浅田次郎と日米安保

2017年12月13日

 何かと話題の山尾志桜里さんが「自衛隊を活かす会」に協力してくださることになった。そこで本日、仕事のあとに国会事務所を訪ねたのだが、その後、思い立って、東京駅まで歩くことにした。それだけで一万歩。健康にも良かったのだが、あのあたりは歴史的な建造物も多く、最近のことだろうけど日比谷あたりからずっと歩行者天国が続くようになっていて(午前11時から夜の10時まで)、東京駅丸の内側の広場は整備されているし、なんだかいい街になってきたね。

 それはともかく、ちょっと前まで、東京出張の新幹線往復は、ちょうど一仕事するのに都合のよい長さだった。だけど、さすがにこの年になるとダメで、もっぱら小説を読んでいる。

 帰りの新幹線で読んだのは、浅田次郎の『天国までの百マイル』。この冒頭近くに、こんな描写があった。

 「そういえば中西は学生時代からいつも、要領のいい野田の被害者だった。……野田が宿題のノートを提供するかわりに、中西は掃除やゴミ捨ての当番を請け負っていた。もちろんそうした関係を対等の安全保障体制だと思い込んでいるのは中西だけで、野田にしてみればこれほど都合のいい友人はいなかっただろう。カンニングや提出物の類似が発覚したときは、必ず中西が責任を負う仕組みになっていた」

 行きの新幹線で読んだのも、同じ浅田次郎で、『椿山課長の七日間』。これは、死んだ人が冥土で申告して認められると、初七日の間、別の人間に姿を変えて下界に帰れるシステムがあるという話で、死んだ中年男性が家に戻ると、残された男性の妻がすでに不倫している場面が出てきて、長男である小学校2年生にこう言わせている(以上の説明は単純化しています)。すでに別の男がいるのは守ってもらう必要があるからだという言い訳に対する反論である。

 「日米安保条約みたいなこと言わないで。みんなが信じても、ぼくはだまされないからね」
 「外国人に自分の国を守ってもらうっていうのはおかしいよ。たとえどんな理由があっても、どんな歴史があっても、オキナワもヨコタもへんだよ。外国の軍隊の基地がぼくらの国の中にあるなんて、とてもはずかしいことなんだよ。みんながそれでいいって言ったって、ぼくはいやだ。キセイジジツはけっして正義じゃない」
 「あのね、おかあさん。どう考えても、おとうさんが死んだあとで嶋田さんに面倒をかけるっていうのは、ぼくらの甘えだと思う。それに、ぼくらの生活が心配だから毎晩泊まりにくるっていう嶋田さんも、常識に欠けていると思う。これって、日米関係そのものだよ。日本とアメリカは世界中の笑いものだけど、おかあさんと嶋田さんはご近所の笑いものです。ちがいますか」

 小説の主題はどちらも家族の絆。人間関係を考察すると、日米関係も考えることになるところに、元自衛官らしさがあるというか、いつも深く考えておられるのだなあと感心する。

 ところで、これから改憲論議が高まっていくなかで、議論の主題とすべきは日本の安全保障をどう構築するのかということであり、日米関係の議論は欠かせない。ここで国民多数が支持できるものを護憲派が打ち出せないと、改憲派に押され気味になるだろうね。浅田さんを「自衛隊を活かす会」の顧問としてお迎えするって、どうかなあ。

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