国連人権理事会というところ

2018年8月10日

 国連人権理事会が北朝鮮の人権問題をきびしく批判しているということで、それを材料にしていろいろ論じている。そこで前提として、この人権理事会の性格を紹介しておきたい。

 一般的に言って、左翼や平和主義者と言われる人のなかでは、日本がかつて侵略したり植民地にしたりした国を批判することへの躊躇が存在する。日本の悪行がすべての源泉なのだから、被害を受けた国を批判してはならないという考えが、その根底にあるようだ。私の記事の評判もよくない。

 しかも北朝鮮批判の中心になっているのは国連である。アメリカやら中国やらロシアやら、平気で国際法を無視する国が君臨し、いいように牛耳っている。国際刑事裁判所が人道に対する罪で裁判にかけているのは、アフリカなどの指導者ばかりであり、小さな弱い国をいじめる点では、国連人権理事会も同じ穴のムジナだと思われるのかもしれない。

 しかし、この6月19日、トランプ政権が人権理事会からの脱退を表明したことを思い出してほしい。あの時、ポンペオ国務長官があげた脱退理由は、中国やロシアなど人権侵害する国が理事になれるような仕組みがあること、イスラエルに対する恒常的な偏見があることだった。アメリカの国連大使などは、「(人権理事会は)人権侵害国の擁護者で、政治的偏見の汚水槽」だと汚い言葉を投げつけた。アメリカにとってみれば、人権を侵害する国を助けるのが国連人権理事会という位置づけだ。

 これは理由がある。人権理事会は安全保障理事会と異なり、大国の拒否権はない。すべての加盟国によって平等に理事を選ぶ仕組みである。だから開発途上国が協力し合って代表を送り出すのだ。国連の多数を占める開発途上国が主導する仕組みなのである。

 歴史的にもそういう役割を果たしてきた。前身である人権委員会が名を馳せたのは、あのアパルトヘイトが横行していた南アフリカで、牢獄に捉えられた人びとも含むいろいろな調査をやって、それを報告書としてまとめ、世界に告発していった仕事を通じてである。その後、ピノチェト政権下のチリでも同じような役割を果たした。

 注目してほしいのは、こうやって開発途上国優位の仕組みがあるにもかかわらず、国連人権理事会は北朝鮮をこれほど批判する報告書を出し、決議を採択していることである。批判決議は毎年採択されているが、最新の決議は、一人の反対もないコンセンサスで採択している。中国やロシアだって、決議に反対や保留という態度をとることはせず、確認の場から退席するに止めたので、コンセンサス採択ということになったのである。

 だから、北朝鮮の人権問題の深刻さというのは、普通の理解や常識を超えたような問題だということである。あまたある独裁国家の一つというのではないということである。

 私もそこを理解してもらえるような書き方をしないとね。本日午後は「歴史総合研究会」の第6回会合。来週は月曜日に『若者よ、マルクスを読もうⅢ』の初校ゲラを受け取り、突貫作業をやって、金曜日に再校ゲラを著者にお届けする予定で、ずっと仕事をしているのですが、一応お盆休みということになっているので、ブログもお休みします。

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