2018年1月24日

 沖縄の南城市長選挙で瑞慶覧長敏さん勝利しましたね。おめでとうございます。

 最初にお会いしたのは、一昨年の秋だったでしょうか。大田昌秀さんがまだご存命で、鳩山友起夫さんらも含む共著『沖縄謀叛』のための座談会を沖縄でやったのですが、その日、鳩山さんが理事長をしている「東アジア共同体研究所」の琉球・沖縄センターの会合が開かれるということで、ちょっと顔を出した時にご挨拶しました。そのセンターの事務局長をしておられたんですね。

 本格的にお話ししたのは、昨年の夏でしたでしょうか。9月に沖縄で集中的に実施した企画群(弊社の出版記念講演会とか「自衛隊を活かす会」の沖縄企画とか)のご相談に伺ったときでした。

 それまで、瑞慶覧さんが元衆議院議員(民主党時代の)だったって、知らなかったんですよ。だって、とても腰が低くて、穏やかで、私の知る国会議員のイメージとはかけ離れていました。9月に実際に沖縄へ行った時は、丸一日、同じバスで沖縄を旅しました。

 この間、沖縄の首長選挙は、「オール沖縄」が負け続けてきましたよね。議会選挙では、共産党などの革新陣営は勝利するのに、翁長さんを支える元自民党の保守派議員は落選が続いてきました。地元紙は「保守のオール沖縄離れ」だと指摘してきました。

 そうなんですよ。「オール沖縄」って、基地問題での一致点は「辺野古移設反対」だけで、それは日米安保も自衛隊も肯定する翁長さんと、それらを否定する革新陣営の共闘だから当然なんだけど、現実には高江のこととか那覇の軍港とか、一致点にないことが問題になってくると、翁長さんは反対派に引きずられることが多く、日米安保を肯定する「保守」イメージが薄れているんです。これがこの間の選挙での敗北に関連していたと思います。

 ただ一方で、相次ぐ米軍機の落下に見られるように、基地の現実というものがあるから、安保の肯定と基地で物言う姿を両立させるって、至難の業ではないでしょう。秋の県知事選挙で翁長さんが再選を果たすには、そこの模索と探究が不可欠です。

 南城市長選挙での勝利というのは、そこに希望を抱かせるものだと思います。今度沖縄に行ったら、瑞慶覧さんに詳しくお話を伺わなくちゃね。

2018年1月23日

 というタイトルで、2月半ば、関西で講演することになっている(どこにも情報が出ていないので、なんだか怪しげな催しですが)。その準備のつもりで、来週以降、何回かにわたって連載するつもりだが、まず頭出し的に問題意識だけ書いておく。

 この講演のキモは何か。一言でいえば、基本政策が正反対の政党同士の政権共闘、選挙共闘はどういう条件のものでなら可能か、ということだ。

 「政権共闘には基本政策での一致が不可欠だ」ということは、共産党がずっと言ってきたことだ。憲法九条を守ることで一致して選挙を闘おうと申し入れがあったのに、「基本政策である安保条約での態度が違うからダメだ」と断ってきたのが共産党である。

 ただ、基本政策での一致が不可欠だというのは、共産党に限らず、どの党にとっても基本的な考え方だろう。前原さんが、共産党を含む野党共闘を拒否し、希望の党に合流すると決めた時も、そういうことを言っていた。枝野さんの立憲民主党が共産党との政権協議に消極的なのも、そこに根源があると思われる。

 共産党を擁護して言えば、共産党の政権論は、そう単純なものではない。基本政策で一致しない場合の政権論も存在する。ずっと昔から、「暫定政権」とか「よりまし政権」と言われてきたものだ。安全保障政策で一致しなくてもOKというのは、昔からの共産党の立場だったのである。

 ただしかし、そういう暫定政権構想は、これまでまさに「暫定」的なものであった。「選挙管理内閣」と言って、ただ選挙をするためだけの内閣だったりした。その後、政策で一致する政権構想も提起されたが、それも「ロッキード疑惑究明」とか「消費税廃止」とかの政策課題を実現したら、ただちに解散して総選挙することが想定されていた。

 けれども、いま共産党が求めているのは、新安保法制(戦争法)を廃止したら、ただちに解散して総選挙するというものではないように思える。基本政策での意見の違いがあっても、できるだけ長く政権をともにしようとしているのではないか。

 そういう場合、日米安保や自衛隊をどうするかという問題で意見が違うのに、どうやって政権をともにできるのか。普通に考えれば絶対に無理だろう。

 来週からの連載では、そこを考えてみたい。お楽しみに。

2018年1月22日

 午後5時まで、iRonnaに載るかなと待っていたけど、まだですね。あわてて20分で別の記事を書いたので、アップします。

 内田樹先生、石川康宏先生を著者として刊行している『若者よ、マルクスを読もう』ですが、第1巻、第2巻と出していることはご存じの通り。番外編として一昨年、ドイツ、イギリス旅行をやって『マルクスの心を聴く旅』として出版したのですが、それに味を占めた旅行社から、再びツアーをやりたいと持ちかけられ、マルクス生誕200年のツアーもいいかと準備してきました。しかし、3月のツアーが近づきましたが、お客様の支持が得られず、中止ということになりました。申し込んでおられた方にはお詫びします。

 マルクス生誕200年は良かったのですが、その旅行先としてアメリカを選んだけれど、その魅力を伝えきれなかったし、つくりきれなかったのが敗因ですね。つい一か月前にも、『Abraham Lincoln and Karl Marx in Dialogue』という本が出されるくらい、アメリカではマルクスとの関係を深く捉えようとする動きがあるんですね。この本、南北戦争の頃のリンカーンとマルクスの交流を描くだけでなく、エピローグではパリ・コミューン後のリンカーンとマルクスというタイトルで、なにやら思考をめぐらしています。そんな魅力を伝えられませんでした。

