15事例ですか……

2014年5月28日

 集団的自衛権に関する与党協議が始まりましたね。公明党にはがんばってほしいですし、少なくとも論点が整理され、国民にとって判断材料となるものが出てきたらいいなと思います。

 それにしても、15事例ですよ。とにかく次から次へと事例を持ち出して、ひとつでも公明党が反論しにくいものがあったら、「その部分だけでも集団的自衛権が必要だろう」として説得するため、こんなことになっているんでしょうね。やっぱり、解釈改憲を実現するために、日本の防衛という大事な問題をもてあそんでいるような気がします。

 その15事例ですが、本日、各紙が図にして掲載しています。これって、新聞が読者に分かりやすいようにしたものでなく、もともと与党協議の場に出されたものです。実際に出されたものは、ここに掲載するようにカラーなんですよ。力が入っていますねえ。

15事例

 これはいわゆるグレーゾーンのなかの「邦人救出」の図です。テロ集団が日本人を人質にして施設を占拠していて、他の国は軍隊を送って救出できるのに日本は自衛隊を派遣できないことを強調しているわけです。

 だけど、たとえば96年にペルーの日本大使館が占拠され、600人が人質になったとき、自衛隊を派遣せよという声は起こりませんでした。それどころか日本政府は、人質の命が大事だから、ペルーの政府に対して、武力ではなく平和的に解決してほしいと要請しました。人質の命が大切なら、さあ自衛隊の派遣だなんて、そう言えることではないんです。

 あの時、最後は武力で解決しました。大使館の地下に秘密裏に穴を掘ったりして、治安部隊が急襲したのです。それが成功したのも、長期間の交渉で犯人たちが疲弊したことと、大使館の構造をペルー政府がよく知っていたからです。よく現地の事情も知らず、犯人側と交渉もできない自衛隊が急襲しても、同じ結果にはならなかったでしょう。

 まあ、この事例で政府が強調したいのは、ペルーのような事例ではなく、現地の政府に救出能力がないような場合です。だけど、そのような場合、ますます救出には困難性が増大します。この図では捕らわれている施設が明白ですが、実際にはジャングルのなかの隠れ家だったりしますし、誰と交渉すればいいのかも分かりにくい。相手が犯人だと言って接触してきても、本当は犯人ではなくカネをせしめようとしているだけのグループかもしれない。

 そんななかで、日本人人質の命を大切に思うなら、求められるのは、現地語の習得だったり、相手の真意をつかむなどの交渉能力でしょう。日本にいても、人質をとって立てこもる犯人に対して、警察のなかでも訓練をへたベテランが説得する場面があるでしょう。そんな能力なんです。

 人質がどこにいるかも分からないのに、さあ、自衛隊の出動だってことになるんでしょうか。そんなことを押しつけられ、責任をとらされる自衛隊員がかわいそうだと思いませんか。

 与党には、国民の命を大切にする気があるのかということを問いたい。本当にそう思います。
 

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