北朝鮮非核化と体制保障のジレンマ・7

2018年5月16日

 北朝鮮の人権問題の実態はどういうものか。国連人権委員会(現在は人権理事会)特別報告者の報告では次のようになっている。

 憲法(建前)では国民無差別の原則がうたわれているが、よく言われている通り、実際には細かく分断されている。出自や党員かどうかや、その他による分断である。

 政治犯、イデオロギー犯になると法律にもとづき最高刑は死刑。そうならなくても強制収容所に入れられる。

 その際、連座制が水平的にも垂直的にも適用される。水平的にとはその家族まで罰されるということであり、垂直的にとは末代まで汚名を着せられるということである。

 逮捕されたもののうちかなりの数が、法のプロセスや裁判を受けることなく拘置所に送られる。そして拷問や強制労働を強いられる。

 教育システムは国家によって厳重に管理されている。子どもは国家に従属的になるよう教育され、批判的、分析的な思考を育てる選択肢がない。

 政府の許可なく外国の放送を聞くことはできない。政治上の反対意見は許されずに処罰される。国家の干渉を受けない本物のNGOをつくることはできない。

 脱北者について、政治的な理由でそれを選ぶものは当然のこととして、経済的な理由での場合でも、北朝鮮に移送されると迫害される。反逆罪とみなされ、収容、拷問、死刑が待ち受けている。子どもを産んだ場合、その子どもが殺されるz(異民族の血を入れないために)。

 まあ、この程度にしておこう。そうやって死刑にされずに強制収容所に入れられているのが、何回か前に紹介したように10万人だと推計されているわけだ。

 情報もないし、脱北者からの一方的な聞き取りで、そこまで言えるのかと問題にする人もいる。しかし、国連人権委員会による調査は何十年もの間に鍛えられていて、ある人から聞いたというだけでは断定せず、同じ場所にいた別の脱北者からの情報とクロスさせ、信頼性のあるものを抽出するのである。

 こうした情報が、朝鮮半島の非核化や各国との国交正常化の過程で、どんどんオモテに出て来ることになる。いまでは残してきた親族への迫害を怖れて顔を出せない脱北者も、今度はテレビの映像で語ることになるだろう。強制収容所の実態も出てくるかもしれない。

 大事なことは、非核化が進むとしても、金一族のこうした支配は変わらないことだ。金正恩が突然いい人になったから非核化が進むということではなく、残虐な支配を続けるために「譲歩」するということだ。

 それでもなお、トランプは、金一族を支え続けられるのか。それは他国のことで、朝鮮半島の非核化がもたらす利益には変えられないという態度をとり続けられるのか。それが問題なのである。明日が最後。(続)

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