2017年7月27日
毎日新聞が「揺らぐ『一強』」というシリーズをやっていて、政界の実力者にインタビューをしている。いろんな見方があっておもしろい。
その3回目の民進党の前原さんが登場しているが、「民進は原点に戻れ」の見解に賛成である。何が原点かについて認識の違いはあるかもしれないが、私としては「保守リベラル」が原点だと感じる。
民主党が政権を奪取したのは、同じ保守政治の枠内でも、そこに自民党との対決軸が存在するように見えたからだ。安保条約も自衛隊も堅持することを明確にしつつ、しかし辺野古は県外移設しようとした。大企業をどう位置づけるかで共産党とは対極にあったが、それでも「コンクリートから人へ」を打ち出した(建設業界からは批判があったそうだが)。
前原さんは、このインタビューで、次のように言った上で、「原点に戻れ」と述べている。
「民進党は次期衆院選の選挙互助会になっている。共産党と協力するのが前提で、共産党の反対することは遠慮する。憲法の議論もやらない。共産党の下請け機関みたいになってしまって、野党第1党の矜持(きょうじ)はない。」
まあ、「下請け機関」というのは協力している間柄からして言い過ぎだと思うが、言いたいことはよくわかる。当面の選挙で野党の一致を成し遂げようとすると、どうしても共産党との違いを打ち出すことにならない。一致している範囲が政策となる。そうなると、民進党はどんな政党なのかが見えてこなくなる。
民進党は共産党と違う保守リベラル政党であることが大事だ。前原さんが言うように、憲法をどうするかは議論すればいい。ヨーロッパの社民党のように、税金をあげてでも弱者に配分するという路線をとればいい。保守政治の枠内であっても、相手が安倍政権なのだから、十分に対立軸となるものは示せるはずだ。安全保障政策でも安倍さんと同じだということにはならないだろう。
そうやって共産党とはこう違うというところを見せつつ、当面の一致点はどこにあるのかを探ればいいのだ。政策的な一致というのは、政策が大きく異なる政党同士が、どう譲り合うのかということから生まれてくる。前原さんだって、「憲法はとてもじゃないけど安倍さんの考えるスケジュール、今年いっぱいでなんて無理だ」と言っているわけで、憲法に対する基本的な態度は違うということを明確にしつつ、改定の発議まではしないということで一致できるはずなのだ。
そうやって、多様な考え方を持つ野党が、当面の大事な課題で一致していると国民の目に映らないと、共闘の力は発揮できないだろう。だから、そのためにも、前原さんが言うように、もっと独自のスタンスを打ち出してほしい。どんな民進党にするのか、もっと本質的な議論をしてほしい。
2017年7月26日
先週末の土曜日だったでしょうか、NHKでやっていた「AIに聞いてみた。どうすんのよ、ニッポン」を見ましたか。有働アナとマツコ・デラックスさんが中心になって議論していました。以下のように宣伝されていました。
「日本の閉塞感を打破する手がかりを求めて、NHKは「社会問題解決型AI(人工知能)」を開発した。パターン認識と呼ばれる手法で700万を超えるデータをAIが解析したところ、驚きの結果が!そこから導き出されたのは「40代ひとり暮らしを減らせば日本がよくなる」といった驚きの提言の数々だった。それは何を意味するのか?日本は本当に良くなるのか?」
データの数が半端じゃありませんね。同様のことは大学の研究室でもやっているところがあるみたいですが、さすがNHKでして、その何十倍、何百倍ものデータを入力したそうです。
「驚きの結果」として、「40代ひとり暮らしが日本を滅ぼす」以外に、こんなものも。「健康になりたければ病院を減らせ」「ラブホテルが多いと女性が活躍する」。
それで、AIがこういう結果を出したというので、実際に病院を減らした北海道の夕張市を調べてみたら、健康度が増していた(寿命も増えていたかな?)とか。病院がなくなったというので、健康を維持するためのいろいろな取り組みが増えて、住民が参加するようになったそうです。
