オスプレイが尖閣まで飛ぶからどうなの?

2013年9月19日

 先日、在日米軍の責任者が沖縄の仲井真知事と会談し、オスプレイが尖閣まで飛べることを強調したという記事が出ていました。なんのこっちゃ。

 いや、そりゃあ、それだけの航続距離はあるでしょうよ。分かりきったことです。だけど、オスプレイが尖閣まで行って、何をするんですか?

 領海侵犯する中国艦船を排除したりする装備はない。領空侵犯する中国機に対しても同様。だって、装備と人員を運ぶのが役目だからね。

 それとも、攻撃にさらされている尖閣に、弾薬を運んだり、米軍人を降ろしたりするんでしょうか。それって、軍事的にあり得ないでしょ。尖閣が大規模に包囲されたとして、あんな小さな島には反撃するための部隊は置けないんですよ。そこに部隊が閉じこもっていては、ただただ攻撃にさらされるだけですよ。

 自衛隊関係者にお伺いすると、尖閣が攻撃されるようなことがあったら、いったん引き下がるのが大事だということです。第二次大戦における太平洋上の島の攻防戦で分かるように、島を守るって、難しいんだと。

 で、その後どうするかで、二つに分かれます。一つは上陸作戦の敢行。最近、日米共同演習もやられましたよね。だから上陸作戦を任務とする海兵隊的な機能が必要だといわれています。だけど、これも犠牲が多いので、反対する方も多い。

 多くの方は、部隊を周辺に集結させて、艦砲射撃をして奪い返すのが合理的だとおっしゃいます。その前に、まず侵略の非を世界中に宣伝するわけですね。その段階で撤退するなら、それでいいわけだし。

 理論的にはそういうことも考え、準備をしておくことはありです。ただ、こういう想定って、どうも現実味がない。中国にとって尖閣とは自分の領土だから何とかしようという気持ちはあるでしょう。だけど、じゃあ尖閣を奪うことにより、中国にとって何か利益があるかというと、そうではない。

 いまどき、軍事力で領土を奪うなんて、どんな国にとってもタブーです。世界中を敵に回すことです。

 それだけのことをやっても意味があるなら、やるかもしれない。だけど、そうやってホットスポットにしてしまったら、海底資源開発なんてできません。争いがあったら実益にならない。

 それに、中国の軍事的なねらいにとっても無価値です。中国は、第一列島線から第二列島線へと活動の場をひろげたいわけですよ。そうやって、この海域全体でアメリカと対抗できるようにしたい。そのためには、別に尖閣があろうがなかろうが、関係ありません。尖閣でもめてしまって、そこの防備に力を入れなければならないとなると、太平洋への進出がおろそかになります。

 だから、日本も、そういう中国の軍事戦略の全体を考え、何をどうするか決めないとダメだと思います。尖閣を防衛するって狭い視野でこの問題を考えていると、本質的なところが見えてこなくなるんですよ。

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