2018年8月31日

 この本も入稿を終えました。『200歳のマルクスならどう新しく共産主義を論じるか』(聽濤弘/著)です。

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 ところで、本日の「赤旗」には、『党綱領の未来社会論を読む』(不破哲三/著)の広告が載っていました。偶然ですけど、うれしいですね。

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 だって、不破さんと聽濤さんと言えば、共産党の社会主義論を築き上げてきた両巨頭のようなものです。私など、若い頃、お二人の著作を読みあさりました。

 そのお二人が、まったく同じ時期に、ポスト資本主義の社会について論じるわけです。刺激的ですよね。

 私のお薦めは、両方を買って、対比しながら読むことです。そうすると、久しぶりに頭ががーんとやられるような、そんな気分が味わえると思います。

 不破さんの本は、9月5日発売なんですね。聽濤さんの本は、22日(土)には東京の書店では手に入るという感じかな。私は明日から東京です。

2018年8月30日

 ようやく終わりました。この本のデータを先ほど、東京の印刷所に入稿しました。

マルクス3-カバー帯

 ただし、この本が実際に印刷された状態を確かめるために出力されるもの(白焼きと色校というんですが)が出てくるのを京都で待っていると、宅急便の往復で2日余計にかかって、本が出来上がるのが9月14日になるんですね。そうなると、その本が書店に搬入されるのが10月になってしまって、9月決算に間に合わないんです。

 そこで、今週土曜日に東京に行って、間違いがないか確かめて、来週月曜日に印刷所に戻すという作業が必要になります。交通費はかかりますけど、仕方ないですね。

 ということで、本当は来週月曜日を待って馬車馬生活も終わりということになるんですが、あとは私が倒れても誰かができることなので、大丈夫でしょう。本日は打ち上げといくかな。

 でも、この本、帯を見ていただければ分かりますが、本当にマルクスの見方、読み方が変わるんです。マルクスとリンカーンの交流について、これまで一般的なことは言われていましたが、マルクスがテキサスに移住しようとしていたこととか、ドイツ系移民30万人がリンカーンの北軍兵士になって戦ったとか、そこまで深めた本はこれまでなかったですものね。

 ではでは、近くの立ち飲みへ。

2018年8月29日

 本日も、弊社の9月決算を乗り切るため、ただただ馬車馬のように働いている。頭の中はマルクスだらけ。でも、マルクスで乗り切れるかもしれないって、出版界も捨てたモノではない。ということで、何か考える余裕はないので、『北朝鮮というジレンマ』の第2章「ジレンマの連鎖」の書き出し部分。

 「6・12」、シンガポールのセントーサ島にあるカペラ・ホテル。
 金正恩「二〇一七年七月七日に国連会議で核兵器禁止条約が採択された。わが国は、一六年一〇月の国連総会第一委員会で、この条約交渉を開始するという決議に採択した。アメリカの核兵器が禁止対象になれば、北朝鮮の安全にとっても大事だからだ。ところがアメリカは条約交渉に参加せず、条約にも反対した。これでは北朝鮮の安全は保証されない」
 ドナルド・トランプ「核兵器の抑止力はアメリカの安全にとって不可欠だ。それを損なうような条約にわが国が反対するのは当然だ」
 金「抑止力がアメリカにとって不可欠なら、北朝鮮にとっても不可欠だ。なぜ北朝鮮は貴国と同様、核兵器を保有することが許されないのか」
 トランプ「北朝鮮の核保有は周辺国を脅かしている。韓国も日本も脅威を感じている。アメリカの核兵器はあくまでアメリカと同盟国の防衛のためのものだ」
 金「北朝鮮の核兵器も自衛が目的だ」
 トランプ「バカを言うな。北朝鮮がこのまま核兵器を保有するならば、自衛どころか体制の崩壊につながるぞ。それはオレが保証してやる。核兵器をなくすことだけが北朝鮮が生き残る道だ」
 金「国によって核兵器が持てるかどうか違ってくるなんて、差別ではないか。どの国も平等だというのが国連憲章の理念だったはずだ」
 トランプ「お前、若いなあ。それはタテマエだろ、現実を見ろよ。仮にも一国を背負っているんだから」
 「6・12」の場でトランプと金正恩の間でどんなやりとりがあったのか、詳細は明らかにされていない。いま書いたようなやりとりはなかっただろうが、金正恩とトランプの本音はこんなものではなかったのだろうか。
 核兵器が自衛のために必要だと重いながら廃棄を約束するのもジレンマだが、自衛のために必要だと言い張るアメリカが廃棄せよと説得するのもジレンマである。それ以外に関係する中国、韓国、日本も核兵器禁止条約に反対した。会談の会場を提供したシンガポールだって、阿ASEANのなかで条約に棄権した唯一の国である。
 北朝鮮の「非核化」と「体制保障」という二つの目標それぞれの中に、実はジレンマが存在する。しかも、その二つの関係の中にも、なかなか超えられないジレンマが存在する。そうやってジレンマがも連鎖しているところに、この問題の複雑さがある。

2018年8月28日

 執筆中の『北朝鮮というジレンマ』の本だが、問題が問題だけに、読みやすい本になりにくい。そこで各章の出だしだけでも読みやすくという担当者の指示があり、第一章「ジレンマの発生」の出だしは、こんなものにしてみた。いかがでしょうか?

