蘇るドイツ左翼

2013年5月13日

 というタイトルで、この秋、本が出ます。ようやく目途がついたので、今後、いくつか記事を書いていきます。著者は、福岡大学の星乃治彦先生です。

 ドイツの左翼勢力は、ベルリンの壁崩壊とともに崩れ落ちると思われたんですね。90年の選挙では、わずか2.4%に落ち込み、本当なら有名な5%条項に阻まれて、議席を獲得するなんてできないはずでした。

 でも、その選挙では特別の救済措置があって、かろうじて生き残ったんです。でも、救済措置のなくなる次の選挙以降、死滅すると思われていた。

 ところが……。いまや、得票率で11.9%、515万票を獲得し(2009年総選挙)、76議席を有して、第4党の地位を確固としたものにしています。

 ドイツ東部(旧東ドイツ地域)では3割前後の得票率。ドイツ西部でも選挙の度に躍進し、ザールラント州では2割に達しています。南部が一番得票率が低いそうですが、それでも6〜7%なんですよ。州ごとに見ると、社会民主党などと連立政府に入っている場合もあります。

 このドイツの事例って、崩壊寸前だった左翼政党(堂々と社会主義を掲げている)であっても、立ち直れることを示していると思います。いや、崩壊の縁まで行ったからこそ、深刻な自己反省をして立ち直ったということかもしれません。サブタイトルには「自己変革の歴史と現在」という言葉が入っていますし。

 この本では、ベルリンの壁以降20年の苦闘の歴史、現在の党綱領の特徴や活動の実態、そういうドイツ左翼のがんばりを生んだ歴史的な背景、等々が語られます。党員数も増えているんですが、どうやって増えているかなんてのもね。

 夏の参議院選挙後、左翼をどう再生させるかって、日本政治の大問題になると思います。そのための議論に欠かせない本になるはずです。

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