東京労働局長の是正勧告報道の違和感

2018年4月12日

 問題が報道されて以降、ずっとスッキリしないでいる。何が問題なのだろうか。朝日新聞では労働局長の「不適切発言」と書いているが、どこがどう不適切なのかが見えないのだ。

 新聞記者といえば、裁量労働制が開始された時、最初に指定された職種の一つである。おそらく長時間過密労働が蔓延していて、そこには違法なこともあるかもしれない。きっと労働省の中でも話題になっていて、口が滑ったというところではないか。もちろん違法行為もないのに是正勧告をしたら問題だろうけれどね。

 「赤旗」は、司法警察権限を有する労基署による恫喝に当たるかのように書いていたが、他のメディアもそれを不適切と言っているのだろうか。それならおかしいと思う。

 よく知られていることかもしれないが、労働基準監督官は確かに司法警察権限を持つ。それが適切に行使されるべきは当然だろう。新聞社が労基法違反をしてもいないのに警察権を行使するとしたら、それは適切ではない。

 しかしなぜ、労働基準監督官がそのような権限を持つかといえば、会社すなわち資本と労働者が対等な関係にないなかで、労働者の利益を守るためには資本に対して強力な権限を行使することが必要な局面があるからだ。あくまで資本が違法行為をすることに対して、「罰金何十万円だ」とか言って、強制的な権限を行使するわけである。

 新聞社に対して是正勧告をしようかと言われて、資本(あるいは新聞社の経営者)が恫喝だと感じるのは当然だろう。しかし、なぜ労働者である新聞記者まで、資本家と同じようなことを感じてしまい、それを記事にするのだろうか。そこがよくわからないのだ。

 「赤旗」だったら、それを言われた記者が、会社である共産党が恫喝されたと感じることもあるだろう。だって、記者と会社(共産党)は、法的に正しいかどうかはともかく、思想的に一体なのだから。

 でも、マスコミの記者まで同じように感じて「不適切」という記事を書いているとしたら、すごく違和感を感じるわけだ。新聞記者というのは、権力を監視をするだけでなく、資本に対しても監視をできなければならない。自分の会社が批判された時、それも報道姿勢ではなく労使関係に関わることが批判された時、労働者ではなく資本の味方をしていたら、うまくないと思うんだけれどね。

 まあ、何を「不適切」と言っているのか、よくわからないので、なんとも言えないのだけれど。それにこの労働局長さん、安倍さんとうまくいかなくて更迭されたわけだし、味方にしないとダメな人だと思うんだ。

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