稲田発言問題で朝日新聞にコメント

2017年6月29日

 沖縄に来ていますが、自衛隊が自民党を応援するかのような発言をめぐって、朝日新聞から電話があり、コメントがほしいということでした。それで、本日の新聞の第一社会面(東京本社版)右下に以下のようなものがでています。朝日では2年ほど前、埼玉県版で取り上げてもらったことはあったけど、全国版は初。見出しの一つは、「9条明記改憲案 識者から危機感」というもので、「識者」になっちゃった。

(以下、記事)
見出し「『党の軍隊』と言うのと同じ」
 安倍政権が加速させる憲法改正の動きとの関係でも、発言を問題視する声があがる。
 元防衛官僚や国連PKO幹部経験者らでつくる「自衛隊を活(い)かす会」の松竹伸幸・事務局長は、自衛隊を憲法で位置づけてほしいという自衛官の気持ちに理解を示しつつ、いまの憲法下で防衛政策を積極的に議論していくべきだという立場だ。「9条の下で様々な議論があり、かつて違憲判決さえ出た自衛隊は、どうすれば国民に支持されるのかを戦後ずっと探求してきた。『自民党の軍隊』と言っているに等しい稲田氏の発言は、それを台無しにするもの。自衛隊をどうしたいのか、憲法改正の動きが危険なことに思えてきた」。

(引用終了。なお、大阪本社版では、見出しが「国民の支持探究 発言で台無しに 『自衛隊を活かす会』」となっていて、最後の「自衛隊をどうしたいのか、憲法改正の動きが危険なことに思えてきた」が削除されています。)

 そうなんです。ちょうど長沼裁判の判決が出た頃に防衛大学におられた方にお話を聞いたとき、自分が生涯をかけて選択した仕事が憲法違反だということになり、ショックを引きずってきたとお話しされていて、複雑な気持ちになりました。

 でも同時に、だからこそ、自衛隊は政党の争いに巻き込まれないよう、現行憲法のもとで、「国民の軍隊」になろうと努力してきたと思うんです。その結果、自衛隊に対する国民の支持が定着してきた。今上天皇が「象徴」の在り方を真剣に模索してきたのと同じですよね。

 稲田さんの発言は、そこを崩しかねないところに、最大の問題があると思います。河野統合幕僚長の「自衛官個人としては安倍さんの改憲案を支持する」という発言も、その気持ちはわかるんです。だけど、政党間の激しい争いになっている問題で、その一方を支持するというところが、これまでの自衛隊の在り方を根底から変えるものであることを危惧します。

 朝日のコメントに答えたけど、採用されなかったのは、「これでは、中国の人民解放軍が中国共産党の軍隊だと明記されているのと同じ水準になりかねず、常識的にあり得ない」というところでした。ま、お行儀が悪かったかな。

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