河野談話の検証結果をめぐって

2014年6月23日

 政府がやってきた河野談話の検証って、談話の見直しにつながると批判する人もいましたが、そうではなかったですね。どこかで書いたことがありますが、やはり、韓国側がこれでOKと言ったのだということの検証だったのですね。

 いや、談話の見直しなんて、絶対できないです。アメリカが許さないですから。日本が韓国との関係をまずくすると、対中戦略がうまくいかないです。それに、それを許すと、東京裁判から何から、アメリカがつくりあげた戦後秩序が悪かったという話しになってきて、許容範囲を完璧に超えますからね。

 いま、安倍さんに残されているのは、ひとつは、河野談話を維持するということだけは外さないでおいて、欲求不満をタラタラと流し続けることでしょう。河野洋平を国会に呼べとかね。

 そして、もうひとつが、韓国が河野談話でOKだと言ったということの宣伝です。だけど、それって、検証してもらわなくても、当時から明らかでした。河野談話の翌日(93.8.5)、韓国外務省が次のようにのべたことが、当時の新聞で報道されています。

 「一方、兪炳宇・外務省アジア局長は、「今後、この問題を韓日間の外交課題として提起しない、というのが現時点での我が国政府の立場だ」と語った」(朝日新聞)
 「韓国外務省当局者は4日、「我が国政府の意見を相当水準に反映したものだ。今後、この問題を両国間の外交問題にしない」と言明した。」(毎日新聞)

 安倍さんのねらいはどこにあると思いますか? そうなんです。いろいろ努力して、韓国とすりあわせの上に河野談話を発表して、「今後、外交課題として提起しない」と約束したのに、韓国がその約束をやぶって、その後もずっと一貫して外交問題として提起しているのはおかしいじゃないかと、安倍さんはいいたいわけです。

 これって、難しい問題だと思います。まあ、左翼の側からすると、その河野談話を否定するようなことを安倍さんたちが言うから、ずっと問題になってきたのだ、という理屈も成り立つでしょう。

 だけど、それだけとも言えません。日本政府は、河野談話を出して、あとは「現内閣は河野談話を継承する」と言い続けるだけでもよかったわけですが、それにとどまらず、アジア女性基金をつくって、慰安婦に対して総理の償いの手紙とお金を渡しました。これって、自民党政治の枠内でできる最大限のことだったと思います。

 しかし、韓国政府は、それを批判し、慰安婦問題は解決していないとして、日本に対して解決を求めてきました。日本側がそれなりに努力しているのに、韓国の側が「外交問題にしない」という約束を破ってきたという側面があるのです。外交面からすれば、韓国のやり方は常識を外れたものだと言えます。

 そして、その構図が国民の目にも見えるので、90年代半ばまでは慰安婦問題で心を悩ませた人のなかに、「これだけ努力しているのになぜ批判されねばならないのだ」「日本はいつまで謝罪しなければならないのだ」という気持ちを醸成したのです。その結果、安倍さんを総理大臣にするような世論構造が出来上がったのだと思います。

 ここまで複雑化した問題をどうやったら打開できるのか。真剣に考えねばなりません。

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