2014年5月13日

 この5月は、合計で4回、講演します。いちいちそれをお知らせすることはしないんですが、これだけは事前にご紹介しておきます。

日時:5月21日(水)午後6時開場
場所:京都社会福祉会館(二条城北側)
会費:500円
演題:集団的自衛権 その本質と闘い方を学ぶ
講師:松竹伸幸

 申し込みは必須ではありませんが、電話かFAXで以下に申し込みすれば、入場整理券を郵送するそうです。かもがわサロン ℡075-415-7902 Fax075-415-7900。

 なぜこれだけ紹介するかというと、まず、わが会社の講演会だということですよね。失敗できないというか、中身にも規模にも会社の責任が問われるわけなので。200人という大きな会場を予定しているということもありますし。

 もうひとつは、集団的自衛権をめぐる情勢ですよね。今週15日(木)、「安保法制懇」が報告を発表し、その日のうちに安倍さんが記者会見で「政府見解」を公表し、あとは一気呵成に進んでいくようです。

 そういう局面で、「安保法制懇」の報告書や政府見解をどう捉え、どう闘っていくのか。それを示す最初の場所になると思うので、私も気合いが入っているんですよ。だから是非、多くの方に参加していただきたいんです。

 電話やFAXが面倒だという方は、メールでもいいですし、フェイスブックならコメントでもいいです。というか、別に、突然来てもらってもいいんですけど、あまりに人が多そうだと、第二会場を準備したりしなければならないもので、事前にある程度の目途をつけておきたいということです。

 でこの講演会、講演が1時間で討議が1時間、ということになっています。討議するところに特徴があります。憲法が実質的に変わるという局面ですから、これまでの常識の線で闘うだけではだめでしょう。思想が入れ替わるくらいのはげしい議論が必要だと思います。は、21日にお会いしましょう。

2014年5月12日

 今週は、集団的自衛権の週になりそうですね。「安保法制懇」が報告を出し(13日から1~2日ずれるかも)、安倍首相が政府見解も発表するということですから。私の本の執筆も山場です。この間、公明党を説得するため、集団的自衛権の必要な事例としていろいろ出されました。焦っているからでしょうか、出れば出るほど、恥ずかしいなと思わせるものになっています。ということで、今回、先週末に出てきた事例について、予定の本に書いたことをご紹介。

論点29 朝鮮半島有事に韓国から避難する日本人を乗せた米艦船を守るために必要か

 「限定容認」論もここまで来たかという、推進論者の劣化を象徴する事例だと言えます。突然どこかの国がアメリカの艦船を攻撃するという、あまりにもリアルでない想定では国民を納得させられないとして、突然、誰かが考えついたようです。日本人の命を守るためなら反対できないだろうというわけです。

 しかし、海外の邦人救出の仕事は、日本自身がすべきだというのが、これまでの努力の方向だったはずです。緊急時にはアメリカも自国民救出が優先であって、アメリカにまかせられないからとして、日本自身による体制をつくってきたのです。

 自衛隊の航空機による輸送は、自衛隊法の改正により、一九九四年から可能になりました。政府専用の自衛隊機(ボーイング747)が基本で、それが困難な場合はCー130等の輸送機を使うことになっています。

 一九九九年、自衛隊の艦船による輸送も可能となるよう、自衛隊法の改正が行われました。輸送艦や護衛艦等を使用することが想定されており、艦船と陸地の間に限定して、艦船に搭載したヘリコプターも使うことになっています。

 これは、いま議論になっているケースと同じです。韓国の沿岸まで護衛艦や輸送艦を派遣し、ヘリが地上を往復して邦人を艦船まで運び、日本にもどってくるのです。ある国に許可を得て滞在している外国人の命は、その国の政府が責任をもつという建前になっており、邦人救出のために自衛隊が派遣される場合、現地政府の同意が必要とされます。しかし、艦船を派遣する際は、港湾への着港の許可を得るだけであり、日本が武力を行使するわけではないので、朝鮮半島有事のとき、韓国政府が同意しないという事態は考えられません。

 自衛隊法にもとづく邦人輸送は、すでに二回実施されています。一度目が二〇〇四年四月、イラクにいた報道関係者一〇名をC-130輸送機でタリル空港からムバラク空港(クウェート)まで輸送しました。二度目は昨年一月で、アルジェリアで発生したテロ事件における被害者の輸送でした。生存者九名、死亡者九名を、アルジェの空港から羽田空港まで、政府専用機(ボーイング747)により輸送したものです。

