歴史総合研究会がスタート

2016年12月27日

 昨日午後、弊社の会議室において、歴史総合研究会がスタートした。2022年に高校で日本史と世界史を統合した「歴史総合」の授業が開始されるのにあわせ、その両方をいっしょに学ぶという新しい考え方に沿って、大人向けに歴史の本をシリーズで出すための研究会である。日本史、東洋史、西洋史の大御所の先生が出席し(最終的に6名を予定)、非常に充実した議論となった。

 歴史総合を高校でどう教えるかというのは、まだ学術会議や文科省のなかでも議論中である。教科書もこれからだ。ただ、これまでの歴史と異なり、「通史」的な教え方はしないらしい。近現代史を中心にして生徒に考えさせるようなテーマを設定し、それを教え、議論することを通じて歴史の見方を培っていくということらしい。そういうことだと、教科書も出版社によって千差万別のものになる可能性があるし、先生の教え方にも自由度が広がるかもしれない。

 弊社で出すのは、別に高校生向けではないので、その議論に縛られる必要はない。だけど、いま検討されているコンセプトは大事なので、大いに取り入れていきたい。

 昨日議論されたなかでは、たとえば、天皇陵やピラミッドなど古代ではなぜ権力者は大きな墓をつくったのか、それが次第に小さくなっていったのはなぜかなどを通じて、国家権力というものの性格、その歴史的な変化を捉えさせるという提案もあった。なるほどなと思う。

 ただ、現状では、日本史の研究者と世界史の研究者は分離しているので、一人がこれを書くというのは容易ではない。それどころか、同じ日本史でも、天皇陵の時代を研究している人と、官僚機構が発達して墓が小さくなっていく時代を研究している人との間でも、有機的なつながりはない。「このテーマですぐに着手してほしい」と依頼しても夢物語だろう。

 それでも歴史総合の授業が始まるのは2022年なわけだから、「4年後に出版したいから、十分に研究を積み重ねて書いてほしい」ということなら、対応できる研究者はいるだろう。研究者にとっても刺激されるようなテーマ設定ができれば、やる気も起きるだろう。それが読者の関心を惹くことにもなると思う。

 歴史書って、それこそ歴史と伝統のある出版社のいくつかが仕切っていて、弊社の参入余地は少ない。だけど、このコンセプトでなら、どの出版社も同じスタートラインである。伝統のある出版社だと、「このテーマならこの人は外せない」という制約もあって、よけいに難しいこともあると聞いた。

 ということで、私の定年退職時を超えるような、すごく長丁場の仕事になります。どなたか、「これをやりたいので入社したい」みたいな人はいませんか? もちろん、それだけやっていればいいというような、甘い出版社ではありませんけれど。

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