非武装中立VS中立自衛の真相

2017年6月12日

 いま、安倍さんの加憲提案について論じる本を書いていて、その関係でいろんなものに目を通す。へえ、そうだったんだと思わせるものも多い。その一つが、非武装中立VS中立自衛の真相である。

 60年代から70年代にかけて、社会党が自衛隊違憲論と非武装中立の政策を確立する。一方、共産党は、自衛隊違憲論では同じだったが、防衛政策としては中立自衛政策をとることになる。

 この二つは、安保条約の廃棄を意味する「中立」という点では同じだが、それ以外は本質的に異なっていた。非武装中立は文字通り非武装で自衛隊をなくそうということであり、攻められた場合は抵抗するが、「降参したほうがいい場合もある」と明言するものであった。他方、中立自衛というのは降参などせずに自衛権を発動して戦うというのが基本である。九条で自衛隊は認められていないからいったん解散するが、ゆくゆくは国民の合意を得て九条を改正し、自衛戦力が持てるようにするというものだった。

 両者は相容れなかった。社会党は共産党に対して、日本の武装を容認するというのは、「(防衛力増強論者に)絶好の口実を与え」るものだと批判をしてきた。共産党は社会党に「降参など無責任だ」と糾弾をした。かなり激烈な論争が行われたわけである。

 ところがである。当時、社会党支持者、共産党支持者は、それをどう見ていたのか。1966年に憲法学者の小林直樹が全国的な世論調査を大規模に実施した。そこでは政党支持者別の調査もあった。

 それを見ると、社会党支持者で自衛隊を「憲法違反だと思う」と答えたのは二八%しかいなかった(「違反していない」は一四%)。一方、共産党支持者ではそれぞれ七八%、五%だったのだ。

 さらに、自衛隊が必要かどうかの質問もあった。社会党支持者の五八%が必要論で(不要論は二七%)、共産党支持者の二一%(六八%)と好対照だったのである。

 小林は、以下のように書いている。『日本人の憲法意識』(東大出版会)からの引用。

 「革新派の「平和主義」とくに社会党のそれが、いかに民衆の底辺まで行きとどいていないか」「(共産党支持者)にくらべて政治の知識でも感覚でも判断力でも、ひどく見劣りがした」

 あれだけ論争していたのに、社会党支持者は自衛隊必要論が大勢で、共産党支持者の多くは自衛隊不要論だったのである。社会党と共産党の論争を、この支持者はどう見て、どう感じていたのだろうか。

 村山内閣で自衛隊合憲論に転換し、それが理由になって支持者から見放されたと一般に言われているが、まったく違うということだよね。もともと支持者は自衛隊必要論だったのだから。

 一方、共産党がここを転換すると、本当に支持者から見放されるかもしれない。私の実感としても、共産党支持者と共産党幹部の自衛隊違憲論、自衛隊悪論・廃止論って、激しいからね。66年調査時点と同じなんじゃないだろうか。

記事のコメントは現在受け付けておりません。
ご意見・ご感想はこちらからお願いします

コメント