 なお昨年、再び自衛隊法が改正され、陸上輸送も可能とされました。 艦船によるものと陸上輸送の実績はまだありません。

 万が一、朝鮮半島有事という事態が起これば、これらの法律はフルに活用されることになります。海上自衛隊と海上保安庁が保有する艦船の数は、在日米軍が日本周辺で運用している艦船よりも多いのであり、日本人が米艦船で救出されるより、アメリカから米国民を日本の艦船に乗船させてほしいという依頼があると考える方が、ずっとリアルでしょう。

(まとめ)有事の際の邦人救出は、アメリカに頼るべきでないとする立場から、自衛隊の艦船がやれるように法整備がされており、こんな想定は滑稽です。

2014年5月9日

 本日は午前中、国会。「自衛隊を活かす会」はまだ出来ていないが、その準備会のようなもので、アメリカの元国務省高官のお話を聞く会をやったのである。国際地政学研究所や新外交フォーラムとの共催。

 この方は、集団的自衛権の賛成論者なのだ。だけど、それをやろうとする場合、アジアの理解とか、日本社会の合意とか、そんなものが必要だという立場である。秘密保護法のときのようなやり方をしてはならないと強調しておられた。

 だから、集団的自衛権を急ぐ安倍さんとは、その点で逆方向を向いている。いますぐやるべきようなものではないということだ。こう言っていた。

 もし夜にオバマさんをたたき起こして、いま日本に何をやらせようかと尋ねたら、オバマさんはこう言うだろう。「経済! 経済! 経済!」。集団的自衛権は19番目くらいじゃないかということだった。そうだろうね。

 でも、安倍さんは、それでも急いでいる。だから、私もそれに合わせて、必死で本を書いている。

 これまで、本のタイトルは、『集団的自衛権に関する「安保法制懇」報告 50の論点』とするつもりだった。だけど、昨日、新聞記者に話しを聞いたところによると、この報告が出たら、すぐ政府見解が出され、それをもとに協議が進むらしい。「安保法制懇」報告の寿命は極端に短いかもしれない。

 それに、「安保法制懇」報告も「日本の安全にかかわる問題での限定容認」を打ち出すのだが(それをめぐって原則的な学者との確執があるらしい。当然だ)、政府見解ではさらに限定することで、公明党を説得するらしい。

 だったら、私の本のタイトルも変えないとね。それが、この記事のタイトル。どうでしょ。もちろん、中身はこの方向で書いているんだけどね。

 13日に報告が発表され、それを見て真剣に原稿を点検し、15日に印刷所に入れる予定。23日には倉庫に届く。週刊誌をつくっているみたいだ。

2014年5月8日

 昨日、朝日新聞の記事を紹介しましたが、その前日(5月4日)、神奈川新聞ではさらに大きく「会」がとりあげられました。19面に代表の柳澤協二さんのロングインタビューが載っていて、第一社会面の21面には、なんと私まで大きな写真付きで載っているではありませんか。

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 その記事を、以下紹介します。昨日の夜も、この記事の冒頭にある神保町の中華料理屋で会議をしていたんです。なお、記事中、私の経歴にちょっとした間違いがあるので、勝手に直しています(新聞社にはお知らせ済み)。興味のあるヒマな方は、ウェブ上の記事と比べて、間違い探しでもどうぞ。

 (記事開始)東京・神保町駅近くの中華料理店。防衛、安全保障、国際貢献の専門家が集まってくる。紹興酒を酌み交わしつつ、ある会の設立に向けた議論が深夜まで続く。

 会の名称は「自衛隊を活(い)かす:21世紀の憲法と防衛を考える会」。元防衛官僚の柳沢協二さん(67)が呼び掛け人代表を務める。小泉政権で内閣官房副長官補となり2003年、自衛隊のイラク派遣の理論武装を担ったその人がいきさつを語る。

 「右の立場の人も議論に加わらなければいけないと声を掛けられ、それは面白そうだ、と。護憲は左の人たちが担ってきたが、意見が合う人だけで話していても意味がない」。そして続ける。「私も立場は護憲。自衛隊員を無駄な戦争で死なせたくないからだ。だが、同じ護憲でも自衛隊の存在が認められない人がいる。それでは将来に向けた議論ができない。せめて自衛隊がいる現実から出発点しようという会になる」

 その仕掛け人が京都にいる。かもがわ出版の編集長、松竹伸幸さん(59)。出版を通じて知り合った柳沢さんに会の立ち上げを持ち掛けていた。

 自衛隊の国防軍化、集団的自衛権の行使容認を目指す安倍政権に危うさを感じる一方、護憲運動の在り方にも危機感があった。

 例に引くのが、自衛隊に関する内閣府の世論調査。自衛隊を「縮小した方がよい」との回答は1991年は20.0%で、2012年は6.2%に減った。この間に「増強した方がよい」は7.7%から24.8%に増えたが、多数を占めてきたのは「今の程度でよい」で、ずっと60%台だった。

