2015年1月14日
昨夜のNHKクローズアップ現代、ヘイトスピーチを取り上げていましたが、なかなかいい番組だったと思います。制作者の一人に、私が「自衛隊を活かす会」の活動で知り合った人がいますが、その努力が実を結んだんだなあと思って、その面でもうれしくなりました。
ところで、日本でヘイトスピーチが問題になるのと、フランスでテロ事件が起きるのが同時並行ということもあって、いろいろと考えさせられることになりました。ヘイトスピーチと言論の自由のという問題です。
もっと直裁に言えば、「シャルリー」が掲載するイスラム教預言者の風刺画(侮辱画という人もいますが)は、ヘイトスピーチにあたるのかということです。どうなんでしょうか。
特定の民族や宗教などの全体を侮辱するということがヘイトスピーチの欠かせない要件ですから、その点ではヘイトスピーチだと言えるでしょう。預言者への侮辱って、宗教全体への侮辱ですからね。
では、そうだったら、ヘイトスピーチを規制するという場合、何が求められるんでしょうか。法的な規制を求める議論がありますが、じゃあ「シャルリー」のその号は発禁とか風刺画だけ黒塗りということでしょうか。それだと言論の自由を侵すことになるので、発行は自由だが(事前検閲など問題外だし)、何らかの罰則を与えるということになるのでしょうか。
それとも、法的規制は言論の自由との関係で難しい問題を生みだすので、言論には言論でということになるのかなあ。でもその場合、あの京都の朝鮮学校の場合のように、傷つけられている人をどう救うのかという、別の問題が生まれます。
その朝鮮学校のことですが、判決では、人種差別だと認定した上で、学校周辺での街宣活動を禁じたのですよね。ということは、学校周辺でなければ(生徒を直接に傷つけるような場所でなければ)、ああいう言論は容認するということなんでしょうか。
でも、そういうことだと、「シャルリー」の風刺画は、直接にイスラム教徒を傷つけることになるから、やはり禁止の対象でしょうか。そんなことを言いだすと、いま書店に並んでいる「嫌韓本」は、すべて発禁なのか。それとも、お金を払って購入する人だけが中身に接するという建前があるから、「シャルリー」や「嫌韓本」は問題ないのでしょうか。
考えるべきことが山積みですね。そう簡単に結論が出そうにありません。
2015年1月13日
どの都市でも、裁判所のある近くには、弁護士事務所とかが集中していますよね。本日は京都の弁護士会館に行ったのだけれど、裁判所の敷地内にありました。国有地を借りているんですって。そういうこともあるんですね。
用件は、いうまでもなく、自衛隊を活かす会の関西企画です。弁護士として護憲運動の中心を担っている方々に情報をお伝えし、ご意見を伺い、どう協力しあっていけるか、話し合ってきました。
私の知る弁護士さんは、ほとんどが自衛隊違憲論です。いや、私だってそうですから、当然なんですけど。
ですから、集団的自衛権は違憲だが、個別的自衛権(とそれを担保する実力組織=自衛隊)は合憲だという考え方は、やはり受け入れるところにならないわけです。しかし、そうはいっても、実際に現場で護憲運動をしていたら、自衛隊は違憲だということでは、なかなか運動面での広がりがありません。いま、そこをどう突破するかということで、いろんな模索があるんですね。
昨年の総選挙の投票日、自衛隊を活かす会の柳澤さん、伊勢﨑さんのお二人が、長野県弁護士会のシンポジウムに招かれました。6年前のシンポでは、自衛隊が合憲か違憲かを議論したそうなんですね。しかし、集団的自衛権容認という事態のなかで、これまでの議論を超えて、国防の現実論を見据えた議論をしないとダメだということになり、お二人が呼ばれたそうです。
柳澤さん、「護憲派の人もどうか自衛隊を「敵」扱いしないでください」と訴え、武力に頼らない国防の選択肢を提示したいと語ったそうです。そういう問題を国民が考える土台をつくりたいと。
集団的自衛権に反対するという一点共闘では、それだけが一致点なので、自衛隊を認めるかどうかという議論は出てきません。しかし、集団的自衛権を容認した閣議決定を撤回するには、政権を視野にいれないとダメなので、じゃあどんな国防を考えているのかが問われて、自衛隊をそこにどう位置づけるかが否応なしに迫られてくるんです。
