2017年6月2日

 ヤフーが5月21日から31日までネット投票を募っていたが、19万47人が投票し、加憲案支持が圧勝した。以下のような設問だった。

 「安倍首相は、憲法9条に自衛隊の存在を明記する自民党の憲法改正原案について「年内にまとめて、お示しできればなと思う」と述べました。あなたは、憲法9条の条文を維持した上で自衛隊の存在を明記する案に賛成ですか? 反対ですか?」

 正確には、賛成13万8163票、反対4万6232票で、それぞれ72.7%、24.3%である。わからない/どちらとも言えないも5652票(3%)ある。

 この結果は予想されたことだ。先月、安倍さんが加憲案を表明した直後の読売新聞の調査でも(12日〜14日実施)、「今の条文を変えずに自衛隊の存在を明記する条文を追加」することについて、賛成する人が五三%となり、反対の三五%をかなり上回りった。共同通信の調査でも(20日、21日実施)、「憲法を改正して九条に自衛隊を明記する必要があると思うか」との問いに対して、「必要だ」(56%)が「必要ではない」(34・1%)を大きく上回った。

 その時点から見ると、賛成が増加し、反対は低下している。これは法則的なものかもしれない。ただ漠然と9条を変えるかどうかが問題になってきたこれまでと、9条を残した上での加憲という具体的な姿が見えてきた現在とでは、国民の考え方は大きく変化しているように見える。

 ただ、新聞の調査では、選択肢に「わからない」を加えると、結果が少し違ってる。毎日新聞の調査では(20日、21日実施)、「わからない」(32%)、「反対」(31%)、「賛成」(28%)がほぼ同数という結果である。NHKの調査でも、「どちらとも言えない」が41%と圧倒的で、「賛成」(32%)、「反対」(20%)と続く。ヤフーの投票でも「わからない」があるが3%にとどまっているのは、自覚的に投票するものと、受動的に調査されるというものとの、やり方の違いだろう。

 この点では、「わからない」という層にどう働きかけるのかが、この問題を左右するとは言える。ただ、大事なことは、この「わからない」層はみんな、自衛隊や専守防衛を圧倒的に認めているということだ。認めた上で、護憲か改憲かで迷っている。

 したがって、護憲派の訴えがその気持ちに添っていないと、改憲を選ぶことになる。ところが、その護憲派は、「自衛隊を憲法で明記することには、どんなものであっても反対」という線を譲らないわけだ。たとえ専守防衛の自衛隊と明記するものであっても、個別的自衛権に限ると明記するものであっても、その他いかなるものであっても、絶対反対という主張は変わらない。そして、9条を守り抜いたら、ゆくゆくは自衛隊を解消するという目標も変わらない。

 そのあたりを、自衛隊と専守防衛を支持し、自衛隊の解消など考えたこともない「わからない」層がどう判断するのか。よく考え抜く必要があるよね。

2017年6月1日

 安倍さんの加憲案で改憲論議が加速している。2020年施行ということは、来年中に国会の発議になるのだろう。来年末が衆議院の任期切れで、それまでに発議をしておかないと、総選挙で3分の2を割る危険があるから、間違いなく来年中。そして、再来年が国民投票。ホントに本格的な議論を加速していかないといけない。

 その議論をする上で、国民の意識・動向が大きく変化していることを考慮しなければならない。改憲派といえば自衛隊なりを何らかのかたちで憲法に位置づけたい人で、護憲派といえば自衛隊を否定的に見る人だというのが、戦後ずっと続いた対立構図だった。それはもはや崩れているということをずっと指摘したのだが、最近、ここまで変化しているのかとびっくりすることがあった。それは先月、NHKが公表した世論調査の設問と回答を見たことだった。

 この調査は、憲法九条を「改正する必要があると思う」人が二五%と、前回二〇〇二年の調査時より五%減り、逆に「改正する必要はないと思う」が五七%と逆に五%増えて注目されたものだ。私がびっくりしたのは、改正する必要があると思う理由に関する設問のなかに、思わぬものが含まれていたからだ。

 普通、九条改憲に賛成だと言えば、その理由としてあげられるのは「自衛隊を明記すべきだ」など、自衛隊の役割を明確化させることである。実際、この調査でも、「自衛力を持てることを憲法にはっきりと書くべきだから」、「国連の平和維持活動などにより積極的に貢献すべきだから」、「海外で武力行使ができるようにすべきだから」などが設問としてあげられ、それぞれ五七%、二四%、七%の回答者が選んでいる。ところが、今回の設問のなかには、「自衛隊も含めた軍事力を放棄することを明確にすべきだから」というものがあったのだ。そして、それを選んだ人が八%もいたのだ。

 これを選んだ人々は、現行九条が戦力の不保持を決めているのに自衛隊が存在し続けていることに不満を持っているわけである。その上で、自衛隊を保持できないようにするためには、九条を変えて保持できないと明記する以外に方法がないという見地に到達した人たちだということである。

 従来から、自衛隊を絶対に認めたくないという人は存在していたが、それらの人は自分のことを護憲派と自覚していたはずである。ところが、自衛隊を完全に否定する立場からの改憲論が存在することが明らかになったわけだから、私にとっては衝撃的なできごとだった。

 九条と自衛隊の共存が余りにも長きにわたって続いたことが、こうした国民意識を生み出した背景にあることは容易に見て取れる。「改正する必要があると思う」という二五%の人々のうちの八%だから、国民全体では二%に過ぎないが、「海外で武力行使ができるようにすべきだから」の七%よりは多いのだから、無視できる数とは言えない。

 一方、この調査では、「改正する必要はないと思う」の理由の設問に、「非武装」の選択肢はない。非武装の徹底的な平和を求める人は、いまや改憲派なのだ。護憲派は改憲派に対して、「戦争する国をめざすものだ」と批判することが多いが、それは通用しないということだ。しかも、92年の調査から、この項目は入っていたのである。気づかなかった。

 この複雑な世論状況をふまえ、議論を組み立てる必要がある。このテーマで、今後、適宜書いていきます。