2014年7月30日
9月23日、「京都まつり」というのがやられて、弊社も出店するんです。そこで、集団的自衛権に関するクイズを書いたチラシを配って回答をしてもらい、ある時間になったら店に来てもらって、私が正解を伝え、全問正解者には本を送るという取り組みをすることになりました。クイズは8月22日までにつくればいいと言われたのですが、面白そうなのでパパッとつくりました。同じものを当日に配るかどうか分かりませんが、まあ、挑戦してみてください。
正しいと思われるものに○をつけてください。
1、世界で最初に集団的自衛権を発動した国はどれか?
アメリカ、ソ連、イギリス、フランス、中国
2、最も直近で集団的自衛権が発動された戦争はどれでしょう?
湾岸戦争(1991年)、アフガン戦争(2001年)、イラク戦争(2003年)
3、以下の内、集団的自衛権という言葉が使われていない条約はどれか?
国連憲章、日米安保条約、NATO条約、ソ連中国友好同盟相互援助条約
4、閣議決定の後の記者会見で、日本は参加しないと安倍さんがのべた戦争は?
湾岸戦争(1991年)、アフガン戦争(2001年)、イラク戦争(2003年)
5、政府が「日本には撃ち落とす能力がある」と認めている弾道ミサイルは?
米本土に向かうもの、グアムに向かうもの、日本に落ちてくるもの
6、米艦船が攻撃されたとする以下の事件の内、本当に攻撃されたのはどれ?
メイン号事件(1898年)、真珠湾攻撃(1941年)、トンキン湾事件(1964年)、コール号事件(2000年)
7、朝鮮半島有事に避難する日本人を輸送することが法律で決まっているのは?
米艦船、政府専用機(ボーイング747)、自衛隊の護衛艦・輸送艦、民間航空機
8、以下のアメリカの戦争の内、日本政府が批判的見解を表明したものはあるか
ベトナム戦争、グレナダ侵略(83年)、パナマ介入(89年)、イラク戦争(03年)
9、以下の内、侵略を定義した国際文書はどれか?
国連憲章、国際司法裁判所規程、国連総会決議「侵略の定義」、国際刑事裁判所規程
10、冷戦期に集団的自衛権が行使された事例の内、「自国の存立」がかかったものはあるか
ソ連(ハンガリー介入、チェコ侵略、アフガン介入)、アメリカ(レバノン介入、ベトナム侵略、グレナダ介入、ニカラグア介入)、イギリス(ヨルダン介入、イエメン介入)、フランス(チャド介入)
2014年7月29日
少し前に、集団的自衛権の国会集中審議で、共産党の小池さんの質問のことを取り上げた。それに関連することをひとつ書いておく。政府はきっと、小池さんの質問を恐れていたんだね。それで周到に準備していたのだと思う。「赤旗」によれば、以下のようなやりとりがあったとされる。
小池氏は「アメリカからの派兵要請を断ることなどできなくなる」と指摘し、1997年の国会での日本共産党の志位和夫書記局長の質問に対する橋本龍太郎首相(いずれも当時)の答弁を示しました。
小池 この答弁以降、日本がアメリカの武力行使に反対した事実はあるか。
外相 遺憾の意を表明した実例は存在する。1983年のグレナダ派兵、89年のパナマ軍事介入の際だ。
首相 橋本総理(の答弁)が間違っていたんだろう。
ここで小池さんが取り上げた橋本答弁というのは、以下のようなものである。1997年10月7日の衆議院予算委員会における答弁である。
「第二次世界大戦後、我が国が国連に加盟いたしまして以来、我が国が、米国による武力行使に対し、国際法上違法な武力行使であるとして反対の意を表明したことはございません。」
これって、日本政府がアメリカにものが言えないことの典型的な「証拠」である。だから、それ以降、何回もいろんな場所でとりあげられ(私も自分の本のなかで引用しているし)、話題になってきた。集団的自衛権を容認するようになったら、この答弁がじゃまになると政府は考え、どこかで覆そうと思っていたのだろう。それが小池さんへの「急襲」となってあらわれたわけだ。
ところで、じゃあ、本当に政府は、グレナダやパナマの事態の際、アメリカの行動に「遺憾」を表明したのか。とんでもない。
たとえばグレナダ。この問題では、83年11月8日、共産党の野間友一さんの質問主意書に対する答弁書が出ている。そこで、「今回の事件に関しては、政府としては、実力行使を含む事態の発生を見るに至ったことは遺憾であると考えている」として、たしかに「遺憾」という言葉は使われた。しかし、その「遺憾」は、「事態の発生」に対する表明にすぎない。
