徴用工問題での志位見解を論じる・上

2018年11月5日

 「赤旗」の11月2日付に載った志位さんの見解。「徴用工問題の公正な解決を求める──韓国の最高裁判決について」というタイトルである。

 まず、日韓請求権協定によっても個人の請求権は消滅しないという、きわめて常識的なことが書いてある。その上で、日本の最高裁もそういう立場で企業に自主的な対応を促し、その結果、西松建設などが和解金を支払った事例が紹介されている。これも常識的なものだ。

 なかなか微妙なのは後半部分である。志位さんの見解が、日本の他のメディアなどと異なるのは、韓国最高裁の判決が日本が植民地支配と徴用の違法性を認め「賠償」を支払うべきだとしているのを高く評価し、日本政府に対して「公正な解決」を求めていることである。

 これは共産党ならではというか、共産党にしか言えない見解である。なぜなら共産党は、戦前の時代から日本が朝鮮半島を植民地として支配することに反対してきた唯一の政党であり、日本から独立を果たした戦後になっても、一貫して過去の植民地支配が違法であったとして謝罪を求めてきた唯一の政党だからである。

 戦前のことは誰もがそう思えるだろう。大政翼賛会につながっていく時代だから。日本人はみんな(共産党を除き)朝鮮半島支配を当然のことだと思い、半島の人びとを侮蔑していたのである。

 重大なことは、戦後の時代になっても、日本人の朝鮮半島植民地支配に対する認識はあまり変わらなかったことだ。社会党だって当初、植民地支配を当然だと考え、賠償を支払うことにも反対していた。自民党とあまり変わらなかったのである。社会党が変化するのは、70年代、共産党と北朝鮮の関係がきしみをみせはじめ、社会党が替わって北朝鮮との親密な関係を築き始めて以降なのだ。

 だから、共産党だけには、植民地支配の違法性や請求権協定が賠償でないことの問題性を打ち出す資格がある。共産党員は誇っていいことだ。堂々と提唱してほしい。

 問題は、それを打ち出す資格があるのは、共産党だけだということにある。国の政策としてそれができるかということである。

 いまの時代にどこかの国を植民地支配することは、誰もが違法だと考える。そんなことをやる国は国連の制裁を受けるだろう。だけど、戦前は日本の誰もが(共産党を除き)合法だと思っていたし、欧米中心でできている国際法も合法だという立場であった。

 日韓基本条約と請求権協定が結ばれた当時(1965年)も、ちょうど5年前に国連総会が植民地独立宣言を可決し、どんどん独立国が増えてきていたが、欧米の植民地宗主国はその総会決議に反対や保留し、武力で独立運動を弾圧していて、植民地支配は違法だという国際法が確立されたとは言えなかった。

 だから日韓交渉においてもそれは議論されたが、韓国側も妥協せざるを得ず、違法性や賠償を明示的に認めない条約と協定になったのである。それを現在の到達の高みに立って覆せるのかということである。野党として主張するというに止まらず、国家間でそういうことが可能なのかということである。あるいは、条約の間違いを指摘してきた政党が政権をとれば、そういう過去の条約を破棄したり、正したりできるのかという問題でもある。(続)

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