北朝鮮ミサイル対応は究極の防衛レッスン・了

2017年3月30日

 この連載もありましたね。とりあえず終わっておこうかな。

 この問題で考えておかなければならないのは、防衛と外交をどうバランスさせるかということだ。どちらかだけ、ということにならないことだ。

 北朝鮮が核ミサイル開発を加速させていることについて、アメリカや日本が北朝鮮との外交を放棄してきたからだとの見方がある。実際アメリカは、「戦略的忍耐」と言って、北朝鮮が核開発を放棄するまでは相手にしないとの態度をとってきた。その間に核開発が進んだわけである。

 しかし、そのアメリカの「戦略的忍耐」は、外交努力で北朝鮮の核を放棄させようとしたことが、明白に失敗したことで始まったものだ。いわゆる1994年の「米朝枠組み」合意で北朝鮮が核兵器を最終的には放棄することを約束し、その見返りに北朝鮮に対して軽水炉2基を供与し、それが完成するまでの間、毎年50万トンの重油を供与することになり、日本も建設費の30%を負担した。そうやって事業が進行していたのに、北朝鮮が核開発を続行していたことが明るみに出て、北朝鮮はIAEAの査察も拒否するわ、NPTからの離脱も宣言するわで、見事に破綻したのである。

 それら一連の経過が示しているのは、北朝鮮は、周辺諸国がいくら外交努力を強めようとも、逆にどれほど制裁を強めようとも、それとは関係なく核ミサイル開発を成し遂げるだろうということだ。こちらも「戦略的忍耐」だよね。どんな甘い誘いがあっても、どんな厳しい制裁があっても、米本土に届く核ミサイルができるまでは堪え忍ぼうとしているように見える。

 日本国民はその経過を目の前で体験している。北朝鮮の脅威を過大に見過ぎているというのは事実だろうが、実際の体験に根ざして北朝鮮観が形成されているわけだから、外交努力の中身次第でなんとかなるというのは、国民の大半には受けいれられないだろう。体験した現実に合わないわけだから。その現実をふまえ、どんな外交、どんな防衛が必要かを提起できないといけない。

 これまで通り、すべてアメリカに任せて、日本は追随するのか。
 北朝鮮のねらいはアメリカで、日本にミサイルを向ける場合も在日米軍基地が標的なのだから、そのアメリカに出て行ってもらうのか。
 そこまでは決断できないから、在日米軍基地には残ってもらうが、北朝鮮に核使用の口実を与えないため、アメリカが先制的に核兵器で攻撃するのは止めさせるという態度をとるのか。

 そこらあたりの目標を定めて、それにふさわしい外交防衛政策を考えておかねばならない。いまだったら十分にレッスンする余裕はあるけれど、トランプ政権が選択肢を決定したあととか、北朝鮮が開発を終えた後では、冷静な議論はできなくなる。そうなると、アメリカ任せになるか、日本もミサイル基地を攻撃する能力を身につけるという議論におされるか、どちらかになりかねない。だから、いま、なんだと思うんだけどな。(了)
 

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