まあ、いろんな反論はあり得るでしょう。健康を左右するのは病院数だけじゃないだろうとか、病院数と住民の健康がそんなにきれいに比例しているのかとか。ただ、病院数が減った地域において高い割合で健康度が高まっているのは事実なんでしょう。それをどう見るかということですね。
大事だと思うのは、AIにやらせることで、人間の常識では出てこない結果が出てきて、それを人間の側が考えることができるということだと思います。これだけ日本社会が閉塞しているわけだから、常識に囚われない探究も大事でしょう。
その番組を見ながら思いだしていたのは、「自衛隊を活かす会」でつくった『新・日米安保論』(集英社新書)の議論の際、呼びかけ人の一人である加藤朗さん(桜美林大学教授)が、「AIに核の傘が効いているのかということを考えさせてみたい」と言っておられたことでした。予想通り、本日さっそく、そのNHKのディレクターとつながっていないかというメールが来ましたよ。
これをテーマにやろうとすると、まず準備が半端じゃないでしょうね。今回のは700万のデータといいますけど、このテーマの場合、世界中のデータが必要になるでしょうから。核兵器が誕生して以来なので、72年分に限定はできるでしょうけどね。
それに、常識に囚われない答が出てきたら、どうするんでしょうね。「世界中の国が核兵器を持ったとき初めて核抑止は成り立つ」だとか。でも、やってみる価値はあるでしょうね。やれるとしたらおカネと人のあるNHKだけでしょうし。加藤さん、メール出しましたか?
2017年7月25日
与党が衆参で3分の2を占めているうちに改憲の国民投票に打って出ることは予想していて、その状況にふさわしい本を書く準備をしていた。そうしたら、安倍さんが5月3日に加憲案を出してきたので、本気になって書き出すことになった。
現在、「はじめに」と第一章、第二章、第四章ができている。長沼訴訟の全記録に目を通しつつ、第三章を来月中に書き、九月に全体を見直しながら、終章と「あとがき」を書く予定。
これまでの出版社とは違うけど、どこかの新書で出してもらうつもり。現在の護憲派の論調とはかなり違うけれど、私は賛成、反対で世論を分断されるのは好まないので、真ん中あたりで迷っている人をねらいたい。
タイトルは衝撃的なので、近づくまで秘密です。以下、目次。
第一章 護憲派とはどういう人のことか
1、非武装の改憲派、専守防衛の護憲派の登場
2、専守防衛か非武装中立かの対立は昔から見せかけだった
3、安倍首相の加憲案とどう向き合うのか
第二章 戦争と平和は対義語なのか
1、侵略戦争と同じ数だけの自衛戦争がある
2、戦争と平和は通じ合っている
3、戦後の世界で、戦争は減少する傾向にある
第三章 国民の命を守るのが憲法違反か(未)
1、戦後の憲法闘争の到達としてのイラク訴訟
2、長沼訴訟における自衛隊違憲論の研究
3、自衛隊違憲論、合憲論を総括する
第四章 矛盾に満ちた共産党の防衛政策の分析
1、「中立自衛」政策のもとでの矛盾と葛藤
2、憲法九条を将来にわたって堅持する時代の矛盾
3、野党共闘で矛盾を乗り越えられるか
終 章 護憲を選ぶことによる矛盾は護憲派が引き受ける(未)
これを書きおえ、加憲案に対する護憲派としての私の立場を豊かにすることができたら、小林よしのりさんに議論を申し出ようかな。それで、2年ほど前に参加させてもらったゴー宣道場「憲法9条で日本を守れるか」とあわせ、弊社から共著を出したい。NHK的にいうと小林さんはいまや左翼で、左翼と左翼が議論するのでは面白みがない、ということになるかもしれませんが。
2017年7月24日
安倍さんが窮地に立たされていて、次は誰になるのかという議論が始まっている。私の周りでは、すぐにでも引きずり降ろせという人が少なくないわけだが、そうしたとして誰が首相になるのを望むのと聞くと、なかなか名前が出てこない。誰がやっても安倍さんよりマシなんだから、考えなくてもいいんだと言う人もいる。ホントにそうなんだろうか。
