安倍改憲案をめぐる出版社の悩み

2017年5月16日

 昨日、ある編集者と話し込んだ。もともとロシア革命は本になるかが相談事だったのだが、話題は安倍さんの改憲案に及ぶ。これをどう評価し、どう本にするかは、いま出版社の直面する重大問題であるから、当然のことだ。

 安心したのは、その編集者が悩んでいたこと。安倍さんがこういう案を出してくることは、私の推測としては何回も聞かされていて理解していたつもりだったわけだが、実際に出てきてみて、これを批判するのが容易ではないという自覚が生まれたという。弊社と異なって有名な左翼出版社なので、周りにはたくさんの著者人がいるわけだが、そういう人には書かせられないという思いが芽生えているのかもしれない。以下、議論したこと。

 この問題、悩まないで反対闘争に突っ込んでいくと、とんでもない事態が待ち受けているだろう。この間、せっかく専守防衛の護憲派が増えてきたのに、やはり護憲派というのは自衛隊も専守防衛も心の奥底では認めたくない勢力だという烙印を押されることになるから。

 まあ、討ち死にという感じになるかな。理想をかかげ、現実と妥協せず、自衛隊のことを認めずに最後まで頑張り抜きました、なんてね。

 民進党はまちがいなく分裂する。その時、3項に自衛隊を明記することに賛成する人たちのことを、「敵」と位置づけたら、それも討ち死にの一環となるだろう。国民感情を敵に回すようなものだから。

 だって、現状のままで行くのも、理想と現実の矛盾をそのままにしておくことだが、3項に加憲するのも、矛盾をそのまま認めるということだから。ニュアンスの違いはあっても。矛盾の認め方として、どちらを選ぶかという選択になるのではないでだろうか。

 出て来る案に対する態度を決めるわけで、「反対」か「賛成」を選ぶしかない。だから、正反対の態度を選ぶように見えるけれど、反対と賛成は正面衝突する性格のものではないと思われる。

 さて、この問題、誰が書けるのかな。新しい書き手が必要になるかもしれない。

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