真珠湾攻撃も国によって見方が違うと言えるか

2013年5月14日

 一連の安倍さんの発言を聞いていて思うのは、内部にすごいフラストレーションをため込んでいるのだろうなということだ。日本は何も悪いことをやっていないのに、東京裁判で裁かれ、いやいやそれを受け入れてやったのに、いつまでもまわりの国から侵略と植民地支配を責められる。いつかこの恨みを晴らしてやるぞ。そういう気持ちで凝り固まっているのだろう。

 そういう歴史の見方に対しては、すでにいろいろな批判がある。私も書いた。でも、それこそ学問的とか、政治的とか、法的とか、そういう議論を超えた問題を、安倍さんの発言は抱えているように思う。

 何と言ったらいいだろうか。フラストレーションの向かう先がゆがんでいることだ。

 安倍さんの念頭にあるのは、いうまでもなく韓国や中国だろう。自分は最近も靖国参拝を自粛したのに、向こうは何も配慮してくれないとか、いろいろ思っているわけだ。

 だけど、もし安倍さんが、日本は正しいことをやったとか、それなのに裁かれたのはおかしいと思うのなら、矛先はアメリカに向かうのが筋なのだ。日本の「侵略政策の再現」を許さないと明記した国連憲章をつくったのもアメリカ、東京裁判を主導したのもアメリカだ。日本の侵略と植民地支配は間違いだったという国際的な見方は、そういうアメリカがあって成り立っているのだ。

 だから、安倍さんが信念から発言するのだったら、アメリカを批判しなければならない。真珠湾攻撃もアメリカにだまされた結果のやむを得ないものだとか、国連は戦勝国が勝手に創ったもので憲章もゆがんでいるとか、東京裁判を受け入れたサンフランシスコ条約は廃棄すべきだとか……。

 しかし、安倍さんは、アメリカにたてつけない。強いものには屈するというのが、安倍さんの本性である。だから、それでますますフラストレーションがたまり、自分より弱いと思ったものをはけ口にして、一連の発言になるわけだ。

 そういう安倍さんの個人的な感情が政治に持ち込まれ、政治を混乱させている。政治家の資格があるのかよと言いたい。

 それと困るのは橋下さんだよね。安倍さんの発言を焦点にして、全体として安倍さんを包囲しなければならないのに、そういう時に過激な発言をして、自分のことを焦点にしてしまう。その結果、橋下批判が左翼の焦点となって、安倍さんが相対的には穏健に見えたりして、やっぱり選挙では安倍さんが大勝するのかな。本当に橋下さんは困ったものだ。

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