無責任で不愉快な安保法制の議論

2015年2月18日

 本日の読売新聞1面は、ゴールデンウィーク明けに出てくる安保法制について、3つの法律からなることを報道しています。現行の周辺事態法とPKO協力法の改正でふたつ、それにくわえていわゆる恒久法という新法。その恒久法によって、多国籍軍の後方支援や人道復興支援などについて、任務を拡大するわけです。

 これを見て、どう思いますか? 私はびっくりしました。無責任もここに極まれり、という印象です。

 何かというと、集団的自衛権ってどうなったの、ということです。他国への武力攻撃が日本の存立を脅かすので集団的自衛権を発動するのだという問題です。

 周辺事態法は、周辺において日本の平和と安全に重大な影響を及ぼす事態で活動する米軍を後方支援するという問題です。改正するといっても、米軍以外も後方支援の対象に加えるということで、武力行使するというわけではありません。

 同じくPKO法も、駆けつけ警護とかできるようにしたり、任務遂行のための武器使用ができるようにしたりします。だけどこれは、国連の活動であって、集団的自衛権とは関係ありません。

 では、その新恒久法で集団的自衛権を発動できるようにするんでしょうか。いま議論になっているのでは、ペルシャ湾に敷設された機雷を破壊するというようなものですよね。

 ところが、この読売の報道を見る限り、そんな法律にはなっていません。読売報道によると、ふたつの柱だということです。

 ひとつは、周辺事態にはあたらないが、国際貢献として行う海外での後方支援です。アフガンの対テロ戦争でやったインド洋上の給油などを想定して、どんなものでもやれるようにするわけです。

 もうひとつは、PKOとは異なる有志連合などによる人道復興支援です。これは、イラクのサマワで行った復興支援などを想定しているそうです。

 いや、これらはいずれも大きな問題ですよ。それぞれ反対していかねばならないと思います。

 でも、この報道が本当なら、「存立事態」が入り込む余地がないんです。日本が武力行使の前面に出るという事態がない。

 もちろん、この報道は議論過程のものですから、これから変わっていくのだとは思います。だけど、憲法解釈を閣議で変えてまでやろうとした問題が、法案の準備過程でまともな検討の対象になっていないなんて、あの閣議決定は何だったの?と言いたくなりませんか。

 おそらくですが、アメリカとのガイドライン改定の協議が進むにつれて、アメリカが実際に日本に対して望む事項が具体化してきた。そのなかには、個別にはいろいろあるでしょうが、「存立事態」などという概念を創出して、日本に武力行使を求めるというような事項は、真剣なものとしては存在しないんだろうと思います。

 実際に求められもしないのに、安倍さんが、何十年も続いた憲法解釈を変えた首相として名を残したいがため、閣議決定を強行したんでしょう。それでも、決定したことですから、何からのかたちで法案には盛り込んでくるでしょうけれどね。こういう無責任さは不愉快です。

記事のコメントは現在受け付けておりません。
ご意見・ご感想はこちらからお願いします

コメント