コロンビアの戦から・下

2018年6月22日

 さて、一日空いてしまった。コロンビアとかなり事情は異なるが、国民を何十万人も虐殺し、抑圧してきた金一族が、今後どうなるのかという問題である。

 まず断っておくが、私はそういう北朝鮮に対してアメリカが「安全の保証」をしたことを問題視しているわけではない。コロンビアでFARCに対してある程度の免責がされたように、非核化を約束している金一族の安全が保証されなければ、その約束の具体化や履行もままなくなる。

 また、北朝鮮の人権問題(拉致問題も含め)を解決するという視点に立っても、そういうやり方しか残っていないように思える。矛盾に満ちたやり方ではあるが、金一族の安全を保証しつつ、北朝鮮がいまのような全体主義国家からゆるやかに開発独裁体制に移行できるよう支援することが、ゆくゆくは人権問題の解決につながっていくと考えている。

 だから、人権問題が解決しない限り、北朝鮮に対してどんな支援もしてはいけないという態度は取らない。逆に、日本の得意分野であるが、北朝鮮のインフラの整備などに直結するような支援を大いにしていくべきである。おカネを北朝鮮に渡して使い道も北朝鮮が決めるというやり方では、そのおカネが軍隊にまわったりする危険性があるので、道路や港湾や発電所その他、日本が乗り込んでいってつくっていくという、戦後に東南アジア開発で試されたやり方を推進していくべきである。

 そうやって日本の資本と日本人が北朝鮮で目立つようになっていけば、北朝鮮の実態をいまのように隠すことは難しくなっていく。いろいろ規制や制限があるとインフラ整備できないぞとおどしたりする駆け引きも必要になるだろう。

 でもこうやって、少しずつ北朝鮮の国民の自由度が増していけば、どこかで国民と金一族の支配体制の間の矛盾が爆発するような局面が訪れる。その時のことをよく考えておかねばならないということだ。

 ハードランディングするような場合でも、それが国民主導で進むなら、非核化の進展に障害はないだろう。しかし、金一族主導で進むなら、「こんなことになるなら元のやり方に戻すぞ」ということになりかねない。だから、金一族の支配体制をどう考えるかということは、北朝鮮の国内問題であるように見えて、すぐれて日本と周辺諸国の問題でもあるのだ。

 その点で日本は、あれだけ日本国民を弾圧し、アジア諸国民を殺戮した戦前の体制をソフトランディングで残すことに成功した。金一族を永遠に残すようなことは無理だし、やってはいけないことだろうが、一台限りの「象徴」ならあり得るかもしれない。流血なしに収めるためにはね。

 ま、そんな程度のことは、北朝鮮に責任をもって関わっている人は、とうに考え尽くしているんだろう。よろしくお願いします。

 来週は、「野党共闘と対極にある「赤旗」」という連載を開始します。乞うご期待。

記事のコメントは現在受け付けておりません。
ご意見・ご感想はこちらからお願いします

コメント