拉致問題と集団的自衛権と安倍さん

2014年6月19日

 昨日、京都市職労の中央委員会が開かれたのだが、そこで集団的自衛権について50分ほど時間をいただき、しゃべってきた。こういう機関会議で講演するのもあるんですね。

 緊迫した情勢なので気合いが入った。ブログでここ数日書いていることが、自分なりに整理できたように思う。

 安倍さんは、拉致被害者のことを真剣に考え、救い出そうとしているのだろうか。それとも、そういうことよりも、集団的自衛権の方を優先させるのか。その問題だ。

 政府が集団的自衛権が必要だとして提示している8事例は、ペルシャ湾での機雷掃海などをのぞき、ほとんどが北朝鮮が侵略をすることを念頭においたものである。北朝鮮に武器を運ぶ船を検査しなければならないとか、韓国から避難する日本人を乗せた米艦船を防護しなければならないとか、ミサイルを破壊しなければならないとか、等々。

 もちろん、北朝鮮は、過去、拉致問題にとどまらず、アジアの各地で人を殺傷する悪辣な行為を行ってきた。拉致以外は、自分がやったことさえ認めておらず、何の反省もしていない。だから、そういう国に警戒心をもつことは当然である。

 だけど、そういう国との間で、拉致問題の解決に向けて協議を重ね、10年ぶりの再調査に踏み切る合意を得たのである。その合意は、昨日も書いたように、拉致問題にずっと関心を抱いてきたものの目から見て、意味のあるものだ。そして、拉致問題を皮切りに、核・ミサイル問題を解決して、日朝の国交を正常化しようというのが、この交渉の最終目標なのである。集団的自衛権を発動する必要などなくそうということでもある。

 もちろん、何をやる国か分からないので、いろいろ備えをしておくのは当然である。実際、有事における韓国からの在留邦人の避難などは、過去、官邸や防衛省の内部で検討され、準備が整っている。

 それなのに、安倍さんは、何も態勢ができていないかのような虚構の上に立つ。そして、その態勢をつくことが必要だとして、北朝鮮が悪辣なことをやる国家であることを大声で叫び、大騒ぎしながら軍事態勢を強化するのである。

 しかし、いま、まさに拉致問題を解決するため、大事な局面にさしかかろうとしているのだ。北朝鮮がこれに反発し、再調査をやらないと言いだしたら、誰が責任をとるのだろうか。

 安倍さんって、拉致された被害者の人権とかいのちとか、真剣に考えていないのではないだろうか。あるいは、この交渉で生まれた合意文書の意味があまり分かっておらず、どうせ重要な進展は望めないというこれまでの観念にとらわれ、北朝鮮が悪意ある国家であり続けることの方を望んでいるのだろうか。

 国民のいのちをもてあそんではならない。そのことだけは強く言っておきたい。

記事のコメントは現在受け付けておりません。
ご意見・ご感想はこちらからお願いします

コメント