「法の支配」を非常識に覆す

2014年6月11日

 ちょっと常識外れだよね。いうまでもなく、集団的自衛権をめぐる与党協議と安倍さんの対応のことである。

 後方支援に関する4条件は、2重の意味で非常識だった。

 ひとつは、後方支援のための部隊を戦地に送るという発想そのもの。いや、戦地にも後方支援部隊は送るわけだが、戦闘部隊ぬきに後方支援部隊だけ送れるわけがないのだから。そんな危ないこと、自衛隊員のいのちを真剣に考えるなら、できないでしょ。それとも、他の国の部隊に防護をお願いし、迷惑をかけるつもりだったのだろうか。

 もうひとつは、なぜ後方支援だけを持ちだしたのかということ。だって、集団的自衛権を認めるということは、もう後方支援にとどまらず、直接の武力行使をやれるようにしようということだ。だから、武力の行使であってできないとされてきた駆けつけ警護もやるし、自分を守るためでなく任務遂行のための武器使用もやれるようにしようと企まれている。そういうことができるなら、後方支援の部隊を武力で守ることも可能になるのに、そういう議論抜きで後方支援だけを持ちだしたために、説得力のない議論になってしまった。まあ、私としては、それの方がいいのだが。

 ということで、4条件が一夜にして頓挫したのは、自然なことであったように思う。まだ常識が働いている?

 いま焦点となっている来週20日の閣議決定という議論は、まったく意味不明。公明党を議論の土俵に乗せるため、グレーゾーンなどの分野だけをずっと議論してきた結果、まだ集団的自衛権が議論になっていない。というか、昨日、米艦船防衛がはじめて議論になったけれど、それは個別的自衛権だという公明党と、集団的自衛権だという自民党と、意見がかみ合わないままだ。それで時間切れが近づいてきたので、議論しないまま解釈改憲の閣議決定だけはやろうなんて、安倍さんの指示は、あまりに常識から外れている。

 いまでも思い出すが、安倍さんが首相になった直後、経団連の米倉さんが異次元の金融緩和という政策に異を唱えた。だけど安倍さんが一喝して、その後、米倉さんは安倍さんいいなりになった。選挙で多数を得た首相って、とてつもなく強大な権力を手にするんだよね。

 だけど、常識から外れてはいけない。安倍さんは「法の支配」という言葉が好きで、中国を批判する材料に使うけれど、集団的自衛権の問題での安倍さんのやり方は、内容面では「法の支配」を覆し、やり方の面では常識を覆すものだといえる。

 こんな常識外れのまま閣議決定されたら、いくら公明党だって飲めないだろうということで、昨日、解散情報が永田町を駆け巡ったらしい。だけどそれでも、いまの野党の現状では、伸びる野党もあるかもしれないが、選挙全体としては安倍さんの大勝になりそうで、まさに悪夢ですね。

記事のコメントは現在受け付けておりません。
ご意見・ご感想はこちらからお願いします

コメント