蘇るドイツ左翼・2

2013年5月16日

 この本は、タイトルにある通りドイツの本だが、他の国の左翼についても扱っている。ギリシャとオランダである。この二カ国でも、新しい左翼がめざましく伸張し、政権を視野にいれるまでにいたっているのだ。

 まずギリシャ。ギリシャというと、古くから共産党が力をもっていた。10%程度の得票はあったしね。でも、いまギリシャで力をつけている左翼は、共産党ではなく「統一社会戦線」という(最近まで「急進左翼連合」と名乗っていた)。

 ギリシャといえば金融危機で騒ぎになっていたが、その最中の昨年5月の選挙で、52議席を獲得した。選挙後の混乱で翌月に再選挙が実施されたが、そこでは71議席(得票率27%)で、第1党に肉薄したのである。

 この源流は、90年代、市民運動や左翼政党がつくった「左派の統一と共同行動に関する会議の広場」という、政党ではない運動団体だったそうだ。それが協力して運動をすすめる中で、選挙を前にして、協力して候補者を立てようという合意が生まれていったという。

 そして、2004年の選挙を前にして、30の左翼組織(民主的社会主義者から毛沢東主義者なども含んでいた)と無党派の人びとにより、急進左翼連合の結成にいたったのである。この選挙での得票は5%にとどまったが、8年後には前述のような大量の得票をするにいたった。

 金融危機という特別な情勢のもとではあったが、それにちゃんと対応できれば、8年で5%から27%になるんですよ。すごいですね。

 オランダで注目されているのは「社会党」である。オランダでは、ずっと社会民主主義政党として「オランダ労働党」が力をもっていたが、90年代に環境政策の重点を移したため、左翼的な政党がなくなってしまう。そこに社会党が支持を広げる土壌があったといいうわけである。

 この社会党、21世紀に入り、党員数が2万7000人から5万2000人へと倍増している。人口は1680万にすぎないから、日本に換算すると40万人に相当するんですよ。国政においては、94年に1.3%の得票で初議席(2議席)を得たのだが、最近の2回の選挙でも10%近い得票を獲得しているのだ。

 これら2つの党が、どんな活動をしていて、どんな主張で有権者を惹きつけたのか。それは、本に書いているので、是非、読んでください。

 もちろん、日本とは事情が異なることが少なくない。毛沢東主義者なんて、過去のことだしね。でも、無批判に接近したらダメでしょうけど、事情が異なるという自覚のうえに接近すれば、学ぶべきことも少なくないとは思うのだ。

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