ウクライナ問題のむずかしさ

2014年3月13日

 ウクライナといえば、一度も足を踏み入れたことがない国である。ソ連時代、キエフ空港にトランジットで数時間滞在したことがあるだけだ。

 この国に関する知識もほとんどなかった。チェルノブイリがある国という程度か。

 だから、今回の問題を通じて、クリミア半島がウクライナ領だと知ったとき、びっくりした。過去、何度も戦争の舞台となった戦略上の要衝を、ロシアが手放していたなんて、ほんとうにびっくりである。

 そうなんだね、フルシチョフが自分の出身地であるウクライナに与えたんだね。そんなことが権力者にとって自由にできたんだ、ソ連という国は。そのツケが、いま回ってきているというわけである。

 今回の問題は、勢力圏という考えが、いまでもロシアにも西側にも残っていることを浮き彫りにした。ただ、ウクライナ全体を我が物にしようというのではなく、ロシア人が多数を占めるクリミア半島だけでも確保しようという動きになっているのは、勢力圏思想もこぶりになってきたことのあらわれかもしれない。

 議会の多数は分離独立だという。このまま進めば、住民投票の結果、分離独立を支持する世論が多数を占めると予想する声が多い。そうなるかもしれない。そして、今回の行為は許せないにしても、ロシア系住民の多さとかなどを理由にして、最終的には、クリミアがウクライナから協議離婚すべきだという声もある。

 だけど、本当に、クリミアの世論は分離独立なのだろうか。本日の朝日新聞で知ったのだけど、いまのクリミアの首相は、つい2週間前に選ばれた分離独立を唱える政党の党首だが、3議席しかない政党だそうだ。そして、首相を選ぶ議会は、ロシア軍とみられる武装した兵士が監視するなか、定足数に足りない状況で開かれたそうだ。

 つまり、議会の多数だって、実は分離独立を望んでいない可能性が強い。軍事圧力があるなかでの投票だって、少しも正当性を保障しないのである。

 6割を占めるというロシア系住民だって、ソ連崩壊後、西側の「自由」を体験している。ロシアに帰属する気持ちの部分もあるだろうけど、政治制度としてロシアに親密な感覚をもたないだろうと感じる。

 ロシアは、本当に住民投票で勝つ自信があるなら、平時に、軍事手段など使わないで、投票に持ち込めばよかったのだ。そうではなく、今回のような手段でなんとかしようとするのも、自信のなさの裏返しではないだろうか。

 やはり、ウクライナのことはウクライナに任せるべきなのだ。クリミアの問題も、分離独立の是非やあり方も含めて、ウクライナのやり方で解決べきだろう。今回のことを通じて、古い勢力圏思想が完全に消え去ることを望む。
 

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