 しかも、サンダースさんと会おうとして、旅行社もいろいろ努力をし、お金もかけたようですが、これがなしのつぶて。アメリカの進歩的な政治家にとって、日本というのは、あまり注目するような対象ではないのでしょうか。ということで、ツアーの魅力を高めることにも成功しませんでした。

 ただ、お二人のツイッターを見ている方は分かるように、喜んでおられるんですね。9日間も拘束される気の重たい日々になることを覚悟していたのに、それがまるまる休暇になるわけですから(仕事を入れなければね)。

 出版社としても、実は良かったんです。申し込んでくれたお客様のためにもと、お二人と行く京都のお寺でマルクスを語る1泊2日の旅を企画し、ご了解を得たんですが、どうせなら旅行的な要素を排して、2日間とも徹底的にマルクスを語ることにしようとなりました。それだけの力を入れれば、『若者よ、マルクスを読もう』の次の巻、年内に出せるねということにもなりました。ホント、良かったです。近く、ご案内しますね。3月27日、28日です。

2018年1月20日

 金曜日にブログ記事をアップしませんでした。実は、いつもの産経新聞デジタルiRonnaに記事を頼まれて、金曜日の朝に送ったので、それが掲載されたらブログに転載しようと思っていたんです。ところがなしのつぶて。他の記事を考えていなかったので、何もアップできなかったんです。なかなか難しいお題が与えられたので、他の人の記事が遅れているのかもしれません。ということで、お休みにもかかわらず、書いておきます。

 このタイトル、なんだと思いますか。先日、ある県の九条の会の定例の会合があって、そこで配布された資料のなかにチラシがありました。そのメインのタイトルなんです。

 チラシを発行しているのは「美しい日本の憲法をつくる国民の会」。そうです、あの日本会議系の改憲団体です。共同代表が櫻井よしこさん、田久保忠衛さん、三好達さん。

 裏側のメインタイトルは、「憲法に自衛隊を明記しよう!」です。安倍さんの加憲案を応援するためのチラシみたいですね。

 先ほどの田久保さんが日本会議の会長で、最近まで安倍さんの加憲案をののしっていました。安倍さんの加憲案を批判するため、「日本会議が主導でつくられた」と言う人がいますが、違っていたんですよ。でも、日本会議もようやく、加憲案でやっていくことで合意したみたいですね。目的を達成するため、「大異を捨てて大同につく」姿勢は見習わなければなりません。

 ところでこのチラシ、右上に判子が押されていて、「2017.12.16 常幹資料 議題2の30」とあります。何の資料なんでしょうね。

 それはともかく、このチラシ、心に響きます。自衛隊が「365日24時間、日本の守りに専念」していること、「国際平和協力活動に、世界各国で貢献」していること、「年間500回の災害救助へ」出動していることなどを列挙し、災害で子どもを助けている自衛官の姿が写真で映っています。これって、国民の実感に合っていて、それをふまえて「憲法に自衛隊を明記しよう!」と言われるわけですから、ほとんどの人は「納得!」という感じじゃないでしょうか。

 このチラシ、どういう意図で配布されたんでしょうね。それを見た人は、何を感じたんでしょうね。もしかして、改憲の根拠として「自衛隊にありがとう」とされているわけだから、護憲のために必要なのは「自衛隊はありがたくない」と宣伝することだとでも意思統一したんでしょうか。

 もしそうだったら、正反対だと思います。このチラシ、本当だったら、護憲派が率先してつくるべきものでした。

 オモテは、このチラシとまったく同じでいいと思います。「ありがとう自衛隊」をタイトルにもってきて、先ほどの文章と写真を持ってくるんです。

 でも、ウラは違っていて、タイトルは「憲法に自衛隊を明記しよう!」ではなく、「愛する自衛官を海外の戦場に送るな。だから加憲に反対しよう!」とするわけです。どうでしょうか。

2018年1月18日

 官邸と自民党の間で議論になっているようだが、これは疑問の余地がない。オリンピックに参加するとすぐに明確にすべきである。

 国会日程が不明で決められないと官邸は言っているようだ。しかし、その本意が、慰安婦問題での韓国政府の対応への不満にあることは、誰が見ても明らかである。それは良くない。

 いや、政治とスポーツは切り離すべきだなどと、書生論を言うつもりはない。慰安婦問題で攻勢に出るために参加すべきだと思うのだ。

 だって、安倍首相は、日韓政府合意が最善のものだと考えているわけである。最善のものということは、いまはどうかは別にして、韓国国民からもやがては受け入れられるという信念があるということだろう。

 それならば、韓国政府に問題があるからといって、コソコソしていてはいけない。自分は韓国国民にとっても恥ずかしいことはしていないという気持ちが伝わるよう、韓国国民の前に堂々と出て行くべきだ。

 オリンピックを観戦し、日本選手団を応援するのは当然である。それに加え、機会があれば、慰安婦問題での見解を韓国国民の前でも、あるいは慰安婦のところに出かけていってでも伝えるべきである。日韓政府合意にあるみずからの以下の言明をくり返し語るべきだ。

 「慰安婦問題は、当時の軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題であり、かかる観点から、日本政府は責任を痛感している。安倍内閣総理大臣は、日本国の内閣総理大臣として改めて、慰安婦として数多の苦痛を経験され、心身にわたり癒しがたい傷を負われた全ての方々に対し、心からおわびと反省の気持ちを表明する。」

 韓国政府は日和ったけれど、日本政府は堂々と説得した、それによって事態が動いた。そう言えるくらいの大きな構えで望むべきである。