大事なことは、アメリカの武力行使への政府の見解だ。これについて答弁書は、「今回の米国の行動については、米国人の安全確保の問題や、関係諸国の強い要請等の事情があったと理解している」というものだ。「理解」表明なのである。さらに答弁書では、アメリカが自国の行動を「グレナダ在留の米国民保護のための活動は、国際法上の諸原則によつて正当化される」と説明していることを紹介しながら、次のように述べている。
「このような米国政府の説明にある事実関係を前提とする限り、米国の行動は、国際法上合法と認められると考えられるが、政府としては、前提となっている事態の詳細について承知していないので、最終的な法的判断を述べる立場にない。」
そう。最終的な法的判断はしていない(だから「遺憾」だって最終的な判断ではない)。同時に、アメリカの説明通りなら合法だと、堂々とのべている。いずれにせよ、「国際法上違法な武力行使であるとして反対の意を表明したことはございません」という橋本答弁は、少しも揺らいでいないのである。
2014年7月28日
「自衛隊を活かす会」の第2回シンポジウム、成功裏に終わりました。参加されたみなさん、要員として手伝ってくださったみなさん、どうもありがとうございました。
「対テロ戦争における日本の役割と自衛隊」がテーマでしたが、とっても刺激的でしたよね。全体は、「会」のホームページで順次公開されるので、それを見ていただければと思いますが、ひとつだけ印象に残ることをと言われたら、酒井啓子さんが最後に紹介されたことでした。
イラクでやられている経済プロジェクトに、世界のどの国がどの程度の件数で加わっているかという数字を紹介しておられました。それが衝撃的だったんです。
いちばんは当然、アメリカです。16件でした。まあ、経済権益のための戦争という要素があったわけですし、影響力からしても当然でしょう。
2番目はどこか。それがフランスとドイツで、14件だというんです。つづいて韓国と中国で13件。日本はなんと3件だけです。
イラク戦争に反対したフランス、ドイツ、中国が日本の4倍以上! 柳澤さんが衝撃を受けていました。だってですよ、日本がイラクに自衛隊を派遣したのは、ここでアメリカに恩を売っておかないと、戦争終了後のイラクでの経済権益ぶんどり合戦に勝てないという見込みもあったわけでしょ。ところが結果はこうなんです。
日本は自衛隊を派遣し、隊員が死なないようにいろいろ気を遣っていた。だから、日本から経済使節団などがイラクにやってくることなんかには神経質になっていて、サマーワからいなくなったあとだったんですね。
ところが、イラク戦争に反対し、軍隊を送らなかった国は、その間に、自国の権益を拡大していった。当時、反対する国は、戦後のイラクでは存在感がなくなり、国益を損なうよと、アメリカあたりが圧力をかけていると言われましたが、結果は、イラクへの派兵に踏み切った日本こそが、国益を損なったわけです。
しかも、そのイラクでは、政権を追われた勢力がテロ集団と結びついて、首都にまで進撃しようとしている。戦争それ自体が無益だったことも実際に明らかになっているわけです。
酒井さんは、当事国から自衛隊の派遣要請があって、自衛隊の能力がそれにふさわしいなら検討してもいいが、アメリカとの関係で自衛隊を派遣するかどうか決めるのは、根本的におかしいのだと言っておられました。その通りですよね。
さて、3回目のシンポジウムですが、テーマは、「集団的自衛権に関する15事例を現場から考える」というものになります。10月5日(日)の午後です。会場確保の都合で、次回は土曜日でなく日曜日ですので、お間違いのないように。
2014年7月25日
東京出張中である。いろいろやるべきことがある。
昨日は、ある著者と発刊の打合せ。もっといい本にするため、少し時間をかけてでも書き足してもらう相談である。これは来年をお楽しみに。
本日午前は、先月発行の『あなたの福島原発訴訟』の普及とか、第2弾についての相談。「生業を返せ、地域を返せ!」と取り組まれているこの裁判、9月には第4次訴訟に踏み切るのだが、原告が3500を超える勢いだ。裁判の行方もいろいろ注目される。
