野党共闘と連立政権の狭間・下

2016年4月21日

 安保条約の廃棄と自衛隊解消が日本を変革する上で大事な課題だと位置づけながら、それを国民連合政府では留保し、安保条約と自衛隊を使うとする逆方向の立場を取る場合、二つのやり方があると思う。

 一つは、井上議員のテレビでの発言のように、「国民のみなさんがそれで安全が守れると思わなければ、できないし、やらない」ということだ。つまり、安保廃棄と自衛隊解消という共産党の考え方は変わらないが、それが国民の支持を得ていないことを率直に認めて、国民の考えを基礎にして当面の政策を打ちだすことだ。

 ただ、共産党の考えが変わらないということだと、「共産党は大事なことが分かっているのに、国民はまだ分かっていない」という態度のように見えてしまう。それより何より、安保を廃棄しないと平和が保たれないと考えているのに安保を容認するのはおかしいと批判されたら、整合性が問われることになるだろう。それとも、共産党の考えは変わらないが、政府としては安保や自衛隊の有効性を認めるという、ある種の使い分けをするのだろうか。

 もう一つは、少なくとも当面は、安保条約と自衛隊を維持することが平和にとって意味があると認めてしまうことである。スッキリした立場に立つことだ。

 私自身は、この立場に近い。日本の平和と安全のためには、当面、防衛力と外交力を適切に組み合わせることが必要なかなり長期にわたる段階があると思う。そして、その段階で日本と周辺に長期間にわたる実際の安定期が続くことによってこそ、ようやく防衛力の解消が問題になる段階が訪れるかもしれないという立場である。

 防衛力が当面必要とされるといっても、いまの安倍政権とは中身が違っていて、「自衛隊を活かす会」が打ちだしているような「専守防衛」の防衛力である。日米安保にしても、その日本の立場を鮮明に打ちだし、アメリカに理解させていくような立場である。

 共産党の綱領は、正確に言うと、安保条約の廃棄については、無条件で進める立場である。一方、自衛隊については、少し慎重だ。次のように言っている。

 「自衛隊については、海外派兵立法をやめ、軍縮の措置をとる。安保条約廃棄後のアジア情勢の新しい展開を踏まえつつ、国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる」

 自衛隊の解消は、安保廃棄のように無条件でやるとはしていない。安保廃棄後、アジアに安定が訪れるということを想定し、その展開次第で、ようやく解消に踏み切れるという立場である。

 つまり、安保廃棄以前はもちろん、それ以降も、自衛隊の防衛力が維持される時期があるというのである。防衛力を維持することが、ただ国民の理解が解消にまで至らないという理由からなのか、それとも平和にとって意味があるという理由からなのかは、ここからは見えてこない。

 しかし、後者だということを認めてしまうなら、国民連合政府で自衛隊を維持するということは、整合性のある立場だということになると思う。安保を維持することの整合性までは、綱領からは出てこないけれど。(了)

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