虚構の集団的自衛権・2

2013年5月21日

 もっとも大きな虚構は、集団的自衛権というものそれ自体が、何か世界で普遍的なものになっているかのように描かれていることだ。それを前提にして、憲法九条がそれを禁止していることについて、世界のなかで特殊な立場であるかのようにみなしていることだ。

 この問題では、私は12年ほど前、『「集団的自衛権」批判』という本を書いて明らかにしたことがある。そのなかで、冷戦期、集団的自衛権をどの国がどのように行使したのか、実例を明らかにしたのである。

 当時の私の調査では、わずか3カ国9例というのが結論だった。その後、今回の本を書くので調査を再開した結果、4カ国10例ということになった。

 4カ国というのは、アメリカ、ソ連、イギリス、フランスである。アメリカでいうとベトナム戦争、グレナダ介入、ニカラグア攻撃の3例。ソ連でいうとハンガリー事件、チェコ事件、アフガン介入。イギリスとフランスの事例はマイナーなので、ここでは紹介しない。

 みただけで分かると思う。冷戦期に集団的自衛権を行使したのは、超軍事大国ばかりなのだ。これは当然である。集団的自衛権って、自分の国を守るわけではなく、海外にまで展開できる軍事能力が必要とされる。そういうことができる国って、そうそう多くはないのだ。普遍的どころではない。行使しない(できない)国の方が普遍的なのである。

 しかも、戦争の実例をみれば分かるように、すべて違法な侵略ばかりだった。安倍さん、日本近海でアメリカの艦船が攻撃されたとき、自衛隊が助けなければならないと息巻いているよね。

 だけど、ベトナム戦争のとき(64年)、同じようにアメリカの艦船が攻撃されて、アメリカは国連憲章第51条の「自衛権」を発動して北爆を介したのだが、この艦船への攻撃はのちにアメリカのでっちあげ、秘密作戦の一環だったことが、米国務省の秘密報告であきらかになる。ソ連がハンガリーやチェコを弾圧したのも、これらの国が「攻撃」されたという口実だったのだ。

 日本近海でアメリカの艦船が攻撃されたからといって、自衛隊が出動して、あとででっち上げだと分かったら、安倍さん、どうするのか。集団的自衛権を推進しようとする人たちは、そういうリアルな視点がまったく欠けている。

 冷戦後、その集団的自衛権をめぐる状況は、大きく変わった。国連がオーソライズする集団的自衛権が登場したのだ。でも、それでもって、集団的自衛権が普遍的になったといえるだろうか。(続)

記事のコメントは現在受け付けておりません。
ご意見・ご感想はこちらからお願いします

コメント