 例えば、民進党にこの条約に賛成するよう働きかけて、この条約の批准を野党の共通公約にすればいいんではないでしょうか。「核の傘」「核抑止力」容認のままでも、この条約に賛成できる余地が残っているわけですから。

 一方の自民党、公明党は条約に反対なわけで、選挙では大きな争点にすることが可能なように思います。別に「威嚇」を禁止対象にしていないというだけで、威嚇を認めているというわけでもないですから、そこは容認できるんではないでしょうか。

 野党には是非、前向きに検討していただきたいと考えます。よろしくお願いします。

2017年6月6日

 と言っても、ご存じでない方が多いかもしれない。弊社から2009年に刊行され、大ヒットした『理論劇画 マルクス資本論』の著者である。先日、亡くなられたとの連絡が、奥様から寄せられた。

 もともと門井氏は、大陸書房から「劇画カルチャー」版として『資本論』を出しておられた。それを紙屋高雪氏が再構成し、解説も加えて刊行したのが、理論劇画 マルクス資本論』である。

 大陸書房版は、マンガで『資本論』の世界を描く可能性を現実のものとした点で、不朽の名作であった。とりわけ、当時の労働の過酷さは、マンガならではのリアリティがあった。マルクスやエンゲルスの生涯が描かれていたのも、多少、美しすぎる点はあったものの、訴求力があったと感じる。

 2008年頃、若者の格差、非正規労働が広がるなかで、小林多喜二の『蟹工船』が注目されていて、次に世論の注目はどこに向かうのだろうかと模索していた。それが資本主義の仕組みを解明する理論問題になるのではという予感はあったが、難しい『資本論』の解説では受け入れられないだろうと思って、紙屋さんに相談したところ、門井氏の著作を再構成してみたいとの希望が寄せられたのである。

 まあ、これも簡単ではなかった。すでに退いておられた門井氏にたどり着くまでが、なかなかの難関だった。

 大変だったのは、再構成をした紙屋さんだったと思う。マンガでこそ伝わる『資本論』の可能性を、理論面で追求したのだから。

 当時、『資本論』にかかわるいろいろな著作が出されていた。しかし、この本は、学者の分厚い解説書をふくむもののなかで、もっとも価値論が正確に、わかりやすく描かれているとの評価を受けた。理論を伝えるマンガの可能性を最大限に引き出したのだと思う。

 それを、新しいマンガを描いてもらうのではなく、大陸書房版のものを使って再構成したのだから、紙屋さんの手腕はたいしたものである。門井さんからも、ここまで変えられるものなんですねと、お褒めの言葉をいただいた。再び注目されて、うれしかったのだと思う。

 それもこれも、門井さんのもとのご著作があったおかげである。それがなければ、価値論をこれほどわかりやすく伝える『資本論」は日の目を見なかったことは間違いない。この分野の挑戦は途絶えているが、いつか再開したいと思う。

 門井さん、ありがとうございました。安らかにお眠り下さい。

2017年6月5日

 なんだか忙しいです。もうすぐ核兵器禁止条約を議論するために国連会合が開催されます。条約が採択されれば(7月7日が採択予定日)、そのあと数日で、それに関する本を印刷所に入れなければなりません。もし、採択されなければ刊行そのものを断念せざるを得ませんし、可決されても大幅修正なら、本に間違いが残らないように、丹念なチェックが求められます。綱渡りって、このことですね。写真その他、いまのうちに確保しておかなければ。ということで、東京に出てきております。他にも9月までに刊行する沖縄関連本が3冊同時に進行していたりして、沖縄選出の国会議員の方にお会いしたり、いろいろやることがあり、忙しいです。

 その合間を縫って、「自衛隊を活かす会」の出版記念イベントもあります。7日(水)の夜7時30分から。場所は神楽坂。

 「新・日米安保論」の執筆者でもある柳澤協二、伊勢崎賢治、加藤朗という「会」の3人の呼びかけ人が勢揃い。豪華ですよね。事務局長の私も行きますけど、司会か何かやるのかな。わかりません。

 日本の安全保障で問題なのは、政策を考えて打ち出すのは、政府だけということだと思います(じつはその政策がアメリカ任せで、政府といえども日本側で考えている人がいないところが大問題なんですが)。それ以外の人は、政府が出すものに賛成か反対かは主張することがあっても、自分で対案を出すことをやってきませんでした。

 自衛隊を活かす会は、言い過ぎかもしれませんが、戦後70年経ってようやく、政権とは異なる安全保障政策の選択肢を打ち出すことに挑戦しています。まだまだだとは思いますが、がんばりたいなと思います。どうぞイベントにお越し下さい。

 この本、集英社新書ですが、帯の推薦は想田和弘さんと伊藤祐靖さん。想田さんはおなじみだと思いますが、伊藤さんは元海上自衛官で、「国のために死ねるか」を書いて脚光を浴びた方です。

 集英社のサイトに想田和弘さんの推薦書評が掲載されています。本の核心をきわめて正確に捉えて下さっているので、是非、読んでください。

 では、神楽坂でお会いしましょう。