 「単純化すれば、いわゆる護憲運動はかつては20%、いまは6%の人が進めている運動といえる。一方で9条を守るべきという人は半数以上いる。つまり、多くが自衛隊の現状を認めた上で護憲と言っている」

 新しい視点から防衛戦略を打ち出す必要性が浮かび上がっていた。「9条への態度を問われれば護憲でも、防衛を考えた場合、目の前にある政策は安倍政権が掲げるものしかないのが現状。護憲か防衛かというねじれた選択肢の間で揺れる層にこそ、働き掛けていかなければ。軍事戦略からみても9条は必要だ、と」

 その松竹さんこそは「6%の護憲運動」の側にいたといえた。8年前に離職したが、共産党本部の政策委員会で外交や安全保障政策を担った経歴を持つ。

 当初、松竹さんが提案した会の名称は「憲法9条下の自衛隊活動を考える会」。柳沢さんから待ったの声が掛かった。「自衛官OBにも参加してもらいたい。とすると、9条の2文字だけで難しくなる」。そして、「ほんのりと護憲ということが分かればいいんじゃないか」。

 柳沢さんは、1発の銃弾も撃つことなく終えた自衛隊のイラク派遣を踏まえ、言う。「丸腰だからできることはある。武器を手にしていると、武器をどう使うかに注意が向く。戦う手段を持っていないがゆえにできることがある」

 会の発足は6月7日。シンポジウムを重ね、政策提言をまとめていく。

 〈現行憲法のもとで誕生し、国民に支持されてきた自衛隊のさらなる可能性を探り、活かす方向にこそ…〉

 松竹さんが練った設立趣意書案に「9条」「護憲」の文字は見当たらない。(記事終了)

2014年5月7日

 大型連休、いかがでしたか。私は、「九条の会」に呼ばれて2回講演した以外は、「安保法制懇」の報告書をにらみながら、ずっと本の執筆でした。本日から3日間、東京出張です。

 連休中、うれしいことがありました。まだ発足もしていない「自衛隊を活かす会」が、鮮烈デビューしましたよね。

 最初は5月2日、NHKでした。夜9時のニュースで、「会」の呼びかけ人の伊勢﨑賢治さんが、かなり時間をとってインタビュー。集団的自衛権に賛成の人と反対の人と、それぞれ一人ずつがでましたが、伊勢﨑さんが「会」を準備中だと紹介された上で、いろいろ発言していました。

 その次は5月5日、朝日新聞でした。3日から1面で「憲法を考える」という大型企画がはじまり、5日は最終日だったんですが、3面で以下のように長く紹介されていました。「会」が何をしようとしているか分かるので、以下、全文紹介します。

 その前に、いま活字としては大阪本社版を呼んでいて、ネットで購入しているものは通常、東京版を見ます。大阪版の見出しが「平和守る 地に足つけて」だったのに、東京版では「平和・国益 地に足つけて」として、「会」の理念のひとつである「国益」が入っているんですが、整理部の方が大事だと思ってくれたのでしょうか。では、全文を。

 憲法記念日の3日、新潟県長岡市。元防衛官僚の柳沢協二(67)は「憲法九条を守る長岡の集い」で講演した。安倍晋三首相が集団的自衛権の行使容認をめざす動きを「情念からとしか考えられない。憲法や自衛隊の人たちの命を無視して、議論を進めるのは認められない」と断じた。

 03年に始まった自衛隊のイラク派遣などで政策立案に携わった。憲法の枠内で国際社会の要請に応え、自衛隊の海外派遣の道筋をつけてきたと自負する。内閣官房副長官補も約5年務めたが、憲法解釈を変えることには反対の立場だ。第いま首相が解釈変更に突き進む姿に「戦後日本が積み上げてきたものを壊し、自らの生涯も全否定されるのか」と感じている。

 柳沢は6月、紛争地の武装解除に携わった東京外大教授の伊勢崎賢治(56)らと「自衛隊を活(い)かす:21世紀の憲法と防衛を考える会」を立ち上げる。趣意書には「国を守り、平和を守ることは感情や勇ましい言葉によってできるものではない」「世界の現実を見つめ、国益をもう一度考え、地に足のついた思考が必要」などとうたう。柳沢は現行憲法の枠内で今後の防衛政策を考えることをめざすが、「憲法を見直そうとする人とも接点を探りたい」と話す。了