安倍さんが遺してくれたもの

2015年9月9日

 シールズの活躍が評価されていて、大変うれしい。注目されると、いろいろいちゃもんをつけてくる人が出てくるのは世の常で、あまり気にしないでがんばってほしいと思う。

 同時に、シールズの活躍の影に回ってしまった感があるけれど、シールズが参加しやすい土壌をつくってくれた組織にも注目してほしい。「戦争をさせない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」である。

 この「総がかり」が、政治的立場を超えて活動しているから、学生をはじめ誰もが参加しやすい状態がつくられている。ただ政治的立場を超えているというだけでなく、対立し、いがみあっていた組織が手を組めたというところに、最大の特徴があると思う。

 この「総がかり」、よく知られているように、3つの団体が参加している。「戦争をさせない1000人委員会」「解釈で9条を壊すな!実行委員会」「戦争する国づくりストップ!憲法を守り・いかす共同センター」だ。

 そのうち、「戦争をさせない1000人委員会」の呼びかけ人である福山真劫さんが、私の愛読する「全国革新懇ニュース(9月号)」の1面インタビューに登場している。福山さんは、大阪市役所に入り、自治労の書記長をした方で、原水禁運動では、ずっと「国民会議」(いわゆる「禁」)にかかわり、現在は、いわゆる連合系の平和団体である平和フォーラム(フォーラム平和・人権・環境)の代表をつとめている。

 福山さん、「総がかり」をつくるために、これまでの行きがかりを乗り越えて話し合ってきた経過にふれつつ、次のように述べておられる。

 「私たち平和フォーラムは、戦後日本の平和と民主主義を守るたたかいの一翼を担ってきたと自負しています。全労連や革新懇の人たちもそうでしょう。しかし、平和運動、原水禁運動、民主主義のたたかいのさまざまな局面で、運動が分裂していった。私たちには私たちの言い分があるし、あなたたちにもあるでしょう。それをいま議論するのではなく、いま大切なのは、分岐と分裂を繰り返してきた日本の社会運動が、「戦争法案廃案」で一緒に協力、共闘することだと決断しました。島ぐるみの沖縄のたたかいも背中を押したといえるでしょう」

 原水禁運動の分裂から数えると、もう50年。半世紀が過ぎている。平和運動って、分裂しているのが当たり前という状態が続いてきた。どっぷりと、その状態につかっているのが現状だ。

 その分裂の責任を「いま議論するのではなく」、協力しあうことになったのが、現在の局面の大事さなのである。だから、普通の人が、この運動に違和感なく参加できる状態がつくられた。少なくともそのベースになった。

 つまり、我々は、分裂が当たり前だった戦後の平和運動を乗り越え、新しい局面を迎えることができるところにいるのかもしれない。安倍さんが遺してくれたものは、大きいなあ。まあ、そこへの自覚と、自覚的な努力なしに、乗り越えることはできないと思うけれど。

 福山さん、いまの状態にとどめるつもりはないらしい。

 「(戦争法案を廃案に追い込む運動)のなかで政党との連携も重要な分野です。民主党、共産党、社民党など野党との連携を強めていますし、いっそう発展させたいです」
「今後の運動の発展方向も問われるでしょう。安倍政権打倒が共通のスローガンになってひろがっていますが、さらにそのあとの政治の展望ということまで視野をひろげた議論も必要になってくるかも知れません。どういう形になるかは別として、いま私たちが取り組んでいるたたかいのなかから、日本の未来を切りひらく主体が生まれてくると希望を持っています」

 そうなんだよね。「主体」を誕生させることが大事なのだ。この福山さんの呼びかけをどう受けとめ、どう行動するのか。問われているものは大きい。

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