どちらかといえば「男性手帳」を

2013年5月15日

 「女性手帳」の評判が悪いですね。まあ、当然でしょう。一連の報道をみながら、かつて勉強した話を思い出しました。

 ILO(国際労働機関)の「家族的責任条約」ってご存じですか。働く男女が、子育てなどの家庭への責任をどう果たすのかについての条約です。

 こういう条約って、だいたい5年に1回、審査をするんですよ。各国に条約の遂行状況とかなどを報告させ、問題点とか改善すべき点を明らかにするわけです。

 90年代になって最初の審査は、ソ連の崩壊と重なりました。そこでILOは、大胆な審査をしたんです。

 ソ連や東欧は、社会主義の特徴として、男女平等を誇っていましたよね。お医者さんも半分は女性だとか、その他その他。でも、ソ連崩壊過程で、男女平等は看板だけで、実際には女性が家庭にしばりつけられている実態が明るみに出るんです。そこで、なぜそうなったのかを調べたんですね。調べる視点として、男女平等が進んでいる北欧諸国との比較をしたのです。

 何が違っていたのか。最大のものは、ソ連は、出産や育児にともなって、女性に手厚い援助をしたということです。休暇を長くするとか、手当をたくさん出すとかです。それで、ソ連の女性は、出産や育児について援助があるので安心できるという宣伝が、社会主義の特徴として流布されました。

 でも、結局、そういうやり方が、出産や育児は女性の仕事だということで、女性の役割を固定化することにつながったんです。それがまた、家庭においても、男女の役割分担を固定化させたんです。

 一方、北欧諸国は、子育ては男女がともに担うものだという見地で、政策をつくってきました。育児休暇なども男性がどうとるかを重視したんです。それが男女平等の前進につなたったというのが、ILOの報告の核心でした。

 だから、いま日本で必要なのは、女性に出産や育児について知識などを植え付ける「手帳」じゃないと思います。男性がそこに生きがいを感じる(女性とともに)ような施策が求められているのではないでしょうか? たとえ善意であっても、育児休暇の3年間への延長みたいに、子育ては女性の仕事という視点にたった政策は、ソ連みたいな国をつくると思います。

 いや、そうみると、いまの安倍自民党政権がやろうとしていることって、ソ連型のやり方ですね。おまえたちはソ連と同じやり方をするのか、社会主義の失敗を繰り返すのかって批判したら、少しは届くかなあ。

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