日本会議が天皇の生前退位容認へ

2016年12月2日

 本日の朝日新聞。「日本会議内に天皇退位容認論 神道政治連盟と主張に違い」という見出しで記事が出ていた(二階堂友紀記者)。

 根拠は2つほど。政府の有識者会議に参加した日本会議政策委員の百地章氏が退位に賛成していること、日本会議国会議員懇談会が退位賛成派の大石真京大教授などを勉強会に招いていることなどである。

 この問題は、日本会議という組織の性格を判断する上で、大事な問題である。当初、「週刊文春」が「日本会議は退位反対」という特集記事を掲載したのに対して、日本会議は「まだ見解を発表していない」と反発していたのだ(8月4日)。実際、いまに至るも、統一見解は出されていない。

 私も自分の『「日本会議」史観の乗り越え方』でその問題を取り上げている。日本会議のなかに明治憲法下でできた現行制度を維持したいという強烈な人たちがいる一方で、それでは国民の反発を食うだけであって、世論を敵にまわして活動すべきでないという人たちもいて、内部に葛藤があるわけだ。

 実際、朝日は有識者会議での百地氏の発言を根拠にしているが、その聞き取りには日本会議の有力メンバーである大原康男氏も参加し(関係の深い櫻井よしこ氏も)、生前退位反対論をぶち上げている。日本会議は二分されているのだ。

 それでも、朝日の報道によると、「日本会議関係者は「日本会議の方向性は百地さんに近い」とみる」としている。その日本会議関係者とはどんな人なのだろうか。

 日本会議には有力な事務局メンバーが少なくない。学生運動が左翼全盛の頃、右翼の旗を掲げて学生の支持を獲得し、自治会の執行部を運営していたような人が、いま日本会議の事務局にいる。

 日本会議を実際に動かしているのは、おそらくその事務局であって、世論を離れて暴走する幹部をおさえにかかっているのだと思われる。地方議会への請願運動がシステマティックにやられていることなども、実際の運動の経験が生み出したものだ。

 そういうところに日本会議が伸長する根拠があることを正確に見なければならない。これを謀略団体だとかカルト集団だとおどろおどろしく描くのは、実態を見誤ることであって、かえってその伸長を許すことになるだろう。

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