麻生さんの壮大な勘違い

2018年3月13日

 麻生さんのことは、そんなに嫌いじゃありません。いや、もちろん、「謝罪する」と言いながら頭を下げないところとか、人の上に立つことが当然という育ち方をしてきたわけで、「私とは違うよな」と感じることだらけではあります。

 しかし、「金持ち、ケンカせず」という言葉にあるように、下のものには余裕で接するというところがあって、その余裕の部分は楽しんで見ていられるところがあったと思います。上から目線なので、それでも嫌いだという人は多いでしょうが。

 官僚との関係も、これまでそれが有効に働いていたと思います。「良きに計らえ」方式と言えばいいんでしょうか、官僚にまかせるわけです。

 昔、「大事な問題なので官僚に答弁させる」と述べた労働大臣がいましたが、基本、それと同じで官僚を信頼する。というか、自分で国政にかかわる政策をつくる能力はないので、任せるしかないわけですけどね。まあ、その労働大臣と比べれば、中身を消化して自分で答弁する力はあるんだでしょう。官僚が間違うこともあるんでしょうが、そこは鷹揚にかばったりして、さらに官僚との関係を密にしてきたように思えます。

 それで今回のことです。麻生さんはどこで失敗したのか。

 一つは、もう財務省は、以前の大蔵省時代とは異なって、あまり優秀ではなくなっているのに気づかなかったことでしょうね。優秀というのは、単に頭がいいというだけでなく、それなりに国家、国民のために尽くすという姿勢を持っているということです。それが衰えている。

 もちろん、どの時代でも、官僚には(民間人だってそうだし、私もそうですが)「保身」を考える要素はあるでしょう。特定の人びとの利益のために多少は融通を利かせるという姿は、私も国会で秘書をしていましたから、時々は目にしてきました。でも、それらは微妙だけれど裁量の範囲内だと思わせるもので、国会で大問題にするわけにはいかないものも多かったのです。

 それなのに、現在の財務官僚は、特定政権の利益のために国益を侵害し、法律違反までするのですからね。その変化を麻生さんは見抜けなかった。いや、そうでない官僚もいっぱいいるから、こうやって改ざんが日の目を見たことも言っておかねばなりません。ただ、政治主導が現在の政治の合い言葉になっているし、現在は野党を含むすべての政党が政治主導でやっていくことをうたっているので、官僚はどんどんその方向に向かっているのかもしれませんが。

 もう一つは、官僚に信頼を寄せている自分の姿を明確にすることでその官僚の信頼を得るという、従来型のやり方をとったことです。一つ目と裏腹の関係にあることですけれどね。

 麻生さん、佐川さんのことを「極めて有能」とかばい続けました。それで官僚の信頼を得ることになると、従来型の思考に陥っていたわけです。

 しかし、財務官僚にとって見れば、目の前で決裁文書の改ざんが進行しているのに、それに手を染める官僚を「極めて有能」と持ち上げてきたことになるわけです。つまり、麻生さんは「(改ざんを)知らなかった」と言っていますが、事実上はずっと、改ざんを叱咤激励してきたようなものなのです。

 それなのに、「責任は考えていない」はあり得ないでしょう。壮大な勘違いをしてきただけだとしても、責任は免れません。

 その上、結局、官僚を守ることもできなかったどころか、官僚だけに責任を押しつけようとしているわけです。官僚との蜜月が終わり、麻生さんの影響力は地に落ちることになるでしょう。

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