だから、本気で集団的自衛権を阻止しようと思ったら、自衛隊についてどう考えるか、結論にたどり着くような議論が、護憲派に求められると思います。自衛隊を活かす会の活動が、その一助になれば幸いです。京都の弁護士さんからも、いろいろなご協力が得られそうです。
2015年1月9日
毎年、ジュンク堂が出しているんです。全店合計で売上の多い出版社の順位を、300社まで。
2012年、うちは創業以来初めて、その300社以内に入りました(299位だったかな)。2013年、280位台になり、最近明らかになった2014年の数字が、なんと271位だったんです。その前の年と比べ、売上の冊数が16.7%伸びていて、売上の金額は13.7%伸びています。
売上金額の上位10社のうち、前年より売上冊数が伸びたのは新潮社(5位)と学研(6位)だけで、講談社、KADOKAWA、集英社、小学館(以上が4位まで)、岩波(7位)、文藝春秋(8位)と軒並み落ちています。まあ、相手が大きすぎて比較の対象にはなりませんが、がんばっていることは確かでしょう。ちなみに、9位はダイヤモンド社、10位は幻冬舎です。
こうやって、がんばっているつもりなんですけど、がんばってもがんばっても苦しさは続く、という感じですよね、この業界は。経営のことなんか心配せず、いい本をつくることにだけ専念できた時代があるそうですけど、一度でいいから、そんな時代に出版社にいたかったです。
ま、グチを言っても仕方ありません。毎年10位ずつあがっていって、退職するまでに200位を切ることを目標にしようかな。
今年も、いろいろ意欲的な本を準備しています。いくつかだけご紹介すると……。
「世界の言葉で「平和」って何て言うの?」みたいな本。学校図書館向けです。世界の16言語を対象にして、いまその言語を話す若者に、その国の「平和」の意味を取材している最中。国によって「平和」と言っても、意味が違うんですよね。だから、「平和にやろうね」とコミュニケートしても、全然違った理解だったりします。そこを理解し合おうという本です。
「福島から日本を撃つ」みたいな本。これは、以前少し紹介しましたが、福島地裁で行われている原発訴訟(生業訴訟)の進行に合わせ、この問題に関心のある方々をお呼びし、講演してもらい、それを本にするものです。前に書いたより講演者が増えて、「あっ!」という方も加わっているので、お楽しみに。3.11以来、踏みつけにされてきた福島からこの日本を変えていくという、狼煙のような本にしたいと思います。
そして沖縄の県知事選挙、総選挙の本。どういう努力が「保革共闘」を生みだしたのか、沖縄限定にしないためにはどんな努力が必要なのか、そんなことをリアルに伝わる本にしたいなと考えています。
それ以外にも、いろいろです。今年もまた、20冊以上の本を編集することになるでしょうか。自分自身で書くのは、ゴールデンウィーク明けに出てくる安全保障法制の批判本と、他社から出す予定の「慰安婦問題を終わらせる政治学」です。
今年もよろしく。
2015年1月8日
フランスの事件は、要するにそういうことですよね。昨日も少し書いたこととつながります。
9.11があり、アフガニスタンでタリバン打倒の戦争をやり、続いてイラクでフセイン打倒の戦争をやってきました。そのもくろみ通り、タリバン政権は倒れ、フセイン政権も倒れた。イラクからもアフガニスタンからも米軍の戦闘部隊は撤退しました。
だけど、タリバンは蘇り、アフガニスタンのほとんどを実効支配するに至っています。隣のパキスタンでは、タリバンが過激化してパキスタンタリバン運動を名乗り、マララちゃん襲撃をはじめ手のつけられないほどの勢力になっています。そして、イラクで打倒されたフセイン残党が過激派集団と手を組み、「イスラム国」をつくり、シリア情勢を混沌としたものにするとともに、もともとの出自であるイラクの政権を脅かしているわけです。
倒したはずの相手が攻勢に出ていて、あの地域が戦争前よりもっと不安定化していて、アメリカなどへの憎しみがどんどん拡大しています。そして、9.11以来に受けた攻撃への報復を欧米諸国においてやるぞと宣言しているというのが、いまの構図でしょう。米軍の「撤退」というのは、アメリカ国民向けに勝利を演出しているだけであって、本当は敗北なんです。