ここでも議論したのだが、やはり難しいのは放射能の影響問題。それ以外はみんなが団結できるのに、この問題だけはそうならない。やり方次第では亀裂を生みだす。それを克服する方法はないものかとずっと考えているが、名案が思い浮かばない。だけど、何とかしないとなあ。
その後、東京新聞社へ。編集委員の方にご挨拶。集団的自衛権の問題等で意見交換をする。日韓関係に造詣の深い方なので、次に私が書きたい本についてもちょびっとお話しし、意見をいただいた。そうだよな、同じような考えをもつ人は多いんだなあと、少し心強くなる。韓国の運動団体を批判すると、慰安婦問題とかに熱心でないとか植民地支配への反省が薄いとか、そういうふうになってしまう風潮の打破が、いま求められると思う。それができて、かつ韓国との関係もうまくいくとしたら、やれるのは左翼の側しかいないだろう。
そでいままで、大塚商会の方と、東京事務所の経費削減問題を議論する。こういう仕事もしなければならないよなあ。
で、いま午後6時。仕事は終了。
7時から、「自衛隊を活かす会」の打合せがある。参加者名簿を整理したら、150名になっている。スタッフとか主催者をあわせると160名。きっと前回と同様、メディア関係は当日、突然くる人が多いので、200名の会場でちょうどよかった。
「会」がそれなりに知られてきたので、いろんな運動団体とか政党から、連携のよびかけが来ている。それらにどう対応するのかということも、本日の議題である。それ以外に、第3回以降のシンポジウムをどうするかが焦点。集団的自衛権が急浮上したので、それらを先行させて議論してきたが、やはり尖閣をはじめとする日本防衛とか日米中関係とか、そこが大事である。集団的自衛権を容認する世論を支えているのも、尖閣などでアメリカにお世話になるのだから、多少ことはやっておかないとという世論だからね。
はい、じゃあ、出かけてきます。
2014年7月24日
ウクライナ情勢は、マレーシア航空機の問題もあって、いま微妙な局面だ。だけど、撃墜したとみなされている親露派がいっきょに劣勢に立たされたので、内戦を終わらせる好機だという感じもする。
報道から判断するだけなので不明な点も多いが、プーチンさん、少なくとも今回の問題では、親露派を露骨に応援するということはできないでいる。というか、プーチンさんは、クリミアを勢力圏に組み入れれば満足だったのに、その過程でロシア民族主義が燃え上がってしまい、ウクライナのなかの親露派がプーチンの思惑をこえて暴走しているという要素もあるのだろうと思う。
だけどその結果、航空機撃墜の責任までロシアがかぶってしまうということでは、プーチンさんも困る。だから、そのプーチンさんを説得し、航空機問題とセットで内戦を終わらせるプログラムを提起すべきときだ。
具体的には、親露派の武装解除が中心問題である。親露派に対して、武器をすべて差し出せば内戦の責任は問わないことを約束し、実行に移すことである。
ロシアとEUとウクライナと親露派の4者会談でそれを合意する。そして武装解除のための平和維持軍を送るという感じだろうか。そういう平和維持軍の中核をになうのは、いつも非武装・丸腰の軍幹部だ。武器をもたない自分の姿を武装勢力の前にさらすことによって武器を差し出せと要求するのである。危険だけど、崇高な仕事だ。
ただ、ヨーロッパの軍人がいくのでは、これまでの対立の憎しみが残っていて危険が大きい。だから、日本の自衛隊が行くのが適切かもしれない。
安倍さんは、ロシアとの領土交渉を気にして、航空機撃墜問題でも弱腰で、アメリカから問題にされている。だけど、それこそプーチンさんと交渉して、「いまプーチンさんが親露派の武装解除でイニシアチブを発揮すればロシアの株があがりますよ」「日本の自衛隊がお手伝いしますよ」と提言することによって、ウクライナ問題の解決にも北方領土交渉の前進にも、つなげられるのではないか。
これまで日本は、日本とは無縁な国際的な紛争を前にして、独自のイニシアチブを発揮して解決するということがなかなかできなかった。だけど、第二次大戦後これまで戦争で人を殺したことのない日本だから、ほんらい、こういう役割は得意になってしかるべきなのである。
さあ、安倍さん。「積極的平和主義」の出番です。ぜひこの問題でイニシアチブを発揮してください。そして、うまくいったら、それができたのは自衛隊が人を殺していないからだと自覚して、7月1日の閣議決定を撤回してください。