 九二年九月二八日、国連総会に参加するため北朝鮮からアメリカにやってきた金永南(キム・ヨンナム)外相を歓迎するための昼食会を、ニューヨークのアジア・ソサエティーが主催した。アメリカ国務省にも招待状が届き、北朝鮮担当のケネス・キノネスが出席する。「(相手から)声をかけられるまではこちらから話しかけるな」という指示が付いていた。しかし、「招待を受けたこと自体が、IAEAに協力し韓国との対話を続ける平壌に対する、米国務省の善意の暗黙裏の証であった」。一人の男がキノネスの背後から声をかけてくる。
 「初めまして。あなたが、我々の言葉をしゃべっておられるので、つい失礼しました。自己紹介させてください。私は朝鮮民主主義人民共和国(国連)大使の許鐘(ホ・ジョン)です」。お互いの経歴などを紹介し合ったあと、許はキノネスを金外相のところに連れて行く。
 金「国務省官吏がどうしてワシントンからわざわざやってきたのか」
 キノネス「ええっと、実は、単に何人かの旧友に会いにやってきたのです」
 「ワシントン・ポスト」の敏腕記者が金とキノネスの夕食会を提案し、カーネギー平和財団の代表が「私がセットする」と表明する。キノネスは、第三者の招待であれば国務省の事前の了解を得て参加できるとのマニュアルに沿って、あわてて国務省に電話を入れる。そして夕食会。北朝鮮の筆頭は、金桂寛(キム・ゲガン)核問題担当大使に替わっている。
 金「昨年九月の国連総会で、貴国のブッシュ大統領は、海外配備の戦術核兵器を撤去すると声明したはずだ。しかし、韓国の雑誌『マル』八月号によると、核兵器を搭載した原子力潜水艦が釜山の西にある鎮海海軍基地に定期的に寄港している。ブッシュ大統領の声明は信用できるのか」
 キノネス「なぜアメリカ大統領の公式の声明ではなく、韓国の雑誌の記事を信じるのか」
 金「『マル』は韓国政府に弾圧された過去のある雑誌であり、信頼性がある」
 キノネス「『マル』の記事は過去の史実に沿ったものだ。ブッシュ大統領が国連総会で演説して以降、原子力潜水艦は核兵器を搭載して鎮海海軍基地にはやってきていない」
 金「根拠を述べよ」
 キノネス「私はこの六月、横須賀で鎮海海軍基地からやってきた原子力潜水艦インディアナポリスに乗った。潜水艦の乗員は釜山でロシアの商船員とも夕食をともにした。もう冷戦は終わったのだ。私はアメリカ政府の決まりによって、ある艦船にアメリカの核兵器が搭載されているともいないとも言えないが、少なくとも私は乗員がミサイルの上でぐっすりと眠っているところを見たし、それを写真にも撮ったのだ」
 キノネスは、この時のやりとりの記述を、以下のような文章で閉じている。
 「『敵』との会食はスリルに満ちているが、未知の外交の分野に踏み出すというストレスと興奮で、私はすっかり疲れてしまった。その九月の出会いは、しかしながら、それから五年間にわたる多くの会合の第一歩に過ぎなかったのである」(以上、一九九四年の「米朝枠組み合意」に至る経緯を記述したキノネスの『北朝鮮──米国務省担当官の交渉秘録』からの筆者の要約と引用)

2018年8月24日

 昨日の自民党元幹事長との会談は成功裏に終わりました。乞うご期待です。

 ところで、砂防会館に向かう途中、この本の帯で誰に推薦文を書いてもらうか、真剣に考えました。そこで思いついたのは、公明党の方に書いてもらうことです。

 公明党が安倍さんの加憲案にどういう態度を取るのか、まだ定まっていません。悩んでいることでしょうね。

 でも、最終的に加憲案にどういう態度をとるのであれ、親しい自民党元幹部の本に推薦文を寄せるなら、「付き合い」の範囲内で申し開きできますよね。しかし同時に、自民党と公明党の幹部がそろって護憲の本を書き、推薦文を寄せるということは、すごく意味のある行為に映ることでしょう。加憲を進めると、与党の内部に亀裂が生まれるよ、それでも強行するのかという。 

 ま、どうなるか分かりませんが、やってみる価値はありますね。その公明党の幹部は、私のこともよく知っている人だし。昨日、自民党と自衛隊で加憲に対抗するって書いたけど、公明党も加えちゃいましょう。

 ところで、その自民党元幹事長には、ずっと昔お会いしたことがあるんです。その方が大臣をやっていたとき、共産党の国会議員が地元の陳情で大臣室に行ったのですが、なぜか私も同行したのです(理由は覚えていない)。

 そうしたら、大臣は、共産党の国会議員を褒めちぎるんです。もちろん、政策とかは違うから褒める対象ではないんですが、人柄とかをね。

 議員と同行していた地元の陳情団は、気分がいいですよね。いつも支持して、選挙では投票する議員を、自民党の大臣が褒めるんですから。

 その場の雰囲気がガラッと変わるのが分かりました。みなさん、共産党の支持者なんですけど、大臣のファンになっていくんです。

 左翼、護憲派は、政敵を糾弾することに命をかけているように思います。だけど、そのことによって政敵の支持者は、ますます左翼、護憲派を嫌いになります。

 でも、自民党は、そこが違うんですね。昔の自民党はと限定したほうがいいかもしれませんが。

 政敵を褒める(政策以外を)ことによって、共感者を増やすって、大事だと思います。安倍首相の支持者を崩せないのは、案外、こういうところに原因があるのかもしれません。

 明日は、大事な暑気払い。月曜日はお休みするので、ブログは火曜日からです。