この局面において、中東やアフガンで日本が何をするかが問われますよね。安倍さんが進めている集団的自衛権というのは、まさに敗北した路線の継承・強化でしかありません。ホルムズ海峡で機雷の掃海をするかどうかがいまなお議論の中心になっているって、いったいこの地域の現実が目に見えているんでしょうか。
伊勢﨑賢治さんが4年前、うちから本を出しました。『アフガン戦争を憲法9条と非武装自衛隊で終わらせる』という本です。
4年前はまだパキスタンタリバン運動は生まれていませんでしたが、その源流となったタリバンが住んでいて、パキスタンとアフガンへの出撃拠点となっているトライバルエリア(部族地域)に着目したものです。そこを経済特区にして貧困と格差を抑えるとともに、国連の非武装停戦監視団として丸腰の自衛隊を送り込んで、停戦を実現していこうというものです。伊勢﨑さんは、この提案を実現するため、国連やNATO、アフガン政府なども東京に招いて、国際会議までやったんですよ。
私にとっては目の開かれるような提案でしたが、あまりに過激とも言える提案で、左翼も右翼も付いて来られず、本もあまり注目されませんでした。だけど、目の前の現実を見ると、このままでは世界はテロの恐怖におびえて暮らすしかなくなりそうで、伊勢﨑提案がすごく現実味をもってきたのではないかと思います。
いずれにせよ、この事態を前に日本は何をしていくのか、真剣に考えるべきときだと思います。残された時間は、あまりないのかもしれません。
2015年1月7日
昨日、ちょこっと書きましたが、2月14日(土)です。いつもの時間帯、いつもの会場、いつもの会費です。お申し込みはこちらからです。
テーマは、「現代によみがえる「専守防衛」はあるか」。冨澤暉元陸上自衛隊幕僚長をお迎えし、「自衛隊を活かす会」の呼びかけ人と徹底討論します。終了後、会場脇のレストランで懇親会もやります。会費は3000円、学生は2000円です。座って話せるスペースも広々としていて、呼びかけ人とか冨澤さんとかとお話しするには、とってもいい機会だと思います。
「自衛隊を活かす会」は、憲法9条の枠内で考えられる防衛戦略の「提言」をつくることを目的に、これまでシンポジウムをやってきました。提言づくりの準備という点では、この5回目でシンポは終わりです。あとは、5月頃までに、その「提言」を出すための作業をしていきます。
今後のことですが、ひとつは、「提言」の内容を政治の場で現実のものにしていくための活動ということになります。どんなことかは、おいおい明らかになっていくでしょう。
もうひとつは、時々、「会」に求められることをやっていくことになります。昨日書いた関西企画が、その代表例ということですね。
「提言」を出すことが最初の目的だったので、出したら終わりかと思っていたけど、そうはいかない感じですよね。安倍さん、張り切っているし。
「提言」は本当に求められていると思います。日本防衛のためにも国際秩序のためにもです。
国際面から言うと、アメリカの力で秩序を維持するという従来のやり方が破綻していることが、現在のテロ問題の深刻化で明確になっているのに、集団的自衛権ということで、さらにこれまでのやり方を強めようとしているわけです。そうじゃなくて、宗教や民族の価値観の違いとかを対話で乗り越えていくとか、グローバル化が世界を覆い尽くす中で生まれている不平等を取り除くこととか、まさにこれまで日本が憲法9条の「制約」があるので、「それしかできません」と言ってきたことが、大事になっているわけです。
日本防衛ということでは、同じようにアメリカの抑止力を強めるという観点で、これまでの防衛政策はできてきたし、安倍さんが進んでいるのもその道です。でも、ソ連と違って崩壊しそうにない中国の軍拡につきあって、日本の軍事力を強化してアメリカの抑止力を強めるなんてことをやっていたら、日本の負担はとんでもないことになるのは目に見えています。
もちろん、法の支配が国内でも対外的にも通用しない国が相手ですから、日本の主権を守る確固とした姿勢と、それを担保する実力は必要です。同時に、ソ連とは違って、日本の支配層にとっても崩壊しては困る相手なのですから、それにふさわしい防衛戦略が必要なんです。
ということで、この面では、今年がひとつの勝負になります。がんばりますね。