ISがとうとうイスラエルを

2015年6月3日

 過激派組織「イスラム国」(IS)は当初、ISIL(「イラクとレバントのイスラム国」)という呼称を使っていた。その「レバント」って何かということが話題になった時期があった。

 ウィキ的に言うと、「トルコからシリア、エジプト、パレスチナやヨルダン、レバノン」を含む広い地域を指すということになる。しかし、意図的にかどうか、ウィキが欠落させている国がある。「イスラエル」だ。イスラエルのある場所を含む概念なのである。

 中東専門家の酒井啓子さんが、それをすごく心配しておられた。ISがイスラエルを標的に活動しはじめると、中東は大変なことになるからだ。 

 そういう意味で、本日の毎日新聞1面記事は衝撃的だった。いつも目の付け所が鋭い大治朋子記者の手によるもので、見出しは「IS 「イスラエル壊滅」扇動」とある。

 中身は見てもらえばいいのだが、要するに、酒井さんが心配していることが始まっているということだ。まだ萌芽的なものではあるようだけれども。

 ISが主要に活動している国のひとつであるシリアは、イスラエルと陸続きである。シリアで影響力を拡大すれば、イスラエルは目の前の土地になるのである。

 そして、そのイスラエルは、ガザ攻撃をくり返してイスラム教徒を殺戮している。それに対して無力なハマスに愛想を尽かしているという面があるので、ISが魅力的に映る土壌が存在する。

 非常に危機的である。ISがパレスチナで勢力を拡大するのは目に見えていて、その上、シリア側に拠点を確保してイスラエルを攻撃する可能性がある。そうすると、イスラエルによる攻撃も、パレスチナにとどまらないで広がっていく。イスラム世界とイスラエルの軍事対決になると、「ISはテロ集団だから国際社会が対決しなければならない」という構図なんて、簡単に吹き飛んでしまいそうだ。

 世界がこんな状態にあるのに、わが日本では、それをどう捉え、どう打開するのか、何も議論されていない。国会では安全保障が毎日議論されているのに、その体たらくだ。同じ中東のことを議論しながら、話題になるのは、ホルムズ海峡の機雷掃海である。

 こんな国会の委員会なら、早く廃止した方がいいのではないか。切実にそう感じる。

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