徴用工問題での志位見解を論じる・中

2018年11月6日

 国家は過去の条約や政府間合意を破棄できるか。これは難しい問題である。

 まず、当然できる、という回答がある。韓国が慰安婦合意を反故にしたり、大法院が日韓請求権協定を否定したりしてるのを見て、合意を覆すなんて国際法の世界ではあり得ないという論調が日本では強いが、そんなことはない。

 だって、我々の面前で、あのトランプ大統領がイラン核合意から一方的に離脱して平然としているではないか。現在の国際法だって、力のある欧米がつくったものであり、それよりも中国が力をつけるようになると、実力で国際法を変更することだってあり得る。国際法とはそういうものだ。

 歴史上、革命を起こした政府は、よくそういうことをやった。ロシア革命に成功したレーニンが、ロシアと各国が結んでいた秘密条約を全部破棄したことも有名である。

 問題は、そういうやり方は現行の秩序を乱すものだから、秩序の枠内にある多くの国からバッシングを受けることである。それを覚悟できるのかということだ。

 アメリカのように力のある国なら、とりわけトランプのような人物なら、バッシングなど無視するだろう。無視しても、アメリカ抜きの世界はあり得ないので、アメリカはたいして悪影響を受けないで済む。

 しかし、大国でない日本の場合、そう簡単ではない。植民地支配は違法だったからと日本国家が認めて賠償するということになると、過去、植民地支配をやった欧米の多くの国に跳ね返り、アジア・アフリカの国からの賠償要求が迫ってくることになるから(働かせたことに対して1人1000万円だから途方もない額だ)、欧米諸国からの日本に対する圧力は半端なものでなくなる。

 もちろん、レーニンのように「正しいことは正しい」という道を進む選択肢はある。秘密条約とか秘密外交とか、いまでもあると思うが、以前ほどは幅を利かせなくなっているのは、レーニンの成果である。植民地支配は過去にさかのぼって賠償するという考えが世界中に広まれば、いま困窮をきわめている中東やアフリカの人びとは喜ぶかもしれない。ただ、そのソ連は、直後から海外からの投資がされない国となり、それがずっと続いて滅びてしまったけれど。

 それに、じゃあ、共産党がめざす野党連合政権がそれで合意できるかというと、他の野党は正反対の態度をとっているので、そう簡単でないことは確かだ。共産党は「魅力ある政策」で「政権合意」をめざしているわけだから、きっとこの問題も政策協議の中心問題に据えるのだろうけれど、一致点になるのだろうか。一致しなければ、魅力のない政策になったとして、政権合意は結ばないのか。(続)

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