拒否反応の少ないアメリカの軍事行動

2015年10月28日

 普通、アメリカが軍事行動を起こすと、支持する世論がある一方で、強い拒否反応が出てくるものである。しかし、今回の南シナ海へのイージス艦派遣は、驚くほどそういう反応が少なかったと思う。ASEAN諸国も賛成か中立で、反対はないようだ。日本国内でも、「朝日」の社説は「目的通りなら支持」だし、「赤旗」にも否定的な論評は掲載されていない。

 それも当然だろうね。あまりにも中国の行動が非常識だから。軍事行動が引き起こす可能性があるリスクよりも、中国が現在の行動をつづけるのを許容してしまうリスクの方が、もっともっと問題だという認識が共有されているのだろう。

 中国の非常識の内容は、ここでは書かない。みんな知っているから。問題は、どうやったら中国が国際法の常識的な水準にたって思考し、行動する国になれるかだ。

 アメリカの今回のようなやり方も、ある局面では必要になるのだろう。だって、中国が力で現状変更を推し進め、話し合ってもゼロ回答をつづけているのである。武力衝突に至らないような細心の配慮は不可欠だが、南シナ海はどの国のどの船であっても自由に航行できるのだということを事実で示し、それを慣習にまでしていくことは大事である。

 こうした行動に自衛隊を参加させるのは、「細心の配慮」をぶちこわしにするので、絶対にやめてほしい。アメリカ単独の行動だから、中国も自制して行動し、警告するなどにとどまっているわけで、日本の自衛隊がやってきたら、世論対策上も警告では済まなくなる。アメリカ政府はそれくらい理解していると思うけど、安倍さんがどうか分からないので、不安がある。
 
 大事なことは、中国の行動の理不尽さを説得する道筋である。もともと南シナ海を含む周辺全域に支配を及ぼしていた国だから、「ここはオレの領地」という意識がぬぐいきれない。ヨーロッパや日本に領地を侵食された経緯があり、戦争することで国家主権を維持したわけだから、主権のためには武力が必要だという国民的な体験もある。その戦争や戦後の内乱を経て、ようやく国際社会の一員になってみたら、自分は形成にかかわっていない「国際法」というものがあって、何千年もの華夷秩序を否定している。そこを誰がどう説得するのか。

 ホントだったら、国際法を踏みにじったことでどんな結果が生まれたかについて、日本が過去の体験を反省的に語ることも、そのための手段の一つなのだと思う。だけど、いまの安倍政権にそんなことは期待できないしなあ。

 やはり、南シナ海における航行の安全を守るため、日米中とASEANが共同で警戒監視をするという方向が大事だと思う。中国だって、この海域の安全を守るために埋め立てしてするという建前があるし、中国にとっての「領海」であっても共同の警戒監視のために他国軍隊が入ってくるなら、中国も認めた「主権」の範囲だということになるし。その実績が積み重なっていけば、自由な航行が慣習になっていくし。

 どうなんだろうね。12月22日(火)の「自衛隊を活かす会」のシンポジウムをご期待下さい。

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