やはり個別的自衛権の豊富化だよね

2014年3月25日

 クリミア問題がどう動くか、まだ分からない。大国が力尽くで領土を奪ったとき、それを奪い返すのは、そう簡単ではない。

 ロシアにクリミアを放棄させるまで効果的に経済制裁を続けるには、制裁することで経済的に打撃を受ける国々を仲間に引きとどめるため、打撃に匹敵する利益を与えなければならないが、アメリカにはそこまでやる気持ちはないだろう。アメリカが他国をそれだけの規模で経済援助すれば、国内経済にはねかえってくるので、アメリカ政府がそう考えても、国民は拒否すると思われる。

 多くの国民は、今回のことを、中国が尖閣を奪ってくることに引き寄せて考えているだろうと思う。私自身は、ロシアにとってのクリミアと、中国にとっての尖閣は全く異なるものだと考えている。中国は尖閣を奪うより、西太平洋全域でアメリカに匹敵する軍事能力の構築をめざしており、尖閣を奪取してそこに釘付けになるような戦略はとらないはずである。しかし、いまのような緊張状態のなかでは、不測の事態は起こりうるので、国民が心配する気持ちは理解する。

 ただ、そういうことを想定しても、今回のクリミアが私たちに教えていることは、同じようなことが日本を舞台にして起きた時、アメリカが集団的自衛権を発動して、援助してくれるわけではないということだ。クリミアのように戦略上の要衝で、多くの人が居住するところでも軍事力を発動しないのだから、尖閣のために軍事行動するわけがない(一部の人は、そうならないよう、さらにアメリカの関心を惹くべきだと主張するだろうが)。

 だから、尖閣のことを考えても、いま日本人が考えるべきは、集団的自衛権の憲法解釈を変えることではない。そうではなくて、個別的自衛権で何をやるのか、それを豊富化させることだと感じる。

 数日前の朝日新聞に、元陸上幕僚長の冨澤さんが登場していた。そこで、「米軍から集団的自衛権行使を求められたこと」も、「日米共同訓練で話題になったことも」なかったとし、安倍さんの真意が軍事的な必要性から出たものでないことを指摘している。そして、安倍さんや安保法制懇の議論(4類型などの)について、「国民にとっても自衛官にとっても理解しづらい」と言っておられることは、本当にそうだと感じる。

 だからやっぱり、「自衛隊を活かす会」の出番だ。先週の朝日新聞文化欄に載った記事を見て、NHKが取材要請をしてきた。国民にも自衛官にも理解できる提言が求められているものね。

 4月以降年内の政治の世界は、安倍さんの路線VS自衛隊を活かす会の路線、という対決軸になっていくのだと思う(希望する?)。どうでしょ。

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