『日本憲法史』草稿を読む

2016年1月28日

 出版社で編集の仕事をしていて「役得」だなと思えるのは、誰もがまだ目にしたことのない考えを、著者の草稿段階で読めることだ。他の仕事では味わえないことだろう。

 本日は『日本憲法史』の草稿を読んだ。著者は著名な歴史学者で某国立大学教授。

 いやあ、刺激的だった。頭が揺さぶられるって、こういうことを言うのだろう。

 何が刺激的って、まずタイトル。『日本憲法史』と言われて、いったいいつから歴史がはじまるということになるだろうか。

 1冊だけ同じタイトルの本が出ているけれど、憲法学者の大石真さんが書いている。これは明治憲法が出発点だ。憲法と明確にいえるものはこれだから、まあ常識的かもしれない。だけど、私が読んだ草稿はそれとは異なる。

 というと、聖徳太子の「17条憲法」を思い浮かべる方がいるかもしれない。それとも異なる。そもそも「17条憲法」って、名前だけ憲法で、憲法としての内実がないから。

 じゃあ、何を基準に憲法の歴史がはじまるといえるのか。それって、いま流行の議論だが、「立憲主義」の思想というか、政府権力を縛る法令のようなものがあらわれたときということ以外にはない。

 そういう観点で日本の歴史を見たとき、立憲主義がいつ生まれ、日本ではどのように発展してきたのかというのが、この本の主題である。かつて存在しないアプローチだ。

 中身は、本が出るまで、このブログでは書かない。著者の専売特許だからね。サブタイトルだけ紹介するので、想像してほしい。「800年の伝統と日本国憲法」。

 立憲主義って、従来型の解釈では、ヨーロッパに生まれ、日本に輸入されたということになっている。安倍さんは、そういうものに縛られるのがイヤで、それが立憲主義を踏みにじる自民党の改憲案になっている。

 立憲主義には日本的な伝統があるということは、その安倍さんや自民党改憲案への有力な批判になり得ると感じる。「日本の伝統を破壊する安倍政権は退場しろ」って感じかな。お楽しみに。

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