そんなことを考えていたら、本日の毎日新聞の世論調査がおもしろかった。「安倍1強」といわれる政治状況について、「あなたの考えは次のどれに近いですか」と聞いている。
「安倍首相が強いままでいい」は7%にとどまる。「自民党から安倍首相に代わる人が出てきてほしい」は31%。「野党から首相に対抗できる人が出てきてほしい」は25%。「新しい政党や政治団体から首相に対抗できる人が出てきてほしい」が23%。
そう、きれいに3つに分かれているんだよね。そこも分裂しているあたりが、対抗勢力を苦しめるかもしれない。
まず野党と言っても、選挙は来年末までないだろうから、期待薄である。政策協議を進めないと、核兵器禁止条約を批准する政府をつくろうということも言えないから、魅力ある対抗軸になるかも不明である。
次に新党と言っても、いま話題になっているのは都民ファーストくらいで、都政では改革勢力になり得ても、憲法改正が焦点となる国政では安倍さんの対抗軸にならない。護憲新党でも出てくると、違うかもしれないけど。
そして自民党。先日書いたけど、岸田さんが閣僚にとどまることになって、有力な対抗馬と言えば、石破さんくらいしかいないわけだよね。私は、石破さんだったら、9条については自民党改憲案に固執しているとは言え、それを2020年までにやり遂げるなんてことを公約にしない理性はあると思うので、選択肢かなとは思う。だけど、野党勢力にとって、石破さんって、安倍さんよりいいとは思えないだろうから、そこがネックだよね。
というか、昔は、自民党のなかの権力闘争があって、内部から別の選択肢が出てきた。だけど、それは小泉さんを最後に、ずっとなくなっている。政権に忠実な人が次の指名を受けるみたいになっているから、自民党内から対抗軸が出てくるのは、もう無理なのかもしれない。
私としては、どこかで書いたことだけど、国民投票にせよ総選挙にせよ、安倍さんと正面から取っ組み合って勝利しないと、安倍さん的なものが残ることになると思っている。だから、この1年、真剣に準備をするのが望ましいという立場なんだけど、どうでしょうね。
2017年7月21日
出張が終わりました。いま新幹線のなかです。いや、忙しかった。来月は、広島から長崎に向かうし(なぜか佐賀で途中下車)、お盆休みもあるし、次に東京に行くのは一か月先になるでしょう。
私としては、来年(2018年)が勝負の年かなと感じています。安倍さんも来年に改憲発議することをめざしているし(順調にはいかないでしょうから、少し伸びると思われます)、来年は沖縄で名護市長選挙、県知事選挙もあります。新憲法の施行が2020年というのが安倍さんの目標ですが、その年に私は退職することになっているので、勝負の年と重なっているんですね。悔いなく闘って、退職の年である2020年を迎えようと思います。
その後も、出版の仕事には、少し関わるかもしれません。少しね。ブログも継続する意思はありますが、その場合、タイトルは「編集長の冒険」から「出版界の片隅で」に変えるつもりです。どうでしょ。
それにしても、安倍さん、しぶといですね。岸田外相が留任を決めたということは、安倍さんの九条加憲案に対して、九条には当面手をつけないという選択肢が自民党のなかにはなくなったことを意味します。安倍路線に反対する旗印は、自民党内では、石破さんの2項削除、国防軍明記路線しかないということです。
つまり、自民党内の争いに期待していても、護憲派の未来はないということです。国民投票で勝利するか、政権を奪いにいくか、どちらかしかないんですね。護憲派は覚悟を固めないといけません。
ということで、2018年は超忙しくなりそうで、そこで問題になる改憲論議に一石を投じる本は、今年中に出そうと思って、それも忙しい要因です。長沼裁判の全記録に目を通すことになるなんて、考えてもいませんでした。
2020年で退職したら、何をやろうかな。片手間でやっている自衛隊を活かす会の専従にでもなって、これをメジャーにするために命をかけてみようかな。ま、よく考えてみます。